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自己犠牲的GIVERの末路〜小説 『春から夏、やがて冬』から学ぶ〜

今回は、小説の紹介に初挑戦です。もちろん、ただの紹介じゃあありません。

取り上げるのは、僕が好きな歌野さんの『春から夏、やがて冬』です。

作者の情報などは飛ばします。

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この本を初めて読んだのは高校1年生の時でした。

小説を二度読みすることがほとんどない僕ですが、これだけは5回ほど読んでいます。

それくらい、衝撃的でした。

読むたびにいろいろ発見がありますが、
今回は、この小説から得た学びをなるべくその他の知識と結びつけて伝えてみたいと思います。


あらすじ
スーパーの保安責任者・平田は万引き犯・末永ますみを捕まえた。いつもは容赦なく警察に突き出すのだが、彼女が昭和60年生まれだと知り、即帰らせた。昭和60年生まれ、亡き娘と同じ誕生年だった。

平田の娘・春夏が高校2年生(2002年)のとき、
塾から自転車で帰宅中に轢き逃げに遭い死亡した。

轢き逃げ犯がすぐに救急車を呼べば助かる命だった。

遺体発見時、春夏はヘッドホンをしていた。携帯の電源もついていたことから、警察には「わき見運転してたのだからしょうがない」というようなことを言われ、結局轢き逃げ犯も捕まらず。

平田は春夏に事故前にヘッドホンについて注意していたこともあり、もっとちゃんと注意していれば、と悔やんだ。

妻もいつも車で春夏の塾の送り迎えをしていたのに、その日に限って自分の趣味のせいで送り迎えをしなかったからと、娘が死んだのは自分のせいだと自責の念にかられていた。

平田と妻はビラ配りをしたりして轢き逃げ犯を捕まえようとするが一向に有力な情報は得られず。

妻は春夏の幻影まで見るようになり、そんな妻に平田は連れ添ってはいたが、2007年、時効の3日後、妻は手首を切って自殺した。

家族という寄り処失った平田は、自身の病も放置して無気力にスーパーの保安責任者として生きるが、昭和60年生まれの人を見ると、もし春夏が生きてればと空想してしまい、万引き犯のますみのこともそれで甘やかしてしまったのだった。

それから度々平田はますみと会い……

学び 〜身を滅ぼすGIVEは悲しい結末を呼ぶ〜

自己犠牲的に与えるますみと、ますみ以外の寄り処のすべてを失った平田、この平田も自己犠牲的に与える人なのですが、この出会いは最悪の結末を予感させるものでした。

自己犠牲的に与える人は、自分を大切にすることをしません。自分をすり減らしてでも他者に多く与えようとしてしまうんです。

他者が傷ついているのを見るとなおさら自分をすり減らしてでも助けようとしてしまいます。

自己犠牲的なギバー同士が出会うと、お互いが自分をどんどん苦しめながら尽くし合い、お互いがだんだんと苦しんで行くのを見ることでさらに苦しんでいく

たぶん自分が与えられていい存在だと思っていないために自分を自分で傷つけて与え続けてしまうんだと思います。悲しいことに。

その最悪の展開を描いたのがこの本だと思います。

さらに運が悪かったのは、出会った両方が人生のどん底状態にいたということです。どちらも本気で自分のすべてをかけて尽くすことに引け目がありません。

与えることは大事ですが、自己犠牲的に与える続けるとテイカーを助長し、テイカー以外の相手をより苦しめることになってしまいます。


ほとんどの人は、あなたが苦しんで行くのを見ると余計に苦しくなります。

テイカーはすべて奪っていきますが、なにも返してはくれません。

自分の時間、お金、情報、注意力を与えるときにはそれが自分にとっても良い結果をもたらすのだと相手に納得してもらう方がいいのだと思います。

相手が受け取りを拒むときには、真摯に伝えましょう。私は他ならぬあなたに自分の温かな気持ちを注ぎたいのだと。あなたがいることが私の救いであると。あなたが傷つくのが私にとっても辛いと。

でないと、自己犠牲的でない本物のギバーは寄ってこないですし、テイカーは好んで近寄ってくることになるでしょう。


最後に

さんざん学びを書いておいてなんですが、
この小説の一読目からギブアンドテイクについて学ぼうと思って読むのはなんか、いやです笑

純粋にこの物語を楽しんでほしいからです。面白いんです。


ではでは。


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました🙇‍♂️


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