三谷幸喜氏版『死との約束』(ポワロ作品)2021年放送予定

本日、ニュースが配信されていました。

作品として『死との約束』は、これまで三谷氏が映像化してきた『オリエント急行殺人事件』『アクロイド殺し』という、ミステリ作品としてそのトリックが燦然とミステリの歴史に残るメジャー作品ではありません。

しかし、上記記事のインタビューで、三谷幸喜氏はこの作品思入れを"『死との約束』は、アガサ・クリスティーの隠れた傑作です。ポワロ物で、僕がいちばん好きな作品です。"と語っていますので、ようやく、最も好きな作品に到達できた、というところなのでしょう。素晴らしいです。

放送は来年とのことですが、このタイミングで、フジテレビは三谷幸喜さんの『オリエント急行殺人事件』と、『黒井戸殺し』の再放送をして欲しいと思います。どちらも、他作品にないユニークな視点なのです。

『オリエント急行殺人事件』は鉄道の事件で完結するものが、前後編の後半で、真犯人がいかにして犯行に至るのかを犯人視点でしっかり描いたもので、『オリエント急行の殺人』映像化作品で、唯一の解釈かと。

三谷氏の作品を含めた作品考察は、スーシェ版・ブラナー版とあわせてしました。

また、三谷幸喜さんの『黒井戸殺し』(アクロイド殺し)は、私の中の永遠の殿堂入り・神作品たるスーシェ版ドラマ『名探偵ポワロ』の該当回のシナリオを超えたと思っている作品です(スーシェ版のアクロイド殺しは、元々の作品の映像化の難しさもありました)。

三谷さんの『黒井戸殺し』が素晴らしかったのは、以下の3点です。
・原作に準拠し、スーシェ版と異なり、屋敷ハウスキーパーと関連物語を残している
・大泉洋さんが主演
・真犯人の動機が、原作にない形で素晴らしいアレンジ

今回の『死との約束』も、スーシェ版ではだいぶアレンジされているので(死んでいていないはずの人が生きている状態物語がスタート)、三谷幸喜さんの原作準拠+世界にない独自色を期待できます。舞台がシリアから和歌山が舞台という味がなんとも言えません。

原作のウエストホルム卿夫人の役は、鈴木京香さんですが、物語のメインの家族となるボイントン(本堂)家は、まだ公開されていません。

公開まで時間があるので、興味がある方は『死との約束』の原作を是非。

余談ですが、スーシェ版ポワロの「死との約束」は筋立てが大きく変わっている中、発掘現場を仕切るボイントン卿の子息が、良いとして描かれています。英国貴族の息子で一見嫌な感じで無愛想な青年を、あのマーク・ゲイティスが演じています。

しかし、実際にはダメな父とその再婚相手で残酷な義母との間に立たされて、少なくとも父の顔を潰さないようにする父への愛情があり、かつそれほど影響力を発揮できないものの、義母にいじめられる彼女の養子たち(義理の兄弟)の様子にも気づいて、父に対応するように求めたり、他にも喪失の哀しみを出さないようにするなど、感情を表に出さない青年像が、巧みに演じられています。



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