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わたしとマムタロト


◇  prologue  ◇

2018年4月18日。MHWアプデ第2弾のPVが発表された。

私はMHWの購入が後発組だったので、4月と言えばようやくひと通りのコンテンツを触り終えたかそれくらいの状況。なんか知らないけど新しいモンスターが増えるのか。楽しみだ。盛り上がるTwitterのタイムラインとともにPVを見る。映像には、細長い滑り台のような斜面を滑り降りたり、楔虫を使ってフィールドを軽やかに飛び回るハンターの姿。大砲や落石といったギミックもあるらしい。新モンスターが辺り一面に灼熱の炎をまき散らすカットを背景にして、金色の文字で「マム・タロト」という名前が画面いっぱいに表示された。

アップデートの詳細に関して国内でのアナウンスが海外よりも遅れていたため、英語の記事をあれこれ検索してみる。『集会所内の16人で協力して撃退を目指す』。翻訳するとそんな内容が書かれている文章を見つけた。4人より多い人数で狩猟を行うコンテンツはこれまでのモンハンタイトルにはもちろん存在しない。いったいどういう仕組みなのだろうと期待に胸を膨らませながら、翌日の実装に備えてその日の晩は眠りについた。

このモンスターがのちに自分のアイデンティティの一部になるとは知らずに。

◇    ◇    ◇


この記事では、MHW無印における【上位マムタロト】【上位歴戦王マムタロト】との思い出を、時系列に沿ってエッセイ形式で綴るとともに、マムタロトというコンテンツの新規性や良かった点について評価してゆく。

地母神の豪奢なる宴


2018年4月19日

「マム・タロト」なるモンスターが実装された。紹介映像が公開された翌日のことだ。用事を済ませて帰宅し、早速PS4の電源を入れる。当時気に入っていた無属性スラアクの「デモン」を背中に担いでリフトをのぼり、アステラの集会所に降り立った。

「初見のモンスターは最初はソロで倒す」というマイルールがある。これは2ndGでモンハンを初めて以来ずっと続けている。集会所のカウンターに駆け寄ると、私は迷うことなく参加人数を”1”にしてクエストを受注した。地母神の豪奢なる宴。いい響きだ。これがマルチ推奨のクエストであることは知っていたが、このときはまだ「推奨」の本当の意味を理解していなくて、頑張ればひとりでもクリアできるものと思っていた。MHXXの超特殊許可クエストだって一応は全部ソロでクリアしている。少なくとも下手ではない。


黄金郷に着いて、まずそのフィールドの広さに驚かされた。キャンプから飛び降りたもののマムタロトがどこにいるのか分からない。頭上を見上げると、縦方向に2層3層にも空間が伸びている。見知らぬ環境生物もたくさんいた。しばらく走り回ったのち、エリアの反対側に動く影を見つけた。

黄金に煌めく角。全身にも金色の鎧をまとっている。綺麗だ。ハンターの存在など気にも留めず、彼女は悠々と黄金郷を闊歩していた。試しに武器で攻撃してみたが、硬くて全然ダメージが通らない。PVを思い出し、近くにあった大砲に弾をこめて発射してみる。落石も使ってみたかったが、どれが落とせる石なのか見た目で分からずに断念した。そんなこんなで訳も分からず走り回っているうちにマムタロトは帰ってしまった。

何度か集会所と黄金郷の行き来を繰り返し、とりあえず「追跡レベル」というものを上げればよいことを理解する。追跡LVのゲージはほんのちょっとずつしか溜まらなかったが、それでも遊び続けた。開始から3時間ほど経過した頃だろうか、ようやく追跡LVが上限と思われる"6"に到達したがそれでもクリアは出来なかった。ソロは一旦諦めよう。いまは一刻も早くこのモンスターの報酬を手に入れたい。そう思った。

その日の晩、Twitterで参加者を募って16人部屋を立てたのだが、それは私にとってMHWにおける初めての部屋募集だった。


ガイラ武器を求めて


2018年4月21日

16人部屋では、ソロの時と比べて驚くほど簡単に追跡LVが上がり、2回か3回周回することで大角もきちんと折れる。その日以降は、なるべく大人数の部屋で遊ぶようにした。人数が多ければ多いほど有利なのは間違いない。

Twitterで情報を収集しつつ、実装から2日後には身内のあいだでクエストの基本的な流れが共有できてきた。1回目のクエストではマムタロトが解き放たれるまで戦ってから痕跡を回収して帰還。2回目のクエストでは、エリア4まで到達したら睡眠弾を使ってマムタロトを寝かせ、爆弾を置く。睡眠爆破は2セットこなせば大抵は大角破壊できる。2回目のクエストが追跡LV3だとちょっと難しい、追跡LV4以上ならクリアは安定。そんな感じだったと思う。

このときも私は、当時いたく愛用していた無属性スラアクを一心不乱に振り回していた。解き放つ前の弱点属性が雷であること、解き放ったあとの弱点属性が氷であることはもちろん知識としては知っている。今でこそ考えられないが当時の私は装備ステータスとしての「火力」に驚くほど無頓着で、スキルとか属性といったものを全く気にしていなかった。実際、MHWを購入してから2カ月近くは、ストーリーで上位に到達したときに初めて作った装備をそのまま着ていたほどだ。

いまビデオクリップを改めて見返してみても、立ち回りの点でもかなりめちゃくちゃだった。破壊済みの部位も含めて手当たり次第に攻撃していたり、解き放つ前から大角に零距離解放で張り付いてばかりいたりと、全くと言っていいほどクエスト進行に貢献できていない。ただただ「斬ってて柔らかくて気持ちがいい」から、好きなようにやっていた。思えばこのとき私は、マムタロトというクエストの真髄を何一つ理解していなかったのだ。


大角を破壊して集会所に戻るとカウンターで報酬を受け取る。先に述べた通り、私は装備のステータスには全くこだわりがなかったし、この武器種しか使わないといった縛りもなかったので、基本的にはオレンジ色のアイコンのRARE8鑑定武器は全てありがたく受け取っていた。周りの人たちは、そんなRARE8武器のなかでも「当たり武器」とされる、ほんの数本の高スペックな武器を引くことに全てを捧げているようだ。ひとつの武器種しか使わない人は、報酬画面でその武器のアイコンがないと見るや否や、ひどく落胆している。そういう意味では「当たり」の感覚の範囲が人より10倍20倍も多かった私は、周りと比べてモチベーションも高く、周回自体をかなり楽しめていたほうだと言えた。私は当面の目標として「RARE8武器を全種類集めること」を掲げた。


エンプレスシェル冥灯と6固定周回法


2018年6月15日

マムタロトの実装から約1ヵ月後の5月末、復活モンスターとしてナナ・テスカトリが追加実装される。Twitterのタイムラインから受信した情報によると、ナナゼノ派生のライトボウガン「エンプレスシェル冥灯」がどうやらマムタロトと相性抜群のようである。MHWのライトボウガンはそれまでろくに使ったこともなく、ネットで調べただけの装備を何も考えずにそのまま着た。ほんとに何も分かっていなかったので、「これ貫通弾は使いますか?」「電撃弾だけでいいです」というやり取りをクエスト同行者としたのを今でも覚えている。

冥灯は快適だった。部位破壊も剣士の100万倍くらいサクサク進むし、睡眠弾も撃てるからそのままエリア4に直行できる。そしてなにより斬裂弾で大角を撃ち抜くのが本当に楽しい。私はそれまで使っていたスラアクをあっさりと投げ捨て、あっという間に冥灯ライトの世界にハマっていった。ただ、当時もまだクエストの仕様までは深くは理解していなかった。あくまでマムタロト初心者として楽しく遊んでいた時期だ。


2018年7月14日

月日も流れ、私は冥灯ライトを完璧に使いこなせるようになってきた。そしてこのあたりから、身内狩りでのマムタロト周回は「6固定周回法」へと静かに移行していった。

「6固定周回法」というのは、集会所のシステム欠陥を突いた、いわば不正な遊び方だ。具体的には、追跡LV6まで上げた集会所に人柱のハンター1人を残した状態で他のメンバーがクエストに出発し、大角を破壊する直前にクエスト参加者各自が回線切断を行って「オフラインの状態」で大角を破壊する。そのまま特別報酬を受け取ってから元のオンライン集会所(残っていたメンバーが保持してくれている)に戻ってくると、再び追跡LV6のクエストを受注できるという仕組み。つまり、追跡LVを上げるためだけの初回のクエストは完全に省略して、報酬の貰える追跡LV6のクエストだけを繰り返し遊ぶことが出来るのだ。

マムタロトの追跡LVは集会所に紐づけられており、マムタロト個体とプレイヤー個人とを紐づけるプログラムは一切なかったため、このような不正が可能だった(もちろん今は修正されている)。認知していた範囲だけでも、非常に多くのハンターがこのやり方をクローズに共有し、早いときには1周5分もかからず最高達成度の報酬にありついていた。それまでは2回分割の周回法で早くても1周20分~30分はかかっていたので、この「6固定周回法」により周回の効率は格段に上がった。


すべてのはじまり


2018年8月17日

しかし。当たり前っちゃ当たり前かもしれないが、その時は来た。この不正なやり方を親切にもカスタマーサポートに報告した人間が現れたのだ。問題はTwitterでも表沙汰となって、急遽マムタロトにシステム修正が入った。マムタロト個体と個人の紐づけが行われ、例えオフラインであっても、一度完走して報酬を受け取った個体のクエストには再び参加することは出来なくなった。6固定周回法の廃止である。

それまでは5分くらいで周回出来ていたので、また1周20分30分もかけて大角破壊をするルーティンには戻れる気がしなかった。楽しかったマムタロト周回もこのへんが潮時かな、と半ば感じていたそんなある日。フレンドからとあるマムタロト周回に誘われた。


「1折やってみない?」


「1折……?」追跡LVを上げずに1回目のクエストで大角破壊をする。そういう手法が存在していることは知っていた。でもそれは自分とは全く縁がないものだと思っていた。日頃からTAなどをやっている雲の上の超絶上手い人たちが、拡散弾や状態異常などの拘束を巧みに駆使してようやく折れるレベル。そんな感じの認識だった。細かい手順などがあるのか聞いてみると、全然そんなことはなく、「エリア4で近接武器を担いで2回くらい乗りダウンを取ればいい」とのこと。果たしてそんなので折れるのだろうか。

半信半疑で言われた通りに近接武器を担ぎ、エリア4の登れる壁も使いながら乗り値を溜めた。今までライトボウガンでの立ち回りしか練習してこなかったので、被弾もそれはかなりの回数だったが、それでもひたすらに角を殴る。殴る。…気づいたときには大角が折れてクエストクリアのファンファーレが鳴っていた。あれ…?これ、自分にも出来る遊びなのか。私にとってこれはかなりエポックメイキングな出来事であった。


『今さら聞けないマムタロト』誕生前夜


2018年9月21日

さっそくこのやり方を自分のサークルに持ち帰り、試行錯誤を繰り返した。いままで適当に流していたエリア1も、落石や大砲の使い方を見直す。部位破壊数の目安はどれくらいにしよう?エリア4の近接武器での立ち回りは?状態異常はどこで使う?意識的に遊ぶようになって、部位破壊数とマムタロトの解き放ちに何らかの関係性があることも体感的に気づき始める。マムタロトというコンテンツに「戦略ゲーム」としての側面が垣間見えた瞬間だった。


2018年9月27日

エリア1だけでも考えることは山ほどあった。このエリアは一見、歩いているだけの大型モンスターを武器や大砲で迎撃するラオシャンロンのような砦戦を思わせる。でも実際はもっともっと奥が深い。

まず、クエスト開始時のマムタロトの初期位置3ヵ所(※歴戦王では2ヶ所)に対し、それぞれの移動ルートは必ずしも1通りではなく、フィールドに設置された置き岩を先回りして破壊しておくことでマムタロトの進行ルートは分岐する。今作からは大砲の銃口の向きを自由に動かすことが可能で、同じ砲台でも角度と発射タイミングを変えれば攻撃を当てられる部位の選択肢が何通りかある。落石の当て方も1通りではない。さらに落石は部位破壊や大ダウン目的だけとしてでなく、赤熱化や硬化タイミングのコントロールとしても使える。単調で作業感が強いと言われがちなエリア1だが、チャート上のノルマを達成するために、同行メンバーの行動に合わせて柔軟にギミックの使い方を変えてゆく非常に戦略要素が強いエリアなのだ。

ところで一方のタイムラインでは、エリア1は「痕跡集め」だけで済ませる周回法が主流であった。2周分割のうちの1回目は一切戦闘をせず、マムタロトの痕跡だけを集めて追跡LVを上げるというやり方である。私はこのエリア1の戦闘の楽しさをどうしても伝えたく、これまでに得られた知見をまとめて『#今さら聞けないマムタロト』というハッシュタグに【大砲編】と称してツイートを投稿した。

これが予想外に大きな反響を呼んだ。


1折が手段ではなくなった日


2018年11月15日

1折の試行錯誤は続いた。タグの続編を作ると決めていたのだ。

最初のツイートではエリア1の攻略紹介だけだったが、エリア2、エリア3の戦略要素もかなり面白い。例えば「マムタロトがエリア3で解き放たれるのは、直近の地面潜行から起算してちょうど5部位目を破壊したとき」というアルゴリズムが存在する。エリア3を瞬時に通過するためには、エリア2では潜行後からの部位破壊数を"4"で止めておき、エリア3に入った瞬間に5部位目を壊せば無駄がない。

さらにエリア3での5部位目の破壊は、エリア2からエリア3へのエリチェン中に済ませるのが最も早い。マムタロト本体がエリア境界線をまたいだ瞬間から、それ以降の部位破壊はエリア3での部位破壊としての判定になるからだ。エリア移動開始時にはハンターはもちろんマムタロトの後方にいる(エリア2側にいる)ので、この5部位目として尻尾の左右いずれかを残しておけば、ハンター自身はエリア3まで入らずともエリア移動中に後方から尻尾に電撃弾を撃つだけで部位破壊ができる。

「エリア3に入らずにエリア3での部位破壊を完了させること」は、単に部位破壊の条件を早く満たせるというだけでなく、もうひとつ重要なメリットがある。マムタロトは上記部位破壊数の条件を満たしていても、ハンターが同じエリアにいない限りは勝手に解き放たれることはない。エリア3で冥灯ライトを持ったまま解き放ちを見届けてしまうと、マムタロトはそのままエリア4へと直行してしまい、ハンターがキャンプに戻って近接装備に着替えている時間が完全にロスになってしまう。マムタロト本人がエリア4に入場した時点で、立ち去りまでのタイマーカウントはスタートしてしまうのだ。エリア4のシビアな制限時間のうちの貴重な1分2分を、キャンプとの往復だけで過ごしてしまうのは勿体ない。ただでさえ1折は時間との戦いである。

「エリア2でエリア3判定の部位破壊を済ませてからキャンプに戻って着替え、エリア3に入場する」ことで、エリア4用の装備を着た状態で解き放ちを迎え、マムタロトと同時にエリア4に入場できる。エリア4の制限時間をフルに活用できるという形だ。


次第に自分たちなりに「1折」というものが確立できてきた。エリア1の最適解、エリア2の部位破壊手順、エリア4の構成…etc.
いわゆる上手い人たちはおそらくマムタロト実装時の4月の段階で既にここまで組み上げていたに違いない。自分たちがいま何か新しい発見をしたわけじゃない。ただ、私は、自分の足で見つけて、考えて、戦略を練ることがひたすらに楽しかった。モンハンでこのような経験をしたのは初めてかもしれない。当初の目標だったRARE8武器コンプはとうの昔に達成していたが、飽きることなく毎日1折を続けていた。もうそれ自体が目的だったから。

11月には通常個体のペア1折を達成した。


狂乱のエルドラド


2018年12月12日

辻本プロデューサーからの唐突な発表があった。歴戦王のマムタロトが登場するらしい。これは衝撃的だった。発表から数日後、実装の前日に満を持して実機プレイ映像が公開される。エリア1の移動速度や赤熱解除がかなり早まっていたり、エリア2の開幕で謎の潜行をしていたりと、火力ステータスやモーションだけでなくクエストシステムも根本から変わっている模様だ。

「また白紙の状態からマムタロトを楽しめる!」

発表を聞いて、それはもう、本当に、本当に楽しみだった。

たった1回の実機プレイ映像を何度も見返した。マムタロトの挙動と開発陣の発言などから総合的にシステム変更点を推測し、その日の夜には新しい1折チャートを考えて投稿した。もちろん歴戦王マムタロトはまだ実装すらされていなかったのだが、私はこの時点で既に、エリアごとの部位破壊ノルマを完全に的中させていた。


2018年12月20日

いよいよ歴戦王マムタロト実装当日。仲間のハンターたちとともに黄金郷に繰り出す。さっそく1折を!と意気込んでいたのだが、そう簡単には折れてくれなかった。エリア3までは順調に進むのだが、エリア4の大角耐久値が通常個体に比べて大幅に増加しており、全くもって火力が足りない。そしてそれとは別に、我々の前には大きな問題が立ちはだかっていた。特別報酬の虹枠の枠数が決まるアルゴリズム(6枠になるか8枠になるか)が全く分からないのだ。

新たに追加された鑑定武器をいち早く回収するために、なんとしてでも報酬枠が決定される条件を突き止める必要があった。後日これは完全にランダムであるという結論に至るのだが、さすがにランダム要素は入れてこないだろうと思い込んでいた当時は、あらゆる条件でクエスト進行を試みながらそれを突き止めようとしていた。最初のまるまる3日間は報酬の受け取りすら完全に諦めて虹枠の検証に費やした。結局意味はなかったが、これはこれで良い思い出のひとつではある。


2018年12月25日

実装から5日後、初めて歴戦王マムタロトの1折に成功。ただ、これがものすごく難しい。通常個体の何倍も難しい。1折に成功したというよりはたまたま上手くいって折れただけ、という表現のほうが近いかもしれない。

サークルメンバー全員が通常個体の1折経験者であったにもかかわらず、その後の挑戦でも1折成功率は2~3割程度といったところで、あまりに失敗が連続した日は、もはや1折に挑戦することすら諦めて2周分割と決めて周回していたほどだ。歴戦王マムタロトの1折安定は、もう自分たちのプレイスキルでは厳しいんだろうなと感じていた。本当に上手い人だけが出来るコンテンツになってしまったのかもしれないと。


アサシンの装衣と滅龍ダウン


2019年1月28日

ただそれでも試行は繰り返した。エリア4の拘束は乗りダウン2回だけじゃ絶対に足りない。麻痺も使いたい。スタンも使いたい。睡眠も入れよう。状態異常の順番は?武器種構成はどうしよう。全てを1から考え直して新しい作戦を練り上げてゆく。そしてある時期を境に1折の成功率は100%になった。それは戦略が火力に打ち勝った瞬間だった。個々人が上手くなくてもいい。やり方さえ押さえれば確実に折れる。そう確信した。


歴戦王マムタロトでは、とにかくエリア4での拘束が安定クリアのための鍵を握っている。たった6分間の制限時間のなかで、50400もある大角耐久値を削りきらなければならない。

例えば睡眠。通常個体時代はマムタロトが寝たら爆弾を2個だけ置いて起爆し、それで満足していた。歴戦王ではこの時間も一切無駄には出来ない。マムタロトが完全に寝る直前に2個、起爆に2個、起き上がってからのSA(スーパーアーマー)中にさらに4個の爆弾を置いた。1人あたり8個、4人で合計32個。これだけで大角耐久値の28%を削ることができる。

乗りも工夫した。エリア4で迅速に乗りに移行できるようにすべく、乗り値はSAなども活用してエリア1であらかじめ貯めておく。「乗りダウン中には次回分の乗り値の蓄積は出来ないが、乗り中には蓄積できる」という仕様を活用して、エリア4では2回目の乗り値を効率的に蓄積した。また、乗りが生じたときのマムタロトの移動ルートは2通りしか存在しないので、その動きを読んで軌道上に爆弾も設置しておく。

そして、最も興味深いギミックのひとつが、滅龍ダウンやアサシンダウンなどと呼ばれる「特殊ダウン」だ。マムタロトは滅龍石(を含むスリンガー弾)の蓄積が一定数に到達すると、怯みが発生する。平時ではその場でよろめくだけで特にこれといった効果はないのだが、「マムタロトの両前脚が地面から離れている瞬間に怯みが発生すると、大ダウンが取れる」という仕様があり、これがエリア4の面白さを加速させていた。マムタロトの攻撃モーションの一部には両前脚が地面から離れる瞬間があり、あらかじめ規定数-1まで蓄積させておくことを前提として、その瞬間に滅龍石を当てると、ダウンが取れるのである。状態異常による拘束手段を持たない武器種にとってこの拘束はかなり大きい。

アサシンの装衣でも同様のダウンが取れる。アサシンの装衣には「未発見状態で武器攻撃をするとモンスターが怯む」という効果があるのだが、マムタロトの両前脚が地面から離れた瞬間に、けむり玉を焚いて未発見状態を作り出して武器攻撃を当てることで、大ダウンを狙えるのだ。こういった情報をまとめ上げた【特殊ダウン編】をはじめとして、歴戦王に対応した攻略記事もいくつも投稿した。



『今さら聞けないマムタロト』の集大成


2019年3月18日

いわゆる「すごく上手い人たち」ー私より遥かに上手い人たちはー歴戦王マムタロトをTAとしてコンテンツ化していたが、まだ1折そのものは一般的にそこまで浸透しているわけではなかった。このときもまだ「痕跡周回」のほうが圧倒的にメジャーだったように思う。YouTubeなどでは1折の手順を解説している動画もいくつかあったが、それを観ても少なくとも自分は「上手いから出来てるだけでしょ」といった感想しか持てず、私はもっとこう語弊なく「誰でもできる安定解」を紹介したいと思っていた。失敗の要素を可能な限り排除すべく、1折チャートを細部までさらに突き詰めた。

サークルメンバーの多大な協力と膨大な検証・製作時間を経て完成したのが、#今さら聞けないマムタロト【1折編】だ。投稿すると瞬く間に拡散され、記事の総閲覧数は15万回近くにまでのぼった。当時のTwitterのフォロワー数がまだ1000人台であったことを考えると、これはかなり大きな伸びだ。



私のツイートをきっかけに1折を始めた、という声も聞いた。本当に嬉しかった。自分の投稿が誰かの狩猟体験に彩りを与える。それはモンハンをはじめて以来ずっと抱き続けてきた夢でもあった。



この1折チャートでは伝えきれていないマムタロトの魅力もまだまだあった。1折のやり方は無限大だ。状況に応じて柔軟に戦略を変えてゆく楽しさがそこにはある。紙面の都合上、記事では1通りのやり方だけを書いたが、「この通りにやらないと折れない」わけではなく、それは「プレイスキルという要因を極限まで排除した安定解」のなかのたった一つに過ぎなかった。1折の楽しさをより多くの人に布教すべく、記事の投稿後もサークルの枠を超えて様々なハンターたちと共に黄金郷に飛び出した。

2019年8月25日

装備紹介や攻略方法をツイートしていくうちに、マムタロトを愛する人たちと繋がったり、ありがたいことに検証情報を提供していただいたりして、集合知はさらなる高みへと到達する。プライベートでの1折も、最初は4人だったのが、徐々に人数を減らして最終的には2人でも折れるようになった。対マムタロト最難関武器種とも言われるヘビィボウガンPTでも1折に成功。アイスボーンが発売される約10日前には、最終目標でもあった裸4人という縛りで1折を達成させる。上位環境での私のマムタロトライフはこうして幕を閉じた。



最後に


上位マムタロトはこれまでのモンハン史上で最も大好きなコンテンツだ。明確なフェーズ制、クエストを通じたアクションと戦略性の融合、一撃離脱の立ち回りを基本とするモーションプランニング、コミュニケーションツールとしてのMHへの回帰。そのすべてが好きだった。


マムタロトと、
マムタロトを通じて出会った全ての人に、
絶大な感謝を。



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