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ことり

小さな限られた場所でも人は生きていける。

「ことり」の小説に出てくる人や動物、モノにはなぜか、実態を持たないフワッとした輪郭があって読んでいる側からすると、不思議な世界観に入ってしまう。お兄さんと、小父さんとで交わされるポーポー語でのやり取りや、棒つきキャンディーを選び取る手順、小父さんと園長先生との穏やかな会話など。常に静謐な雰囲気が漂っている。

特に、お兄さんの、鳥は生まれつき考える生き物だ。なぜなら、鳥の目は両側についており、ものをじっと見るためには首をかしげなくてはならない。や、台風の日に幼稚園内で飼っているトリに対して、怯えているのではなく、慎重なのだと語るシーンは、仕事や人生で選択を迫られる中で、常にスピーディーな行動を求めるのではなく、そっと優しく見守ってくれるような視線を感じて励まされた。ことりのさえずりのように慎ましく、穏やかな生活があってもいいのではないだろうか。

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