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誰かの痛みに気付くということ

さて、ここに十二年間も出血の止まらない女がいた。多くの医者にかかって、ひどく苦しめられ、全財産を使い果たしても何の役にも立たず、ますます悪くなるだけであった。イエスのことを聞いて、群衆の中に紛れ込み、後ろからイエスの服に触れた。「この方の服にでも触れればいやしていただける」と思ったからである。すると、すぐ出血が全く止まって病気がいやされたことを体に感じた。イエスは、自分の内から力が出て行ったことに気づいて、群衆の中で振り返り、「わたしの服に触れたのはだれか」と言われた。新約聖書 マルコによる福音書 5章25-30節 (新共同訳)

こんにちは、くどちんです。キリスト教主義学校で聖書科教員をしている、牧師です。

喉が痛い。

喉が痛いんすわ!!!!!

この2~3日ずっと痛い。熱は無い。例の感染症とかは全く関係ない。
一種の職業病ですね。私は学期初めによくこうなるのです。新学期が始まって、授業が始まると、嫌でも喉を酷使します。もう教員歴20年になろうかというのに、今ひとつ喉が強くないんですよね……。疲れるとすぐ喉に現れます。「あなたの風邪はどこから?」「喉から!!!」と全力でレスポンスできる。(しなくていい)
乾燥とか、最近だと黄砂とか、たぶんその辺りも良くなかったんだろうな。

そんなわけで、「あ、喉に来たな」と思うとお医者さんからもらっている消炎剤を飲むのですが、今回はそれがなかなか効かなくて。念のため耳鼻科にも行って、切れかけていたお薬もまたもらったのですが、いやまあそれでもまだ痛い。

熱も無いし、体がしんどいわけでもないし、週明けはまた元気なふりして仕事をするわけです。
でもこの「ちょっとのことだけど、ずーっと痛い」ってのがなんか心を蝕むな……と感じているこの数日。と、書いている今も痛い。ビリっとズキっと痛いんですよ、喉の腫れてるその部分だけが。ぴえん(´;ω;`)(ぴえんはもう古いのだろうか)

「人様に見えるような分かりやすい大きな傷ではないけれど、ずっと痛みを抱えている」という人って、きっともっといるんだろうな。私のなんてまあ大したことないわけですが。(と、自分の痛みはすぐ過小評価するのもたぶん良くない)

この「ずーっと痛い」というストレスの中で思い出したのが、冒頭の聖書箇所に登場する女性でした。
この人、なんと12年間も病を抱え続けているんですよね。「ずーっと」のレベルが桁違い。私なんて数日でこんなに参っているのに。この人の苦しみはいかばかりか。

自分の意識が痛みにばかりフォーカスしてしまうこの数日の経験で、今まで何度も読んできたこの物語のこの女性の苦しみが、より具体的に感じられたような気がしました。
単に「痛い」という事実だけではなくて、「ずっと痛い」ということの苦しみ。そして、そのことは周囲にはあまり分かってもらいにくくて、その「分かってもらえない」という苦しみまでもがずーっと続くという状態。
辛かったろうなぁ……と、いつになく共感してしまうのでした。

そういう中で、「群衆に紛れて、後ろから、服の裾に触れる」という、限りなく「小さなシグナル」に気付いたイエスはすごいな、と改めて思ったわけです。

きっと私の周りにもいるんだろうなぁ、人知れずずっと痛みを抱えている人たち。私はちゃんとそういう人の微かな叫びに気付いてあげられているのかなぁ。

助けが欲しい時、寄り添って欲しい時に「そうして欲しい」って声を上げるのは大事なことだし、遠慮なくそうすべきだと言いたい。生徒さんたちにもそう伝えていきたいし、自分の周りの人にもそうして欲しいと思っているつもり。
でも自分はというと、やっぱりしょっちゅう「こんな私に構っている暇なんて、みんな無いよな」とか「もっと大変な人もいる中で、助けてなんて言ったら甘ったれだと思われるかな」とか、いらんことをいろいろ考えてなかなか言い出せず、痛みを自分で二重三重に増やして抱え込んでしまうことも多い気がします。
きっとみんなそういうところがあるんだろうな。

この12年間苦しんでいた女性も、もうその苦しみを抱えて生きることに慣れ過ぎて、「助けて」って言うことにさえ疲れ切ってしまっていたかもしれない。どうせダメ。どうせ無理。どうせ聞いてもらえない、助けてなんかもらえない。そんな諦めの中で暮らしていたんじゃないかな、と想像します。でもイエスを知って、何とか力を振り絞って、声にならない叫びをイエスに向けてみたら、イエスはちゃんとそれをキャッチしてくれた。振り向いて、探して、声をかけてくれた。
回復って、そういうところに訪れるんだなぁ、と思ったりしたのでした。

痛みを抱え続けているのに、「痛い」と言えない人がいる。「痛い」と言っても、その声が誰にも届かない、そんな状況に置かれている人がいる。
そういう人の「隣人」として歩める者になりたいし、そのためにも自分の心身の健康を保って、心のアンテナの感度を高めておきたいな、と思うのでした。

あー、ほんと喉痛い。今日も早く寝よう。年度初めの慌ただしい時期、寒暖差もあるこの季節、皆様もどうぞお体大切に。



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