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10Xのデータアナリストになって5ヶ月が経過した。その中で色々悩んだこと

はじめに

10Xアドベントカレンダー4日目

はじめまして、村中(@ktrru)です。今は10Xでアナリストをやっています。

この記事は10Xアドベントカレンダー4日目の記事です!
今日は自分が10Xでのアナリストの役割について色々悩んだことについてポエムを書きます。
昨日は@tenjinさんのエモい記事を読んで昔を思い出していました。あ〜エモい。

ちなみに、私の好きなスーパーはライフで、おすすめの商品はライフのプライベートブランドのBIO-RALより「有機ルイボスティー(ノンカフェイン)」です。

有機ルイボスティー(ノンカフェイン)

自分の家は基本は麦茶を作るのですが、3~4回に一回ルイボスティーを作ることにしていて、「あ、今日はルイボスティーだ」ってちょっとした幸せを感じることができます。

育休を明けたらアナリストに転生していた件について

こういった記事を書くのは初めてなので、まず自分の自己紹介をします。

自分はアナリストバックグラウンドなのですが、思い返すと10Xに関わらせていただいた期間は副業含めて通算1年半になります。

  • 2020.11 ~ 2021.7 :(副業時代) WEBマーケティング、ダッシュボード作成

  • 2021.8 ~ 2021.12 :(正社員入社)プロダクトのデータパイプライン構築業務

  • 2021.1 ~ 2021.6 :育休

  • 2021.7 ~ 現在  :プロダクトの分析を中心とするアナリスト業務全般

上記のように、会社の成長に伴ってやることが色々変遷して、その都度自分のケーパビリティを上げることができたりしました。Growthに関わることだったら何でもやらせてもらえる、という環境が自分にとってとても居心地が良くてやりやすいなと思ってました。

しかし、10Xも最初は「一人で何でもやる!」という働き方から組織が大きくなっていくにつれて「チームを組成して役割と責任を定義していく!」というフェーズに少しずつ遷移していきました。

自分は育休前はデータパイプラインの仕事をしていたのですが、育休から明けたらアナリストにアサインが変わっていました。自分はデータ分析だけやるのは嫌だなと思って、復職してDay 1でマネージャーの@mattsunに相談しました。

「自分はデータ分析は価値を発揮するためのほんの一部のプロセスにすぎないと思ってます。なのでそれだけに閉じたくないです。もっとPurposeやExcecutionにも関与したし、分析以外の仕事もしたいです。」

今客観的に見ると、Day1でいきなりそんな生意気なことを言うやっかいな部下をもってしまった@mattsunさんには強く同情します。しかし、そんな私に彼は優しく、そして力強く諭してくれました。「Issueに向き合っていさえすれば、分析だけやって終わりということには、決してならないと思いますよ。」
この言葉は自分にとって、とてもとても大事な言葉になりました。

アナリストという職名に対する葛藤

自分は育休から復帰してからの5ヶ月間、プロダクトに関する分析や企画の推進をメインに担当してきました。幸いにも最強で優しいメンバーに恵まれ、手取り足取り教えていただきながらも、プロジェクトを推進したり、仕様書を書いたり、一部のプロダクトのコードを書いたりと、分析以外の色んなIssueにも挑戦させていただき、とても充実した日々を過ごすことができました。
エンジニアやデザイナーやPM、CSからなるプロダクトチームで、ここまで深く一緒に働いたことは初めてでしたが、開発のスピード感や、プロフェッショナルたちのプロダクトへの熱い思いを肌で感じながら、プラットフォームを創り上げるという共通目標にむかっていく感じは、とってもワクワクして楽しかったです。

しかし、いろんな仕事を経験させてもらった一方で、アナリストという職種の責任と役割については悩んでいました。結局、「我々アナリストは10Xという組織全体の中で何の役割を果たせば良いのか?」という問いです。

よく言われるデータアナリストのミッションは「データ分析に関する専門性を活かし、意思決定者に有用なインサイトを提供すること」などです。私がアナリスト1年生だったときは、「データドリブンだもんなー、やっぱ意思決定だよなー」とふむふむと頷いていたのですが、今は疑問しかありません。

まず、データ分析はアナリストだけのものではないので専門家ともいえない気がします。僕が10Xに入ったとき初めて抱いた感想は、「自分なんかより社長のyamottyさんの方が遥かにデータ分析できるから自分の存在価値ないじゃん」ってことです。同じグラフを見たとして、そこから得られるインサイトの深さは、事業理解やプロダクト理解、ユーザー理解の深さで決定されるので、日々データに触れている時間が長いアナリストよりも、事業に向き合っている人の方がデータ分析の解釈力が高かったりするのです。つまり極端な話、自分よりもBizDev(事業開発)やPMのメンバーのほうがデータ分析が得意だ、とも言えると思います。

それに、意思決定に貢献するって広すぎませんか?そもそも意思決定はデータ分析以外の要素で決まることがほとんどなのにデータ分析という手段を固定する理由は何ですか?データ分析を意思決定に繋げるって、論理的に飛躍してませんか?

結局アナリストは何なのか?ちょっとしたモデリングやデータ整備ができるだけのデータ抽出屋さんなのか?それでいいのか?こんな風に悩み抜いてきたわけなんですが、ようやく最近、自分の中でアナリストが果たすべき役割(というより自分が10Xのアナリストとして取りたいスタンス)をちょっとだけ言語化出来てきた気がするので、文章にまとめてみます。

10Xのアナリストの3つの前提

「早くアナリストの役割言えよ」と思われるかもしれませんが、まず先に10Xのアナリストをとりまく前提についてお話しします。

前提 1:機能組織としての側面

まず、私が所属するAnalytics & Insight部のミッションは「事業価値を最大化するために、意思決定を支えるインサイトを継続的に提供する」です。

Analytics & Insight部は「機能本部」に属しており、特定のパートナーにつくというより、横断的な武器を作り出して展開することを指向します。

Culture Deckより

例えば、一つの分析Issueに向き合うときも、汎用化を前提に捉えます。分析を専門に行うアナリストは数名と少なく、全てのパートナー企業には物理的に向き合えないので、一つの分析結果をなるべく抽象化した形で知見としてストックし、汎用的な資産を形成することを指向します。
ときに、パートナー固有性の高い分析Issueよりもより汎用的なIssueを優先することもあります。

合理的な働きかたのように思っていたのですが、自分の中でどうしても葛藤がありました。例えば、

  • 分析要求があるけど、ヒアリングだけでは全体像が捉えきれない。

  • 深く入り込もうと思ったIssueもリソース不足で結局最後まで伴奏しきれない。

  • 優先順位が下げてしまったIssueがあったけど本当にそれでいいのか自信がない

分析しても良いインサイトが出せなくて、事業の解像度が上がっていかないことに危機感を覚えたこともありました。

前提 2:事業の複雑性

なぜ事業の解像度が上がらなかったのかを考えてみたときに、そもそもの事業の複雑性に起因し、深く入り込まないと理解することはできないのではないかと考えました。
10Xはテイクレート方式がプライシングモデルの構成要素として採用されており、パートナー企業のネットスーパーのGMV成長に連動して10Xの売上も増えるビジネスモデルとなっているため、パートナー企業の成功が10Xとしての成功に直結します。
しかし、KGIはシンプルですが、事業構造は複雑で、「単一のレバーを上げればKPIが向上するようなシンプルなビジネスモデルではありません」
例えば、

  • パートナー数を増やしても、パートナーが成功しなければ10Xの事業も成功したとは言えない。(テイクレートレベニューが上がらない)

  • 配送圏を広げると配送効率が落ちて利益率が悪化するが、配送圏を狭めると注文数が落ちて売上が下がる。

  • 広告宣伝費を増やしても、ネットスーパーが使えないエリアや、店舗が出荷できるキャパシティに限界があるので、無駄打ちに終わる可能性がある。

  • 配送キャパシティを増やしたくても、ピッカー作業員、配送作業員、作業スペースどれかがボトルネックとなって増やせない。

  • 品揃えを増やすと欠品が増えるし、何の商品をどこまで増やすべきかの解は誰も持っていない。

「一体どうすればネットスーパーやネットドラッグストアを成功させることができるのか?」その解を特定し、全てのパートナー企業に提供するのが我々の目下のゴールです。

前提 3:データの複雑性

さらに、事業構造は複雑であるとと同時に、データも意思決定も複雑で、一筋縄ではいかないのです。
10Xが保有するデータが事業価値に転換されるまでの流れと、それまでの3つの課題を模式的に書いてみたポンチ図を以下に示します。

この図は、①〜⑧まで、データから意思決定を実行し事業価値を生むためのファネルみたいなっていて、①Productから②Dataは生成され、データがあってはじめて③Purpose(分析の目的)が設定できて … と読んで欲しいです。

まず、10Xの分析テーマはめっちゃ面白くて、図のPurpose見て欲しいのですが、これはアナリストからしたら宝の山で、めっちゃ面白いです(語彙)。
お客様に提供するECの分析のみならず、商圏分析、配送キャパシティ分析、それから品揃えやプライシングの分析、集客、CRMなど、カバレッジが異常に広いのです。データ活用の余地は無限にあり、事業はどんどん拡大してるので、これからも増え続けます。
しかし、現状はこれらの機会に対して、十分なデータ活用ができているとは言えない状況です。

こんな図を書きながら、10Xのデータ活用を阻むボトルネックは、ざっくりいうと3つの課題に分解できるなと思いました。

課題 1:正しく集計すること自体が難しい

まず、生データというものはとてつもなく認知負荷が高いです。さらに10Xは小売事業者に対してバーティカルに業務プロセスを網羅しているので、データの種類も多いです。

実際に10Xのデータを触ってみればわかることですが、データベースはシステムを正常に動作させるために設計されているので、生データは決して分析用途に適したものではありません。例えば単に売上を集計するだけのSQLに数百行書くことだってあります。もちろんログがないときや足りてないときもあります。

さらに、スーパーやドラッグストアの現場の理解も必要な場合があります。特に、ピックパックや配送といった実際のリアルな人や物の動きを分析するときに、現場で起こっていることを理解していないと、現場の数値感を外した集計をしてしまいがちです。

このように、たった一つの指標を集計するにも少なくない労力がかかっていて、ただ単にSQLを書く以上の知識と注意力とが必要なのです。

課題 2:分析基盤を作るのが難しい

課題1 で述べたように、日々事業やプロダクトに向き合っているBizDevやPMに、ローデータから指標を集計するという極めて高い認知負荷を乗り越えてもらうのは難しいため、直感的に扱えるようなデータウェアハウスやデータマートを作っていく必要があります。データが複雑だということは、その分析基盤を作る難易度はもっと高いです。

しかし、これをしないと10Xのデータ活用ははっきりいって終わります。前述のようにアナリストは数名しかいないので、全ての分析要求に応えることは到底むずかしく、BizDevやPMはもちろん、パートナーもSelf Serveでデータを解釈できるようなデータ分析基盤やダッシュボードの構築が不可欠です。

ちなみに10XではDataVaultというデータモデルを採用しており、アナリティクスエンジニアが大活躍しており、彼らプロフェッショナルと二人三脚で適正な分析ができる分析基盤を作っていく必要があります。

課題 3:意思決定に繋げるのが難しい

前述の事業構造が複雑であることに起因して、意思決定の構成要素も当然複雑になります。
意思決定者は、10XのボードなのかPMなのかBizDevなのか、パートナー企業の経営層なのか、ネットスーパー事業部なのか、店長なのか、スーパーの現場なのか、広範なステークスホルダーがいます。
彼らが動くためにはどんな数値や根拠が必要なのか?机の上で考えていてもなかなか良い答えの出る性質のものではなく、膝を突き合わせて議論して要求を適切に収集し、その要求をデータとして理解できる形に翻訳していく必要があります。

自分が10Xのアナリストとして取りたいスタンスは、
これらの3つの課題のうち、
「意思決定」に最も強いフォーカスを置き、事業構造と意思決定構造を深く理解し、そこから逆算して「正しい集計」と、「データ基盤」においてやるべきことを定義し、自ら手を動かしてExecutionしていく役割を担うべき
だと考えます。

自分はどうしたいのか

さて、これまで事業の難しさやデータの課題について長々と書いてきましたが、自分は前職リクルートなので「お前はどうしたいのか」を書きます。

自分はアナリストとして、まず最初は機能的な動き方よりも、「真正面から一つの事業に向き合う」動き方をしたいです。パートナー企業やBizDevメンバーと同じ目標を背負い、分析に対する説明責任は自分で果たしたいです。(そして実際に自分は12月から事業部のアサインになりました)

事業がここまで複雑である現状、データ分析を事業価値に転換するために必要な解像度は会社の中にいてデータに向き合ってるだけでは上がらない、そのインプットが必要だと強く思います。

また、我々がひたすら向き合ってきた複雑なデータは、人の意思決定を動かす強い武器になることがあります。なので自分達アナリストは、半分は事業に直接的に向き合い解像度を高め、半分は認知負荷の高いデータと向き合い、事業成長を直接支援する存在でありたいと思っています。

自分達はBizDevの方のようなトップグリップやハードなネゴシエーションなどの役割は得意ではないかもしれません。それでも、現場に出て、パートナー企業が求めているものを見つけ出し、信頼を築き、意思決定を促していくことはできるし、それをやるべきだと思います。
BizDevやパートナーと共通目標に向かっていくこと自体は同じなので、ここでのアナリストは簡単にいうと「データに強いBizDevのアソシエイトロール」とも言えると思います。

一つの事業で成功パターンを確立した後に、その成功パターンを機能として汎用化していく。初めから強い武器を作るような器用さは、自分にはないからこの順が良いと思います。それが自分にとって、機能組織として「汎用的な資産を生み出す機能組織として貢献する」ために最も近道だと思います。

最後に

最後に、色々悩みながらも、自分が10Xで働く一番大きなモチベーションが何かを考えていて、自分の成長実感なのか、ビジネスインパクトの高い成果を出すことなのか、10Xのデータ活用が最大化されていることなのか、どれも大事なんだけどイマイチしっくりこなかったのですが、ようやく答えが出たような気がします。

それは、最高の仲間たちと事業を成長させるという共通の目標に向かって課題に向き合い続けることであり、スキルとか市場価値とかリソースとか将来への不安とか、そんなこと吹っ飛ぶくらい、自分にとってワクワクすることでした。だから事業に向き合えている今が一番楽しいです。

冒頭の葛藤に戻ると、「そもそも意思決定はデータ分析以外の要素で決まることがほとんどなのにデータ分析という手段を固定する理由は何ですか?」この答えは、極端に言うと我々がデータ活用を推進しないと10Xでデータが正常に活用される未来は訪れないからであり、それは今あるデータが前述の通り現状極めて認知負荷が高く活用が難しい状態だからです。
事業に向き合うことでデータ活用の方法を定義し、データを誰もが使える形に解放していく、途方もなくめんどくさくも大切なことが我々アナリストの仕事だと捉えています。

今日はアナリストの話を中心にしましたが、10Xにはそれ以外にもたくさんの魅力的な仕事と機会が広がっています。この楽しくも難しい事業にチャレンジしてみたいと共感していただける方がいらっしゃれば、ぜひご一緒いただければと思います。

さて、明日のアドベントカレンダーは、10Xが誇るプロダクトの意思決定マシーンこと、@uraさんです。最近一緒に仕事をさせてもらうことが多いのですが、どんな機能要求を当ててみても、いつどんな形でプロダクトに反映すべきかの答えが返ってきて、日頃からプロダクトに真正面に向き合っているのだなと思って尊敬しかありません。
忘れてなければ、更新してくれるはずです!Check it out!

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