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頭痛と呪い

遠くからサイレンの音が響く。
特に不自由なく今までを過していて、不満がないと言ったら嘘になるが、それなりに上手く生活出来ていたと思う。耳鳴りが段々と酷くなる。
人並みに恋はしたと思う。趣味は充実していると思う。六畳半で五年暮らしている。その暮らしの中で徐々に何かが削がれていった。興味や関心や何かが剥がれ落ちていった。眠りにつく時は毎回、世界を呪う。憎むべき対象はないし、失望する相手もいない。だけれども、世界を呪う。頭に残る不快な残響は無くなった。
私は今日も世界を呪う。小さな一室で、どこにも目を向けることの出来ないまま、呪うように、誰かの幸せを願う。明日も世界が、暮らしが、素晴らしいものであるように。晴れて気分の良いふかふかの天気になりますように。雨でしっとりとしたガラス玉のような綺麗な日になりますように。
サイレンの音が遠ざかって行く。

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