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このベランダの片隅に

部屋にベランダがある。
実は条件としてこれ以外に動機は必要ない。そこにベランダがある、ベランダに出てみる、ここにベランダがある、本当はそれだけで良かったのだ。

皆さんはベランダーという言葉をご存知だろうか?

庭にて園芸を行う人々を「ガーデナー」と呼ぶのに対して、いとうせいこう氏が提唱した「庭を持たぬ都会人がベランダにおいてロマンを追求しながら園芸を嗜む存在」が「ベランダー」である。

いとうせいこう氏はベランダーの日々をエッセイとしてまとめており詳しくは名著『ボタニカル・ライフ 植物生活』を参照されたし。

ベランダーとの出会いや憧れなどについては、いずれ別の機会に語るとする。今回は、まず我が家のベランダ事情についてお話ししようと思う。

ベランダの半分は窓で、窓から出て左手には室外機、右手には棚が網目になっている本来は室内用の金属製チェストが所々錆ついた状態で置かれている。ベランダで園芸を行うにおいてスペースとしては充分なのだが問題がひとつある、日光だ。

ベランダにはいろんなタイプがあるとは思うが、主に外側の壁が日光を遮るか遮らないかのふたつに大別することが出来る。そしで我が家のベランダは残念なことに外側が日光を遮るタイプの壁になっている。つまり地面に鉢を置いた場合、真昼間の僅かな時間にしか日光は降り注がない。

植物の種類を吟味し日陰でも強く逞しく育つものを選べば、もしや健気に育ってくれるのかもしれないが、日陰者が最初から日陰で植物を育てるのはさすがに陰湿過ぎるので出来れば避けたい。なのでまずは室外機の上のスペースに目を付け利用することにした。

念の為に調べてみて知ったが、
これは推奨されることではないらしい。

室外機の上部の内側には複雑な機械類が設置されているそうで、鉢の重さで変形したりして防水性能を損なうと感電する可能性があるそうだ。なので室外機カバーを購入することが推奨されている。だが今月は出費が重なってしまっており、意外と高い室外機カバーを購入する余裕はないし、かと言って種まきのシーズンを逃すわけにも、原動力である謎の勢いや情熱と言ったものが冷める隙を与えるわけにもいかない。よって室外機カバーを購入する財布の余裕が出来るまでプランターに受け皿を用意して水が室外機に降り注がぬように注意を払うという努力によって凌ごうと思う。育てようとしてるのは種からなので最初は全体に降り注ぐように水を掛ける必要もあるまい。こうして機転と注意力と情熱をごちゃごちゃに混ぜながら「室外機を利用する」という高さ稼ぎによって日光の問題は解決したのだった。

これが最新の我が家のベランダ事情である。
このようにしてベランダに朝昼の日照権を付与することが出来たのであった。

そして憧れのベランダー生活が始まる。
 
……はずだった。

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