子どもが教えてくれたこと~何気ない日常の中にある喜びや幸せが、私たちの心を豊かにしてくれる。
私は、
学校とボランティアの橋渡しをする
地域コーディネーター
という仕事をしています。
今年度最初のボランティア活動は
小学1年生の
給食準備、片付けのサポートでした。
この活動は
昨年度から始まったもの。
昨年度は、
この時期に、
小学校から、もう一つ
大きな活動の依頼が入りました。
同時に
新しい2つの活動を
切り盛りしていくには
私にはあまりにも力不足で…
案の定
ゴールデンウイークを目前に
私は心のバランスを
崩しかけてしまいました。
ただ、この出来事をきっかけに
私は大切なことに
気付くことが出来ました。
自分に出来る事と
人に頼ることの線引きをすること。
無理をしないこと。
自分の気持ちを我慢せずに伝えること。
それはつまり
いい人をやめるということ。
私が変わった途端に
現実は驚くほど変化し
担当の先生のサポートも手厚くなり
私の負担は随分と軽くなりました。
そんなこんなで、
今年度は
大きな不安や怖れもなく
安心してスタートを切ることが
出来ました
また、有難いことに
1年生のご父兄を中心に
多くの方が
この給食準備・片付けボランティアに
登録して下さり、
毎日各クラス2~3名体制で
子どもたちへの支援をすることが
できました。
初めての給食、
初めての給食当番。
戸惑っていた子どもたちも
ボランティアさんのサポートを受けながら
少しずつ準備や片付けの仕方を
憶えていきました。
2週間を過ぎたころには
おかずの盛り付けも
だいぶ上手に出来るようになり
汁物を運ぶ足取りにも
余裕が見られるようになってきました。
また、
しっかり者の女の子が
場を仕切ってくれるようになり
少しずつボランティアさんの手が
必要なくなっていきました。
子どもってすごいな…。
感動する日々。
思えば
コロナ禍でも
こうしてボランティア活動を
続けて来れたことは
奇跡のよう。
ボランティア活動の実施を巡っては
何度も学校側と話し合ってきました。
感染者の少ない地域だったこともあり、
子どもたちの健康に十分留意しつつ、
これまで通り活動を実施したいという
学校側の考えから、
この2年間、
休むことなく
ボランティア活動を続けてきました。
とは言え
コロナによって
学校生活そのものが
大きく様変わりしました。
長い間、学校に行き来し
子どもたちや学校の様子を
間近で見てきた私は
正直、
その現実に戸惑ってしまいました。
マスクの着用。
消毒の徹底。
私語の禁止。
スキンシップの禁止。
人との距離を取る。
少しでも守れない子は
厳しく注意されました。
「鼻までしっかりマスクをしなさい」
「声を出してはいけません」
「離れなさい」
響き渡る先生の怒鳴り声。
先生も必死なんだ…
何度もそう自分に言い聞かせました。
無邪気に笑い
感じたままに表現する…
本来子どもはそういうもの。
でも、コロナになってから
子どもは子どもらしくあることを
徹底的に禁止されてきました。
学校に来るたびに
先生の怒鳴り声を聞くたびに
心が痛み、悲しくなりました。
以前よりは
規制も緩やかになり、
先生方の様子も幾分穏やかには
なってきましたが、
今でも、食事の際は、
言葉を発することが一切禁止されており、
それに対する指導も
かなり徹底しています。
それでも
やっぱり、子どもたちは
黙ってはいられなくて…
時々、小さな声で
話しかけてくる子がいるのです。
「これ、おいしい」とか
「これ…好きじゃない…」とか
「全部食べられない…」とか。
嬉しい気持ち
不安な気持ち
それらを誰かに受け止めて欲しくて。
そんな時
私はまず子どもたちの話を
黙って聞きます。
嬉しい気持ち、
不安な気持ちを静かに受け止め
出来るだけ安心できるような
言葉をかけ
その場をさっと去ります。
本当は
声を出すのはいけないこと…。
明らかにルール違反です。
でも…
人と人との温かい交流が閉ざされ
抑え込まれた子どもの気持ちは…
そう考えると
子どもの気持ちにほんの少しでも
寄り添いたい
そう思ってしまいます。
今、学校生活の中で
子どもたちは
これまでにないほどに
子どもらしくあることを禁じられ
感情を抑え込まれています。
そのことを
周りの大人はよく理解しておく
必要があると思います。
その上で
大人として、親として、
何が出来るかを考えていく…
そうすることで
子どもたちも、
救われるのではないでしょうか。
さて、
給食サポート最終日。
なぜかその日は
子どもたちが
いつもに増してフレンドリーでした。
お休みの前日だから
ウキウキしているのかな?
本当の所は分かりませんでしたが
給食前の手洗いの時間
少しざわざわした中で
いつの間にか
私の周りに
子どもたちが集まって来ていました。
それぞれが
思い思いのことを小声で口にします。
「おれ、何本歯が抜けたと思う?」
なんてことをね。
静かな声でうんうんと
一人一人の話を聞き、
受け止めると
満足して、
それぞれが
給食の準備を始めました。
給食がスタートして
3週間が経ち
給食の準備も、片付けも
すっかり上手になっていました。
その姿を見て
もう子どもたちだけでも
十分やっていけそうだな
と安心しました。
給食の片付けも無事に終わり、
そろそろ
教室を出ようとした時
側にいたM ちゃんという女の子が
私の首にぶら下がっている
ネームプレートをじっーと見て、
それから
にっこり笑って
小さな声で私に言いました。
「なおみせんせい…
いつもありがとう…」
途端に
胸いっぱいに
温かいものがこみ上げてきました。
「ありがとう…
とっても嬉しくて…
泣いちゃいそう…」
そう言いながら、
私は本当に泣いてしまいそうでした。
Mちゃんからの思いがけない
「ありがとう」の言葉
さらに、
その「ありがとう」には
たった今おぼえたばかりの
私の名前が
丁寧に添えられていて…。
M ちゃんのその優しさに
私の心は一瞬にして
満たされました。
こんな風に
生きる喜びや幸せは
何気ない日常の中にあって
そういうものを
日々大切に受け止め
感謝し、味わっていくことが
豊かな人生につながっていくのだと
改めて感じました。
人生のどん底と思える時であっても
いえ、そう言う時には、
なおのこと
このような
日常のささやかな出来事に
深く感動したり
そこに
生きる意味を見出したり
するのかもしれません。
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