ペアリングなんてクソくらえ

今回はなかなか過激な表題から始めさせていただいた。
と、言ってもこれは僕の言葉ではない。
ワイン業界最高峰のMW(マスター・オブ・ワイン)と呼ばれる資格を有する
ある御仁の談話として紹介された記事のタイトルである。

元ネタはこちら。それほど難しくないし短いので是非。
'TIM HANNI MW: FOOD AND WINE PAIRING IS BULLSH*T'
https://www.thedrinksbusiness.com/2019/02/tim-hanni-mw-food-and-wine-pairing-is-bullsht/?fbclid=IwAR2ufYiKKBqEgEfCXOKgLF8P1B4RdQTnlKN-eQESFQANC2r13AQkGlY56ic

読めばわかることだが彼の名誉のために最初に言っておくと
彼は直接「ペアリングなんてクソくらえ」という強い表現は用いてない。
記事を書いた人がセンセーショナルな表題で耳目を集めたかったのだろう。

マジメに考察するのもバカバカしいと思ってたが良い塩梅に炎上してるので
ネタ切れ気味を理由にちょっと意見を述べさせてもらおうと思う。

曰く
A perfect wine pairing doesn’t exist. We’re doing a lot of damage the way we’re matching wine and categorising it. We need to start a campaign to stop wine and food pairing as we’ve created a lot of bullsh*t around the idea.
冒頭部は完全に同意。完璧なペアリングなど存在しない。
かつてマリアージュと呼ばれた約束の組み合わせすら完璧ではない。
だからこそソムリエは知恵を絞ってそれぞれのベストを探し求めている。
もうちょっと他者に対する敬意が欲しい。

曰く
A lot of people enjoy being arrogant about wine and consider entry-level wines as being unsophisticated. We need to educate the trade to better serve the personal interests of wine lovers.
ふむ。まあ確かに教育というか周知は必要だろう。
これは実にMWらしい発言と言えると思う。表現は好みじゃないが。

曰く
We need to celebrate the diversity of consumers, not make them feel stupid. You can serve Sauvignon Blanc with steak – why not?
大胆な組み合わせを提示することでインパクトを残そうとしたのだろうが
多くのソムリエがソースを用いない、塩と胡椒で頂くステーキに
白ワインを提案していることを知らないのだろうか？残念である。

曰く
Thinking wine and food pairing will work in China will cause one of the biggest disasters in the wine industry we’ve ever seen.
これを傲慢と呼ばず何と呼ぶのか。

曰く
We need to get over the notion that food and wine grew up together. Food and wine matching is pseudo science full of metaphors and misunderstandings.
欺瞞に満ちている。

記事の後半はタイトルに反してペアリングには触れられてないので省くが
様々なペアリングを考案・提供してきたソムリエの立場から読むと
不勉強(きっと学問の成績は優秀なんだろう)かつ残念そして致命的なのは
多くのソムリエにMWってこんなもんなの？と思わせてしまったことだ。

今この瞬間もMWを目指して勉強に励んでいるソムリエを多く知る身として
今回の発信は残念に思う。たとえ言葉足らずであったとしても、である。

これまでに出会ってきたMWたちは素晴らしい人格者でその深い知識と
ワインや生産者に対する愛の深さは目を見張るものがあった。
結局は人それぞれということになるのだろうか。なんだか遣る瀬無い話だ。

ただひとつ自分に言えることは世界中のソムリエがこれまで以上に考え、
ベストを尽くすことでいつか彼がこの考えを改めてくれることを祈りたい。
新たなモチベーションを与えてくれてありがとうTim Hannni MW。