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MIT MBA留学で学んだこと(3)~入学後オリエンテーション~

前回は入学前のオリエンテーションを紹介しましたので、今回は入学後のオリエンテーションについてお話しします。SF MBAは6月頭から始まりますが、最初の1週間でオリエンテーションが行われました。プログラムの概要、ケースディスカッションの体験授業(どんな形で進んでいくのか、どんな予習をすればいいのかをショートケースで体験)、それに加えてビアゲームと言うオペレーションのシュミレーションゲームもありました。Excursionも含めて学びが大きかったのでこの辺りを紹介します。


ケースディスカッションの体験授業

学生は先進国、途上国、金融機関、環境保護団体、エネルギー会社、事業会社などのチームに分かれます。Climate Change(気候変動)についてそれぞれの立場の利害、そして公益とのバランスを見ながら互いの立場でどういう主張・交渉をしていくべきかを議論します。議論が終わったら、各団体の意思決定をEN-ROADSというオンラインのシュミレーションモデルに入力していきます。
エネルギーの供給方法、インフラ・技術への投資、人口・経済成長の予測など色々なレバーがあり、それぞれどう動かすと全体としてどの程度の温暖化効果になるのかがリアルタイムで算出されて興味深かったです。

SimulationのDashboard
左:自分のチーム 右:講義の様子

ビアゲーム

ビアゲームは工場、一次卸、二次卸、小売店の役割に分かれて、消費者の需要を読みながら、生産・保管コスト対比でどれだけ余剰在庫を持つべきかを考えるゲームになります。多く在庫を持ち過ぎると保管コストがかさみ、在庫が不足すると売上機会をロスする事になるので、最適な均衡点をゲームの中で探していくものになります。最初は同じペースで同数の需要が投下されてくるのですが、途中で需要が急増したり、逆にいきなり無風になったりするので、その時に在庫計画が崩れます。どのように既存のバックオーダーに対応しながら次の在庫計画を立てるかが戦略のカギとなりますが、このゲームの重要なルールとして「無言」があります。他のプレイヤーとはコミュニケーションを取ってはいけないので、阿吽の呼吸で進めるしかなく、ラウンドが進むごとにズレや余剰在庫あるいは売上ショートが大きくなり、自分の1つの意思決定が全体に大きな影響を及ぼしてしまう事を体感出来るゲームです。なお、このビアゲームはここ、MIT Sloan Schoolで生み出されたゲームのようです。

ビアゲームの様子
各チームの結果を並べての結果発表

Excursion

このオリエンテーション期間にExcursion(遠足のようなもの)もあります。キャンパスの前からバスに乗り1時間ほどの場所に移動、そこには広大な芝生と研修施設のような建物があり、ここで終日チームビルディングの活動を行いました。1日中様々なゲームが用意されているのですが、共通のテーマは「どのゲームも1人では完全な正解にたどり着くのが困難であること」、また「チームで力をうまく合わせると一人で考えるよりも良い結果が得られること」を体感させる事であったと思います。

例えば、チーム全員が半分に割られた筒のような物を持って輪形を作り、筒の上を滑らせながらビー玉を落とさずに制限時間以内に何個橋渡しが出来るかを競うゲームがありました。自分では、「角度をうまく調整して、渡す側と受け取る側でV字のような形を作って受け渡せば落ちずに安定するな」とか「一度に何個か乗せてもコントロール出来るから何個まで乗せられるか試そう」というアイデアは出たのですが、チームと話すと、「高さを安定させるために膝立ちの体制でやろう」、「受け渡す先の人がまだ受け渡し最中の時は前の受け渡しの場所でV字の体制を維持して状態を保とう」など、自分では思いつかなかった色々なアイデアが出ます。

ビー玉を受け渡しするゲーム

チームで輪になって中央に人形を置き、1人飛ばしで人形を触って全員がタッチするまでに何秒かかるかを競うゲームもありました。 最初は番号を決めて、自分の決まった番号を言いながら人形に触ろうと話していたのですが、何度かトライしてみると番号を言うのに噛んだり、指の動きと音声の2つに注意を向けている事が意外に難しい事がわかります。また、タッチし終わった人が輪に残っていると混乱を生む事もわかりました。最終的にはギリギリまで輪になって人形に指を近づける、番号は言わずに直前の番号の人の指の動きだけを見る、自分がタッチする番が来たらタッチしてすぐに身を引いて輪を離れる、を実践すると急激にタイムが縮まりました。ここでも全員が出したアイデアを合わせ、PDCAを回した事でより良い結果を得る事が出来たのです。

番号を言いながら人形にタッチするゲーム

その他のコンテンツは一般的なチームビルディングの内容と変わらず、なるべく多くの人と話して、色んな質問をしあう事でお互いのバックグラウンドを知ろうという趣旨のものが多かったです。

この日の学びは、全員の前でもWrap upとして話しましたが、下記の2つでした。
1. 誰にとっても自分だけで完全な正解にはたどり着くのは難しい
2. 他方で、チームと力を合わせるとより正解にたどり着ける可能性が高まる

オリエンテーションからの学び

これは勉強でも仕事でも同じ事が言えるかと思いました。例えば勉強では、簡単な内容の問題でも100点を確実に取るのはなかなか難しいと思います。何かしらの見落としがあったりするものだと思います。しかし、例えば一人がある程度解いた後に複数人の目でクロスレビュー出来るとしたら、100点を取れる確率は格段に上がります。難しい問題へ取り組む際に、自分一人では良いアイデアが出ない時でも、複数のメンバーで議論すると自分では思いつかなかった角度のアイデアが出て、検証してみるとうまくいくというケースは往々にしてあると思います。

仕事で例えるならば、膨大なExcelモデルの中で間違いを1つもしないというのはなかなか難しい事ですし、モデルを作った本人は客観的な視点に立てなかったりもします。チームメンバーがフレッシュな目でモデルをチェックすると間違いが発見されたり、そもそもモデルを組むために置いている前提が怪しく、より深い検証が必要ということに気づいたりします。難しい戦略や分析を構築する際に、一人で悶々と悩んで解決策が出なかった問題に対して、チームとの議論でそもそも捉えるべき問題が違った、違う角度から発想すれば解決出来たという事は少なくないです。その違う視点や発想を持つために重要なのは、Diversityのあるチームを作る事なのだと思いました。
このように、何気ないオリエンテーションの研修の中でもチームで何かに取り組むことの大切さを抽象的に教えるだけでなく、体感・体験させる事でより説得力のある学びになるということを学生に伝えたいのだと感じました。

次回からはいよいよ具体的な授業の内容に触れていこうと思います。

オリエンテーションに参加したクラス全員

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