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「俺、人を気持ちよくさせるの得意なんだよね」〜妙に引っかかる一言をとことん探求してみた〜

「俺、人を気持ちよくさせるの得意なんだよね」

とわざわざ人に言いたくなってしまうのは何故なのか。僕には彼の真意が読めませんでした。

あれからもうかなり時間が過ぎたので、所々情報をぼやかして考えたことを書いてみようと思います(ほぼフィクション)。

意地の悪い文章だと思いますのでご注意ください。

彼は僕のNつ上の先輩(仮)で、和な雰囲気の似合うイケメンでした(仮)。大体のことは卒なくこなしてしまう器用な人で、懐いている後輩が多くいたようです。

■築かれた壁

「俺、人を気持ちよくさせるの得意なんだよね」

彼が僕にそう言ったのは二人きりで他愛のない話をしている時でした。

たしかに彼の言動を振り返ると、なるほど、いつも細かいところまでよく人を褒めているし、時には「よしよし」と言って相手の頭を撫でたりもしています。人をいじって楽しげなノリを作り出すのも上手い。「自尊心をくすぐるのが得意」とも彼は自称していましたが、間違っていないのかもしれません。

僕の方はお世辞にもコミュニケーションが上手いと言えたものではないので、良いと思っても相手の容姿を褒めるなどというのは赤面ものですし、相手に触れるなど、同性異性にかかわらずかなり抵抗があって。周りの人が僕と話すよりは彼と話している方が楽しくしているのもよくわかります。

しかし、だからこそ、そんな彼が何故僕にわざわざ冒頭の言葉を伝えたのかを察することができませんでした。今だってわからないままです。彼にしてみれば冗談だったのかもしれませんが、このセリフ一つで僕は彼との間に薄く壁を建設してしまったのです。

■なぜか引っかかる

「俺、人を気持ちよくさせるの得意なんだよね」

という短くもかくも破壊力を持ったこのセリフは、僕の中で、自分は上手く人を利用することができる、当然、君や君の愛する人のこともね、と暗にそう伝えられたように感じられました。

しかし、人を上手く利用できる人がそんなことを暗にも伝えるはずがないじゃないかということで混乱したのです。普通、人は利用されていると知っていい気にはなりませんし、利用されているのではという疑いを持っただけでその人に協力する気を失い始めるものです。増して人を利用するのを得意だと言っている人に近づきたいとは思わないはずなのです。

いやいや、彼は別に「人を利用するのが得意」と言ったわけではありません。気持ちよくさせるのが得意と言っただけです。冷静に考えれば、人を気持ちよくさせることは(利用することも一概には)全く悪いことではありません。マッサージ師はそれを仕事としているくらいです。

それならどうしてこんなにも僕の心に引っ掛かりを残すのか。
毎日毎晩眠る前に「俺、人を気持ちよくさせるの得意なんだよね」という言葉が頭の中を渦巻くのをどうしたら良いのでしょうか。

あんまり繰り返されるのでとことん分析してやることにしました(え?今から?と思った方、そう今からです)

■言ってはならない

「お客様に気持ちよく過ごしてもらいたい」

ということで店内を清潔に保つのに余念のない飲食店があれば、僕らは悪い気はしないはずです。人の家に招かれた時、掃除が行き届いていれば誠意を持って接してもらっていると感じるものでしょう。

では、その人たちが来客である自分に向かって「俺、人を気持ちよくさせるの得意なんだよね」というようなことを口走るとどうかと考えると、やはり心地よくはないと感じます。気持ち良いと少しでも思った自分を返せと言いたくなるかもしれません。

「どう?気持ちよくなったでしょ?計算通りだわ」
とニヤニヤしながら言われた時のような感覚。よく「24時間テレビは感動ポルノだ」と批判する人がいますが、人は「どう?気持ちいいでしょ。計算通りっす」感が透けて見えるだけで冷めるものなのです。

僕は動物ものの感動映画も24時間テレビも号泣しながら見れるので、まさかこの批判に共感する日が来るとは思ってもいませんでした。怒っているわけではなく、「それは言わないほうがいいよぉ笑」という感じで面白いなと思っています。

■教訓と反省

「俺、人を気持ちよくさせるの得意なんだよね」

結局のところ、あの時の彼はなぜ、僕にわざわざそう伝えたのでしょうか。

それは、彼こそ気持ちよくなりたかったからなのかもしれません。いつも周りの人を気持ちよくする言葉を考え、上手に伝えている彼は、(自分がそれをやるのが図抜けていると思っているくらいですから)逆に周りから自分への賞賛や尊敬が質量ともに足りないと感じていたのではないでしょうか。

だから、自分の持つ才能の中でもとりわけ自信を持てることで、誰にとっても身近なものであろうと思えた「人を気持ちよくする才能」について親しい僕にどうしても伝えたくなったのかもしれません。

想定が正しければ、伝えられた時の僕の反応は最悪なものだったはずで、今これを書いていることも(もし匿名でなかったらなおさら)意地汚い行為であると言えます。

満たされないニーズを、光栄にも僕なんかに満たして欲しいと願っていたのなら僕はどうしてそれに答えられなかったのか。悔やまれます。

■最後に

さりげない気遣いとか、満たされないニーズの伝え方(お願い)って難しいですよね。

先輩(仮)の言動で気にかかったのはこの一点くらいなものですが、自分の失言はその比じゃありません。母にも、先輩にも、富山で知り合った大人の方々にもたくさん指摘していただいてきました。自分は失礼製造マシーンなんじゃないかと思うこともあるくらいです。

とはいえ、叱られるとかなり凹むので、こうして周りの人の言葉から受けた印象から自分で考え学んでいこうとしています(そこも意地が悪いのかも?)。

まだまだ貧弱な想像力を働かせ、育て、さりげない気遣い、ちょっぴり下手なお願いに気づいて人と接せられるようになりたいなと思います。

ではでは。


今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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