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苦海浄土

外出自粛要請に伴い、家にいることが多くなってきたので、前から気になっていた石牟礼道子さんの、「苦海浄土 わが水俣病」を胸が締め付けられるような思いで読んだ。

熊本県南部、不知火海にある漁村をおそった奇病。

会社は、有機水銀が原因と分かりながら、海に排水をすることをやめられない。近代国家の経済成長の犠牲になってしまったのは、自然の恵みによって生活を営んでいる人たち。

この物語に出てくる人物たちは、清冽な湧水のように、ピュアで、まっすぐで透明感がある。

いつも決まった時間に起き、茶を沸かし、お昼にはご飯を炊き上げ、夕方には焼酎を飲みに出かける、仙助老人。

二丁櫓の夫婦舟で海に出る坂上ゆきと、茂平。

彼女、彼らの言葉は、まさに言葉にすることができなかった魂の声である。

「うちゃぼんのうの深かけんもう一ぺんきっと人間に生まれ替わってくる。」

本来は最高の栄華を誇っていた人々の海が、なぜ苦しみの海とかわってしまったのか、この現代を生きている我々は決して忘れるべきではない。

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