アカデミア人材が企業転職したいと思ったときに読むnote(2) 〜職務経歴書の作り方編〜

脱アカして大手JTCのR&Dで働くKTYDです。
↓自己紹介もかねてどうぞ。

そこから長らく放置してしまいましたが記憶があるうちに記録に残します。
最近、脱アカ機運が高まっているのをX(formerly Twitter)で感じます。
一方でアカデミア転職と民間転職を大きく勘違いしているのでは・・?みたいな事案も散見されていますので、
要所要所における脱アカ転職のコツを書いていきます。

今回は職務経歴書の作り方についてです。

民間企業に書類応募する際には、履歴書、職務経歴書の提出が必須ですが、オプションとして他の書類があってもよいので、研究紹介(読まれるかは微妙です。参考程度。)も送っても良いかもしれません。
純アカデミア人材は、職務経歴書と研究紹介が一緒くたになりそうですが、書くべき内容が明確に異なります

職務経歴書に求められるものは、キャリアの中で成し遂げたこと、それを御社でも再現可能であるというエビデンスです。
テンプレートはなんでもよいのでdodaのものをお借りしましょう。

書く内容はテンプレートに従って、
◯職務要約
◯活かせる経験
◯職務経歴
◯スキル
◯資格
◯自己PR
私は更に
◯研究業績と採択予算リスト
を書きました。
長くとも4pぐらいに抑えましょう。

再現性

中途採用において、私は特に再現性に着目し書類や面接においても重視しました。あなたが有能であることをアピールするためには「この事は経験したことがあるので御社でもやれる」ということを言う必要があります。

例えば、あなたが特許を持っていたとします。
その場合において、その特許そのものは転職先では使いませんので保有の有無は関係ありません。しかし特許を書いたことがあるという経験から、採用先でも特許を書くことができる、ポジティブな再現性が期待されます。

つまり自社でも再現してもらいたいことをすでに経験したことがある人材を探すのが採用活動であり、職務経歴書は経験したことの紹介と再現性への期待を高めるためのツールです。

一方で忌避すべき再現性もあります。
あなたが年に一回、転職を繰り返しているとしたら、次の転職先でも一年で辞めてしまいそう、というネガティブな再現性が危惧されます。
私はこれを正の再現性と負の再現性として区別しました。職務経歴書では正の再現性の期待値を高める、ということに注力します。
(職務経歴書では正の再現性のみピックアップできますが、面接のときに負の再現性を言ってしまうのです。これについては後日書きます。)

民間が期待する正の再現性

民間が期待する再現してもらいたいことは具体的に以下のようなことです。()内はそれを示すための一例です。

  • 専門性(一貫した研究テーマの軸や論文、学会等の対外発表)

  • 技術力、即戦力性(持っているスキルとその使用経験、使えるツール、プログラミング言語等)

  • 製品開発歴(大学発ベンチャーや共同研究等)

  • 民間の仕事に対する理解(共同研究経験)

  • トラブル対応力(なんらかの課題を解決した経験)

  • マネジメント経験、教育経験(学生指導や学会運営、セミナー開催等)

  • 文章力、計画性(論文執筆、学会、予算獲得歴)

  • 英語力(TOEICの点数、国際学会登壇や論文執筆、留学経験等)

などです。これらが伝わるように職務要約、職務経歴、スキルセットに落とし込みます。

一方で、再現したところで会社に貢献しにくい情報は強調しなくて良いです。具体的には、

  • 研究のすごいところ、面白いところ

  • たくさんの業績の詳細

です。こう言った項目は書きたくなりますし科研費なら認められるところですが、それは企業での再現性とは(あまり)関係ない話です。
職務経歴書内で業績は件数や引用書式でサラッとでいいですし、研究は要点を絞って貢献できそうなところだけ書きました。
細かい内容をかきたければ、研究紹介に書けば良いです。

アカデミア人材にありがちな負の再現性、たとえば短期で転職を繰り返すことについては、あまり気にしなくて大丈夫かと思います。
例えば短期間でポスドクを転々としている、などについてはアカデミアの任期制というシステムによるもの(だと言い張れば)なので企業での再現性はありません。念のため、転職理由として一言「任期のため異動」とか書いても問題ないと思います。
つまり、企業で問題にならない、再現しえない事項であれば問題視されない、ということです。
また、業績の不足はアカデミアほど問題になりません。論文書くのが仕事ではないので。国際学会等の英語経験とかのほうが効きそうです。

一方で経験がないことについてはもちろん書く必要がない、というか、書いてはいけません。転職活動はマッチングですから。嘘ついても辛いだけです。お互いに。

アカデミア人材が職務経歴書を書くときに見逃しがちなこと

企業が評価するけど、見逃しがちな項目があります。
それが研究を通して培ったことです。
おいさっきと言ってること違うじゃないか、研究アピんなと言ってただろ!というかもしれませんが、研究こそがアカデミア人材の名刺です。
研究をアピールする方法として、そのものの面白さをいってもあまり評価しようがありません。企業でその研究をするわけではありませんし、メリットにはなりませんから。研究自体が企業にマッチする場合はその限りではありませんが、そのままドンピシャにマッチングすることは少ないと思います。

自分の話になりますが、僕の研究内容はレーザーをツールとして、材料や手法を変えて、金属、化学、生物を加工するようなものでした。また、機械学習などのアプローチも取り入れた解析を使い研究立案していました。
研究立案をする際には異分野融合を意識し研究立案したそれぞれで論文や学会、予算獲得などの成果を残した、という話で筋を立てました。要は、一つの専門性と多角的な視点を併せ持った人材であり、貪欲に知識を吸収し実装できる人材であるということを職務経歴書から読み取れるようにしたのです。修士から博士に進学する際に、学問領域を有機化学からレーザー物理に移ったという経緯もあるので説得力はあるんじゃないかと思います。
その結果、光学メーカーR&Dや医生学応用ベンチャーからの引き合いがありました。

つまり研究結果そのものではなく、先行研究調査→自分の研究に落とし込み→仮説と検証を行う研究プロセスの各段階をさらに分解すると、民間で再現してほしい事項が見えてくるはずです。
専門性や、使用できるツール、取り扱った装置、解析手法、マネジメント経験などをふんだんにアピールしましょう。使えるプログラミング言語などの直接的なスキルはもちろんです。
学際的な研究を幅広く取り扱った経験等の研究プロセスも入れていきましょう。新しい分野にチャレンジした経験は民間でも当然求められます。それを形にした結果(論文、学会、予算等)があればなお素晴らしいです。
これは、キャリアが固定化しがちな民間研究者より、多角的な専門性を併せ持ち常に新規性を求め続けたアカデミア人材こそ強いのではないかと思います。
職務経歴書に書けるスキルセットは、アカデミア人材が本職を続ける上で自ずと成長していっていると思います。

あとは持ち前の文章力できっちりまとめるだけです。
改めてになりますが、採用した人材が自社においても活躍してくれることをいかに伝えるかが職務経歴書です。
以前成功したことをどんどん書きましょう。それを御社で再現できるんだという強い意志を載せましょう!

ご武運を!

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