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可愛い子には通訳させよ

8月末から始まったGreen Innovator Academyでの同時通訳。略称のジーアイエーで通っているようです。このプログラムに登壇するゲストスピーカーを通訳するのはかなり難易度が高いですが、その分得られるとは知識と考え方と、最も大事なのがモチベーションです。訳せば訳すほどもっと訳したくなって、通訳依存症ってあるんじゃない?と思うほど通訳が面白い。

そのGIA通訳ですが、私一人ではとても捌ききれないほどの通訳量なので、通訳勉強会の受講生や外大の卒業生に手伝ってもらっています。皆さんのお陰で、何とか通訳が回っています。世の中にはこんなに通訳することがあるんだということが実感できます。

もちろん通訳者の状況は人それぞれで、プロジェクトが開始してから転社した人、出産した人、大学院入試を受けた人と、本当に大変な状況の中、GIA通訳プロジェクトに関わってくれています。必死こいてやったるねんという執念がISGにはあるような気がします。

今日一緒に通訳してくれたのは、大学院時代の(一回り年下やけど)同級生で、新卒です。終わってから「同級生の大西さんと通訳できて良かったです」と言ってもらえました。

僕は新卒の頃は思いもしなかったけど、誰と仕事をするかというのは、実績を積んでいけばある程度コントロールできるということに気づきました。それと、大学の後輩からお仕事を紹介いただくことも増えてきて、もう「先輩だから、後輩だから」という考え方は古すぎると悟りました。誰もが誰かのお世話になっているのが現実だと思う。

誰に対しても同じように接することがなぜ大事なのか、今なら身に沁みて分かる。昔会社で一緒に働いていた人がフリーランスの仕事を紹介してくれたりして、会社での言動は退社後も良くも悪くも付きまとうわけで。上手くいけば自分の好きな人達がお客さんになって、自分がよく知っている通訳仲間と通訳翻訳できて。それって最高なんじゃないの?と。もちろん受講生はレッスンなどでバシバシ鍛えてOK出した後の話ですが。

このように通訳を志す人の中で、有り難くも既存の通訳学校ではなくISGの門を叩いてくれる人がいます。そこで私が指導する受講生のレベルは各々が異なってますが、もうプロレベルに達したよね、現場に放り込んでも生き残るよね、と思う受講生が複数います。

そういう時に僕の責任は何かと言えば、そういう受講生に出来るだけ通訳の仕事をさせる機会を提供すること。そこで学ぶことは非常に多いです。仕事だから通訳レッスンよりも本気で準備するし、分からないことは質問バンバンしてくれるし、「この通訳にかけてます」という良い焦りがヒシヒシ伝わってきます。

最近は直契約で通訳をさせていただくことも増えまして、こちらのリクエストもしやすい環境になりました。その中で後進育成の為に大事なのは、受講生が僕が入るお客さんの会議に出来るだけ見学者としてまずは送り込むこと。お客さんに育成の趣旨を理解してもらい、お客さんの会議にバンバン受講生とか学生を見学させること。こういうのをやってるフリーランス通訳者はあまりいないように思う。最終的に受講生を同僚にすること。これは僕の使命と言ってもいいかもしれない。ここまで来ると一人の通訳する人間がいるというよりは、通訳を介して大きなエコシステムが出来るようなイメージ。

通訳勉強会には本当に通訳が上手になっていく受講生がいます。そういう人材をレッスンだけして終わりですかって話で。自動通訳とかAI翻訳とか言われているけど、僕の回りではやはり通訳者は足りていない。僕がOKだと思えるレベルまで通訳力がついた受講生はバンバン実戦経験を積んでもらわないと、自分の仕事がいつまで経っても後の世代に渡っていかない。

受講生の中には「私なんかまだ…」という意識の方もいるのですが、もったいないなと思います。受講生が求められると思っている通訳と、実際の現場で求められている通訳力は、いい意味でそこまで乖離していない。かなりいいところまで来ている。だけどその距離感は受講生からは見えにくい。それを見える化してあげるのも僕の仕事。

社内通訳時代は自分が社員の一人として、会社で発生する会議をこなすことがほぼ全てだったと思います。でも今はもっと通訳というものに可能性を感じているし、広く捉えるように考えが変わってきている。プレイングマネージャーともいうけど、自分で通訳しながら、どうしたらこんな面白い仕事を他の人と共有できるかなって昼夜考えてます。

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