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構図を使いこなして「良い絵」を描こう!

KUAイラストアドベントカレンダー、12月18日は行間先生から『構図を使いこなして「良い絵」を描こう!』です!



はじめまして、フリーランスイラストレーターの行間(@gyoukan000)と申します。ここでは絵を描くうえで最も大切な要素ともいえる「構図」についてのお話をします。

そもそも構図とはなんでしょう? よく聞く言葉ですが、いざ訊かれると答えづらい質問に思えます。

結論から述べると「構図」とは「さまざまな要素を効果的に配置すること」といえます。たとえばアオリ構図では、カメラ(あるいは視点)という要素を、迫力や圧迫感を出すために効果的に配置している、といえます。

ただ、この「さまざまな要素」というのが本当にさまざまで、線画、明暗、シルエットなど絵の要素であればだいたいすべて入ります。したがって、カメラ位置に関係するアオリやフカンも、画面分割である三分割構図や黄金比も等しく「構図」として扱われることがあり、「構図ってよく聞くけど結局なんなの?」という疑問が生まれるわけです。

それでは今回は、このような幅広くとっつきづらい「構図」について、ある程度簡単に解説していきたいと思います。


見落とされがちな構図の重要性

さて、先に述べた通り構図はかなり複雑なものということもあり、敬遠してしまってあまり真面目に勉強したことはないという方は多いのではないでしょうか? まずは構図をうまく使った際の効果を知ってみましょう。

構図の役割は主に二つあります。

構図の役割
① 見せたいものを見やすくする

② 伝えたい印象を伝わりやすくする

構図をほんの少し工夫するだけでまるで違うイメージになりました。表現したいものを表現する際に欠かせないもの、それが構図です。

一石二鳥な構図の勉強法-フィルムスタディー

構図の重要性、便利さがわかかったところで、どうやって構図を作れるようになるのかのお話に移りたいと思います。

構図を学ぶおすすめの方法は「フィルムスタディー」です。言葉通り「映画から学ぶ」ということで、映画のワンシーンを簡略化して模写する練習方法です。

映画には制作陣がストーリーを伝えるために作り上げた構図が詰め込まれていますから、この上ない勉強になります。そしてなにより、絵の勉強ついでに映画を観られる! 息抜きがてら気になっていた映画を観ながら、構図の知識を蓄えてみましょう。

映画は長すぎる、という場合は曲のMVやゲームトレーラー、既存のイラストなどを参考にするのもおすすめです。

下の例は映画のワンシーンの代わりに私の作品でフィルムスタディーをしてみたものです。参考資料を丸写しするのではなく、とくに重要な要素を見極め、取捨選択してデフォルメすることが大切です。慣れてきたら色ありで描くのもよいですが、最初のうちはグレースケールで描く練習をしてみましょう。

構図を生み出す要素たち

とはいえ、漫然とフィルムスタディーを繰り返しても力はつきません。

上手にデフォルメするためには、絵においてどのような要素がどのような役割を持ち、構図を形成しているのかについて知っておく必要があります。多くの要素が、うまく使えば先に述べた「見せたいものを見やすくする」「伝えたい印象を伝わりやすくする」の両方の効果を発揮できます。

1 . コントラスト
コントラストが強い場所ほど目を引きます。そこから少しずつ弱めていくことで視線を誘導できます。全体的なコントラストを下げれば落ち着いた感じになります。

2 . ライン
オブジェクトをある程度規則正しく配置することで流れが生み出され、視線を誘導できます。配置の仕方でさまざまな印象を与えることができます。

3 . シルエット
オブジェクトのシルエットが複雑だったり他と違ったりすれば、その他の要素より目を引きます。シルエットの形によって感情を伝えることも可能です。

色や光も構図にかかわる要素ですが、それらは構図を作る一要素というよりは構図と肩を並べるほど大きなカテゴリですのでここでは割愛させていただきます。

ひとまず構図について学びたいという場合は、今回紹介した要素を頭に入れつつフィルムスタディーを行い、基礎知識を定着させるところから始めてみるのがおすすめです。その中で構図づくりに使える新たな要素などに気づくことができるでしょう。

構図を意識してラフを描いてみよう

では今回の話の総括として、実際に構図を意識したラフを描いてみましょう。

まずは自分が描きたいもの、受け手に伝えたい、見せたいものが何かを自覚します。要はテーマ決めです。

◎ 見せたいもの(今回はエリアコンセプトがこれに当たる)
・世界は崩壊したが、巨大な木が街を包み、守っている
・日本がモチーフ

◎ 伝えたいこと、感情、テーマ
・希望の朝

これらをもとにラフを制作しましょう。

まず、見せたいものが広域なので横に長い比率のキャンバスを用意します。同時に、前向きなテーマであることも踏まえアオリ気味の構図にし、空が大きく映るようなカメラ位置にしました。

ここまで決まったら、アオリ気味になるよう意識しつつ前~中景を描きます。

今回はテーマを考えると開放感が欲しかったので、開けた場所を近景にすることにしました。また、日本要素も前景に入れようと思い、結果前景は「境内と鳥居」になりました。鳥居は上方向への広がりを補強するために画面からはみ出るほど大きく、また少しパースを大げさにつけました。

これまで描いたもので横方向と縦方向の広がりは表現できたので、奥行きを出すことにも挑戦してみましょう。このあたりから画面内に要素が増え、構図を強く意識し始めます。

奥行きを出す際によく使うのは前項の「コントラスト」「ライン」です。今回は街というテーマに合わせてビル群をパースに沿って配置し、視線を手前から奥に進むよう調整しました。また、この際ビル群は密集させずにおくことで開放感をキープしておきます。

最後に最も奥にある巨木を描きます。前項の「シルエット」の知識を活かしてビルよりも大きく複雑にしてみました。単純に目を引くだけでなく、壮大さも演出してくれます。

これで基本的な構図が完成しました。「希望の朝」らしさを出すために開放感と壮大さを演出しつつ、とくに奥行きを強調する構図でエリアの広さを演出しています。

同時に巨大な木や街、日本要素などコンセプトに外せないアイテムもしっかり入っており、それらの配置を工夫することで見せたいアイテムを一連の流れの中で見られるようにしています。

あとは「崩壊した世界」と「木が街を包んでいる」という要素がまだ描かれていません。前者についてはビル群のシルエットを削り、退廃感を演出します。後者についてはいたるところに木の根や枝を張り巡らせて表現するのですが、ここもある程度構図を意識して配置しましょう。

境内の、囲まれて少し閉鎖的になっている印象を壊すために、キャラ付近から境内の外へ延びる根を描きました。それ以外はフレーバー程度に入れていきます。

前景が遠景に比べてさみしいので、構図を補強する形で灯篭などの小物を配置することにしました。このようにある程度構図が完成したら、そのあと追加する要素は「構図の邪魔をしない」、できれば「構図を補強する」という意識をもって描いてあげましょう

このように構図を意識してラフを作り、ある程度煮詰まったら清書に移りましょう。色や光に関する知識も加えて仕上げたものがこちらです。

まとめ

ここで最初の話に立ち返ってみましょう。「構図」とは「さまざまな要素を効果的に配置すること」とお話しました。抽象的過ぎてわかりにくかったという方も今ならわかるのではないでしょうか。

コントラスト、ライン、シルエット、それらをうまく配置して構図を作り、見せたいものをよりよく見せる、伝えたい印象をより強く伝えるというのが構図の真髄です。

また、小難しい印象の構図ですが、一方で経験値がものをいう線画や塗りに比べ、知識さえあればすぐに活かせるというメリットがあります。

基礎知識、練習法、実践での考え方については本日知ることができたと思います。この知識をもとに理解を深めつつ、ぜひみなさんも構図を使いこなしてより洗練された一枚を描いてみましょう!


プロフィール
行間

京都芸術大学通信教育課程イラストレーションコース講師
フリーランスイラストレーター
ソーシャルゲーム関係を中心に活動中
https://twitter.com/gyoukan000/media



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