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まずは「興味人口」の拡大を目指そう

総務省は、都市部からの段階的な移住・交流を支援するために、ライフステージに応じた多様な交流の入り口を用意し、移住希望者が移住に向けた階段を一歩一歩登ることができるような施策の充実を提言しています。この概念では、地域や地域住民との多様な関わりを持つ「関係人口」を地域づくりに貢献する存在として認識し、必ずしも「移住」の形でなくても、国民一人一人が積極的に関心を持ち、想いを寄せる「ふるさと」に対する感情や貢献を積極的に受け止める新たな仕組みの検討が必要です。
総務省が提示する地域への関わり合いへの想いを指標にした概念が下記の図です。

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https://www.soumu.go.jp/kankeijinkou/about/index.html

総務省の資料によると、「関係人口」は文字通り「関係性の強さ」を意味し、観光や物販など一度でもその地域に触れたことがある「交流人口」とは異なります。関わりが強い関係人口には、観光リピーターやビジネスで関わりのある人、地域の出身者や親類縁者などが含まれます。これらの人々の関わり合いを通じて、交流人口を拡大し、さらに関係人口を増やすことが求められています。

人口の減少は一般に、地域内の消費活動の縮小につながり、やがて生産活動の停滞にもつながっていく。特に地方部は、元の人口規模が小さいため、都市部と比較して人口減少の影響が大きくなる。地域経済を活性化するためには、人口を回復・増加させることが必要であるが、それには一定の期間が必要となるため、地域外からの旅行者や短期滞在者による「交流人口」を増やすことが注目されている。地域の交流人口が増加すれば、宿泊や食事、土産品の購入等が行われ、地域経済に貢献することが期待される。

平成27年情報通信白書

最近、関係人口が特に若い人たちに広まっている理由として、地方には「関わりしろ」があることをあげています。「関わりしろ」とは、自分たちが関わることで、少しでも地域社会に貢献できたり、何かを変えることができる部分があるということです。地域の課題や様々なフィールドをオープンに提供することで、活躍の場を提供することが必要です。

地方での企業誘致は、人材獲得やロジスティクス、税制面での優位性を背景に、大手企業に選ばれるための競争が激化しています。また昨今は、地方も人材不足が顕著になっています。企業誘致により、地元企業の労働者が誘致企業に移籍するなど、人材パイの奪い合いとなり、結果として地域の人材の流動性を高める結果になってしまっている地域もあります。これは自治体が意図しない結果を生んでいるのではないでしょうか。

そこで新たに生まれた発想が「人誘致」です。これは全国にコネクションがあり、地方でも仕事を持ち込むことができる人材を重視するという、形を変えた企業誘致です。
地方創生の名のもとに、全国の自治体ではこの形を変えた企業誘致が加熱しています。そのために広大な敷地に立派なサテライトオフィスを建設するなど「仁義なき消耗戦」につながっているのではないでしょうか。
体力のない自治体は資金力のある自治体の影に埋もれてしまっている感も否めません。また、地方創生の成功事例をシェアしようと実績のある著名なコンサルタントが各地で引っ張りだこに。これも自身の人脈をフルに活用して積極的に契約した自治体に関わらせているような気がしますが、関わる地域が増えるとこれまでの地域との関係性も希薄になり、砂漠に水を撒く結果にならないか注意深く見ているところです。

私がいま4年弱、地方創生に携わった感じでは、交流人口も結構ハードルがあるという気がしています。とにかく一度訪れてくれという誘いも自身に置き換えれば、全く知らない地域だとまあまあハードル高いなあと。関係性の強い人脈からの誘いであれば訪れてみようか・・という気持ちになります。

そこで私はよく「興味人口」という話をしています。交流人口拡大をもって関係人口につなげるのであれば、まずは交流人口を拡大させるための施策として興味人口を拡大させる必要があると。この興味人口は「特定の縁をきっかけに地域の興味深い人々や仲間を尋ねる」というものです。

興味

人吉球磨地域では、多くの若者が地域の多様な人材と関わりたいと考えています。彼らは揃って観光に来たのではない、観光は一度体験すればよく、地域の多様な人材と関わりたいんだと口を揃えて言います。自分は都会育ちでアイデンティティがないと言う若者もいますが、地方で新しいアイデンティティを発見し、自分らしさで地域に貢献することを目指してもらいたいと期待します。

また、ワーケーション事業が盛んに行われていますが、ただのバケーションに特化した施策は持続しないと考えられます。しっかりとしたインフラや働く環境を整え、その上で観光やアクティビティを楽しむことが重要です。


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