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子育て×イラストレーター=大変?作家になって見えてきた、家族との時間の過ごし方|前田ミック

KUAイラストアドベントカレンダー、12月17日はイラストレーターの前田ミック先生から『子育て×イラストレーター=大変?作家になって見えてきた、家族との時間の過ごし方』です!


こんにちは。京都芸術大学17日目を担当する、前田ミックと申します。書籍装画を中心に広告や音楽用イラスト、アニメ背景の制作など、イラストレーターとして幅広く活動をしています。

 今でこそイラストレーターとして色々な経験をさせていただいていますが、社会人になるまで絵を描く事は趣味程度で、イラストレーターになるための専門的な絵の勉強はしていませんでした。

 前田家には小学1年生の娘がいます。実は、私がイラストレーターになった経緯にこの娘の存在が大きく関係しています。

 今日は「子育て×イラストレーター」をテーマに、私のこれまでの記録を娘の成長と共に少しだけご紹介できたらと思います。

時間の余裕から思い出した夢(妊娠中)~自己分析~

 イラストレーターとして活動する前は、広告制作のプロダクションでディレクション業務を行っていました。しかし体力的にタフさが求められる仕事でもあり、妊娠を機に退職。自分のために使える時間が増え、その時間を何に使おうかと考えた時に真っ先に思い浮かんだのは「絵を描く」ことでした。

 仕事の忙しさで忘れていましたが、子どもの頃は将来の夢を「漫画家」や「絵に関係する仕事」と言う程、幼い頃から絵を描く事が好きだったんです。(妊娠を機に退職してできた)時間(=心)の余裕が、自分の内面を見つめ直す機会を与え、心の奥に沈んでいたかつての夢を思い出させてくれました。

ワンオペ中のオアシスは絵の世界でした(新生児~入園前)~絵の勉強方法~

 家では小さな娘と2人きり。睡眠不足、漠然とした不安感、まだ戻らない体調、社会から断絶されたような孤独感……。疲弊していた心を癒してくれたのが「絵」でした。

 1日のうち数回、娘がうつらうつらと夢を見るたった数十分が、私が絵と向き合う時間です。何をするにしても中断せずに最後までやり遂げることが難しいこの期間。「自分のために1つの作品を完成させる」ということが、この時の自分に大きな感動と達成感を与えてくれました。

 この時期は、1日24時間のうちどのタイミングでどれくらい制作時間を確保できるか分かりません。限られた時間の中で、効率良く自分の描きたいモノを描く方法を模索する日々でした。その結果として、私が制作中意識するようにしたことをご紹介します。

小さなゴールをたくさんつくる

 子育て中は、予期しないタイミングで自分のしている作業を中断しなくてはならない時が頻繁に訪れます。せめて絵の制作中はそのようなことが少なくなるよう、1枚作品を完成するまでの作業工程を細かく区切ることを意識しました。

 例え1日に取れる制作時間が短くても、ひとつひとつの工程を終えることで小さな達成感や満足感が得られ、作品の完成までストレス少なく作業を進めることができました。

どれくらいの時間で、どの程度描けるか把握する

 時間を基準にして自分の技量を把握するクセを作ることで、実際にイラストレーターとしての業務スケジュール管理が容易になりました。

背景を描く

 背景は、その作品の世界観を説明する重要な要素です。今まで描いてこなかったモノや苦手なモノをあえて積極的に配置しました。

 それらを描くために参考資料を見たり勉強したりすることで、たった1枚作品を仕上げただけなのにも関わらず、描ける幅がぐんと広がっていることに気付きます。

 上記3点は、子育て中に限らず短時間で効率良く技術を上げたい時におすすめの方法です。

イラストレーターとして収入を得ることについて考える(年少~年中)~家計と将来設計~

 当初は、家族の将来のため娘の入園時期での再就職を考えていましたが、この頃になるとポツポツではあるものの商業案件を受注するようになり、イラスト制作を「収入」という具体的な数値で認識できるようになりました。

 幼稚園や保育園に入園すると、ある程度まとまった作業時間が取れるようになります。1日の作業時間が決まり、受注可能な案件数も見えてくるように。

 子どもの成長と共に出費は増え、ある程度の貯蓄も必要になってきます。自分がイラストレーターとして働き続ける場合、何年後にどの程度の収入が必要なのか?それを目標にして将来設計を組み立てていきました。

おかあちゃんは絵描きさんなの?(年長~現在)~家族の理解と協力~

 リビングの一角に作業スペースを設けて制作をしているため、子どもは私が絵を描いている姿を常に見ています。

キッチンとリビングの間にある作業スペースのイメージ

 娘は、最初こそ母が絵を描く姿を遊びの中の1つだと思っていたようですが、徐々に「母が絵を描く」=お仕事という認識に変わり、それと同時にイラストレーターという仕事を理解し始めているようでした。今では、リビングで娘と話をしながら仕事をするだけではなく、時折娘が絵の描き方について私に聞いてくることも。2人で展示会に足を運んだり、書店で私が装画を担当した書籍を見つけると、喜びを分かち合えるようにもなりました。夫もイラストレーターという職業について、娘の理解を促すように積極的に話に出してくれます。更に両実家はもちろんイラストレーターの友人たちの理解や協力もあり、良い意味で仕事と家の垣根が無くなり、日々の生活に馴染んできたように感じます。

 私は在宅で、夫は会社勤めで出社。夫婦で勤務形態が異なるために、日々の生活における家事・育児分担のバランスが偏ることがあります。在宅で仕事をしている方が家事・育児の都合がつきやすいため、前田家の場合は基本的に私の方が多めに担当していますが、曜日や時間、内容によって夫と相談しながら公平に分担するように心掛けています。

 家族それぞれがお互いを理解しようと歩み寄る姿勢が、在宅での働きやすさに直結しているように感じます。分担については、家族の状況に応じて定期的にアップデートし、家事・育児、仕事の両立について家族全員で考えていきたいと思っています。

こんな一日過ごしてます~タイムスケジュール~

 ここで、私の1日をご紹介します。

 家事・育児と制作業務、時間の使い方は時期によって多少変化しますが、俯瞰して見ると子どもの生活サイクルの影響が強いことが分かります。

 基本的に、朝型で規則的な生活を送っていますね。
業務時間は1日5時間前後、4~7日で1点作品を仕上げていきます。

 基本的には子どもが幼稚園や小学校にいる時間を制作作業に充てています。幼稚園までは、子どもの帰宅後に仕事をすることはかなりハードルが高かったのですが、小学生にもなると娘の中で仕事に対しての理解が進み、多少継続して制作することができるようになりました。

 しかし、納期が重なると平日の昼間だけでは時間が足りなくなることも。その場合は休日や夜間を使って作業しています。

 限られた時間の中で効率よく案件を回すこと最優先に、時間を細かく区切って制作するように心がけています。また、場所や時間を問わずできるものは家事・育児の隙間時間に少しずつ消化するようにしています。

 例えば、企画書や書籍のゲラはタブレット等持ち運びの出来るデバイスを使い、家事の合間に目を通すようにしています。入浴中や就寝前はアイディアを練る時間に。

 子どもが小さい頃は、落ち着いてパソコンの前に座ることのできる時間はごくわずかです。立ちながら・動きながらでも仕事ができるようなスタイルを探す日々でした。タブレットを使用した制作も良いかもしれませんね。

子持ちイラストレーターあるある~注意と備え~

 今までの経験から、子育てをしながらイラストレーターをするにあたって、注意しておきたい・備えておきたいことをまとめてみました。イラストレーターに限らず、他の職業にも共通したものがあるかもしれません。

イラストレーターであることを園や学校で公表するときは気を付けて

園や学校のPTAなどから制作のお願いが来ることも……。イラストレーターという職業が周りに正確に認識されていない場合、依頼内容はイラストに限らず、レイアウトデザインや行事の動画など範囲外の分野にまで及ぶこともあります。

保育園と幼稚園、学校の特性を踏まえて制作スタイルを決める

保育園と幼稚園、学校によって生活サイクルが大きく変わってきます。将来を見据えてどれが自分の制作スタイルに合うか見定め、選択することをオススメします。

余裕のあるスケジュールを

園や学校行事、子どもの体調不良など、子育てでは予期しない事がたくさん。臨機応変に対応できるように、バッファを考慮したスケジュールを意識しましょう。子どもがいることを周りや仕事先に周知させることも大切です。

子育て×イラストレーター=大変?

 イラストレーターになったきっかけに子どもの存在が大きく関わっていること、イラストレーターをしながら子育てすることについて、私がこれまでの経験から感じたものを私なりの言葉でご紹介させていただきました。

 子どもの成長と共に環境が変化していく中、子どものことを優先しつつ日々の仕事をこなさねばならないので、スケジュール管理が慣れないうちはかなり大変に思うかもしれません。その時は全て完璧にやろうとせず、妥協点を見定め自分の納得できる形に消化することが大切です。

 家族や周りの協力を求めたり、制作スタイルをその時その時に応じて変えたりと、工夫次第で子育てとイラストレーターを両立させることは可能です。自分に合った方法をこれからも探していきたいと思います。

 私の様に子どもがイラストレーターとして働くきっかけを作ってくれたり、子どもがいることで新しい知見を得ることができたりと、プラスに働くことはたくさんあります。特に、子どもの持つ常識にとらわれない発想は、作品制作に大きなヒントを与えてくれます。子どもを通して見た世界は、身近なものでも形や大きさ、色さえも違って見えてきます。娘には新しい世界をたくさん見せてもらいました。

 そんな娘に対して少しでも恩返しできるように、今後は娘が周りに自慢したくなるような作品をつくっていきたいと思っています。また、日常風景を中心に描くイラストレーターとして、子どもの発想から得たヒントを織り交ぜながら、子どもがいるからこそ描けるリアルな生活感や説得力のある風景描写を追求し、他のイラストレーターとの差別化を図っていきたいです。

 周りからは「子育てしながらイラストレーターをするのは大変ですか?」とよく質問を受けますが、どうしてもその答えに「大変」という言葉が出てきてしまいます。それでも私は、この先にどんな未来が待っているのか楽しみで仕方ありません。

プロフィール
前田ミック

京都芸術大学通信教育課程イラストレーションコース講師
ホームページ:https://maeda-mic.tumblr.com/
pixiv:https://www.pixiv.net/users/12395539
Twitter:https://twitter.com/m_mic_0707


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