県立金沢文庫で「春日神霊の旅 ー 杉本博司 常陸から大和へ」 を観て思ったこと
横浜の金沢文庫にある神奈川県立金沢文庫へ行ってきました。
大河ドラマの「鎌倉殿の13人」の主人公 北条義時の孫にあたる金沢北条氏の初代北条実時が造ったと言われる金沢文庫です。造ったのは健治元年(1275)頃と言われているので747年前!
何に興味があったから行ったのかというと、杉本博司さんの名前が展覧会名にあったからです。
杉本さんの肩書きは、写真家、現代美術作家、演出家。
海と空の境界線を撮った「海景」シリーズや、オペラ劇場を撮った「劇場」シリーズが有名です。
最近ではちょうど1年前ぐらいに、銀座1丁目のギャラリー小柳で「海景」シリーズが展示してあったのを観ました。
1枚の写真が数千万円で買えるそうです!
「海を最初に見た人間はどのように感じたか」
「古代人の見た風景を現代人が同じように見ることは可能か」
というコンセプト。
その杉本さんが企画したのが、
「春日神霊の旅 ー 杉本博司 常陸から大和へ」
自ら収集している作品や春日大社やゆかりの宝物などが展示されてます。
なぜ金沢文庫で春日大社?
縁もゆかりも大変あるみたいです。
春日大社が造営されたのが、神護景雲二年(768)。
金沢文庫が出来てから、春日大社からたくさんの仏教書とかを持ってきたようです。
実時さんは、文化人だったようです。
この展示会を観て思ったのが「鹿」がモチーフになっている作品があちこちに。
ポスターにも「鹿」が載っています。
作品の題名を見ると「鹿曼荼羅」と書かれています。
鹿がいっぱい円形に描かれているわけでも、ネパール密教やチベット密教ぽくないのに「曼荼羅」とは?
正式には「春日鹿曼荼羅」と言うそうです。
ドラゴンボールに出てくる筋斗雲のようなものの上に鹿が立っています。
木製や金属製の立体物もあります。
どうして鹿がこのようにモチーフになっているのか知りたくなったので、いろいろ調べてみました。
古墳時代には、円筒埴輪に「鹿」が描かれているほど、身近な存在のようでした。
弥生時代には、銅鐸などに「鹿」!
日本書紀には、「鹿」は土地の精霊と書かれています。
万葉集には、奈良の「鹿」が歌に詠まれています。
古事記には、「鹿」の神アメノカクが登場します。
もののけ姫には、「シシ神」として鹿の角をもつ死と再生を司る山の神として登場します。
この中でなるほど、と思ったのがアメノカクが出てくる古事記でした。
高天原にいる天照大神が、葦原中国(アシハラノナカツクニ)を治めるように、子の武甕槌命(タケミカヅチノミコト)に使者を送ったときに役目を受けたのが、鹿の神アメノカクでした。
その後、武甕槌命は茨城県の鹿島神宮に祀られました。
その武甕槌命は次に春日大社に遷ることになり、その時に乗って行ったのが鹿でした。
それ以来、神鹿(シンロク)と呼ばれるようになり尊ばれるようになりましたとさ。
話は少しそれますが、鹿島神宮がいつ創建されたのか。
「春日大社が造営されたときに鹿島神宮から…」とあったので頭に「?」が浮かびました。
「鹿島神宮ってそんなに古くからあったの?」
「奈良より歴史があるの?」
ってなりません?
そうしたら創建されたのは、なんと神武天皇元年!(西暦はわかりません)
なんせ神話の世界になっちゃいます。
恐るべし!
ここで急に名和晃平さんを思い出しました。
今は、京都芸術大学大学院の教授ですね。
彫刻家です。
東京銀座にあるGINZA6の吹き抜けに「鹿」の立体物を展示しています。
「Metamorphosis Garden(変容の庭)」という題名です。
大きな鹿を中心に筋斗雲のようなものがたくさん周りに浮かんでいます。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/23883
その他にもピクセルで出来た「鹿」やNFTの「鹿」まで数多くの作品があります。
名和さんは、京都を拠点に活動をされています。
やはり「神鹿」と言うものを意識されているように思います。
戻って、杉本さんは今回のパンフレットの中で次のように寄せています。
心の中を満たしにくる何者かが、日本の古くからの文化だったと言います。
日本に生まれ日本で育ったからこそ理解できる文化というものがあると思います。
それを北条実時公も現代に伝えてきたし、杉本博司さんも名和晃平さんも未来へ受け継いで行こうとしています。
改めてこの展示会を観たことによって期するものがありました。
鹿の角は一年かけて成長して秋にはポロリと取れてします。
日本では、2,300年前からの稲作文化では鹿は神様の使いでした。
と言う話でした。
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