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撮影、スキンヘッドの男

10月から放送予定の「劇団もの(ドラマ)」の撮影日。脚本と監督をするのは11年ぶり。朝7時から夜の23時まで16時間の撮影で、前後編合計50分ぐらいを撮りきった。基本的に自分はお芝居の演出をつけてあとは見ているだけなので疲れる要素はそんなにないのだけど、お昼過ぎには既にクタクタになった。

この10年で「撮る人の気持ち」や「演じる人の気持ち」に寄り添った脚本を書けるようになったと思うけど、それでも実際に撮ってみると、ちょっと動いただけで「この台詞もほしい」「こういう風な台詞に変更したい」と自ら変更点がバンバン出てきて、そりゃあ台本通りにはならんわな、と改めて思った。普段、ドラマで「監督、なんでこの台詞変えた?」と思っていたことも、スッと腑に落ちた。変えないと空間や時間が埋まらないんである。

今回のドラマはまだ発表になっていないけれど、僕と同じような「脚本も演出もやる劇団系の作家」が五人集まって、同じキャストでそれぞれ前後編(二話分)の話を撮る企画だ。他の作家さんがどんな話を撮っているのかはまったく分からない。それが楽しみ。まだオンエアの順番も決まっていない。

今回は初めて「とくお組」劇団員の鈴木理学さんをキャスティングした。今まで偶然ドラマで一緒になることはあったけど、正式に自分の希望でオファーしたのは初めてだったかと思う。今回はあのハゲ頭が必要で、他の登場人物に「あのスキンヘッドの男」と言われる台詞もあった。満を持しての身内びいきなキャラクターである。

ところが撮影の二週間前、「すみません……」というコメントと共に、帯状疱疹でハゲ頭がグズグズに液状化した写真が送られてきた。本人の苦しみはさておき、これは「スキンヘッドの」と言われて笑える状況でもなく、唯一の武器をむしりとられた役者の写真を前に、抜本的な見直しが必要になった。まずは包帯で頭を覆い隠す必要があったし、「スキンヘッドの」を「包帯グルグル巻きの」に変更したり、周りのリアクションなども変更した。途中でやっぱり鈴木さんは無しで……と何度も思いかけた。

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