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涙を流したファーストデート

ファーストデートといえば、男女のこれからが始まるか始まらないかが決まる重要なデート。とにかく、ここでなかったら次はない。初めの印象が大事。女性としても一番かわいい自分が見せられるよう気合をいれて臨むデート。

私のファーストデートの思い出・・・去年結婚した夫とのファーストデートを思い出してみます。一言でいうと、うん。最悪でした。

夫と出会った当時の私は、いわゆる婚活中でした。結婚はしたいけど、自分が納得できない相手とは絶対結婚したくない。・・・けどそんな時間もないから、なりふり構わず血眼になって探す!!常に複数やりとりしている相手がいる、THE婚活女子。

「最初はいいなと思ったのに・・・ないな。次!!!」
「えぇ、いけると思ってたのにぃ、、蒸発した、次!!」
「はぁ、いい男いない。でもそんなこと言っていられない・・・」

婚活女子って、出会いを重ねて段々強くなっていくんです。

始まった恋の寿命の短さを知って、色んな涙を飲み込んでいく。愛をもらった嬉しい涙、輝く未来を失った悲しい涙、会いたいのに会えないつらい涙、想いが届かなかった空しい涙。その涙たちに浸っている時間などないから、
溢れないよう何かに蓋をして、次へと前をむく。

「・・・よし!!新規開拓いくか」と繰り出した先の街コンに夫はいました。

街コンでの夫は、別に会話が盛り上がったわけでもなく、むしろ隣の人の方がよくしゃべっててあんまりしゃべってなかった人。イベントの次の日にLINEが来ても、顔も思い出せないくらい印象がありませんでした。

そしてその街コンでは自分のプロフィールカードに異性みんな一言ずつ書いてくれる形式だったのですが、みんな「よろしく!!」とか「今度ポケモン勝負しよう笑」とか無難なことから個性的なPRまで色々書いてくれる中、肝心な夫からのメッセージは、字が汚すぎて解読できませんでした。日本語なので大抵読める一部の字から予測できるものですが、まったくわかりませんでした。

そんな印象もない、謎のメッセージをくれた方から、まさかのデートのお誘い。

「顔、あんま覚えてないからわからないかもです。」
「大丈夫!前と同じ服きていくよ!」

来てた服なんてなおさら覚えてないのに・・・。超絶乗り気がしない・・・。大丈夫な要素まるでない。

「何食べたい?」
「えっと、じゃお寿司か焼肉」(引かれると思って)
「いいよ!店探す!」(まじか)

「ここ、有名らしい!」
「え、高級店!!いいんですか?!」
「よし、ここいってみよう!」

LINEで彼が提示してきたのは隠れ家的な高級店で板前さんがカウンターで握ってくれるタイプの回らないお寿司屋さん。回らないお寿司屋さん。もうその響きにわくわく!!おいしいお寿司大好き!!すっかり食でつられた私はデートを快諾してしまったのでした。

当日、スマホのナビを見ながら右往左往する夫。

不安しか感じない。。

店の場所を知ってるわけではないけど、昨日ネットに書いてあった住所的にあちらの方かなと思いながら反対方向へいく夫についていく私。案の定もといた場所に一緒にもどってくる私。気合いいれて履いてきたヒールのダメージが蓄積してきたので、必死になっている夫のプライドを傷つけないようにとは思ってましたが、「なんか、もっとあっちのほうじゃない?」とつい、口を出してしまいました。

「え、そうかな?ちょっとそこのコンビニの店員に聞いてみるわ」と、やはり口を出されたことに多少の不快感を感じたのか、一人コンビニに入っていく夫。取り残された私だけに気まずい空気が流れる。どうしたもんかと悩む間もなく、「わかんないって言われた・・・」と、しょんぼりして出てきた夫。

そんな夫の顔を見ていたらなんかかわいそうになってきて、「ちょっとナビ見てもいい?」と夫のスマホをもって、「あー、たぶん、こっちかな?」と笑顔でそのまま店までナビをする私。そもそも私の仕事は営業である。この日本というフィールドでしかもナビがあるというベーリーイージーな状況において、目的地に着けないなんてことはありえない。しかも徒歩で。地図から道順をリアルにイメージして夫を連れて行く。

一方その時私の心の婚活ナビゲーターは(あぁ、もうなんで私がやってんだ-500点ーー!!)と叫んでいました。

無事店につき、戸を開ける夫についていくとなんと満席。あれ、予約、、してない・・・?! 

「ごめん、満席だった・・・」またまたしょんぼりして出てきた夫。

そのとき私の心の婚活ナビゲーターは(そりゃ満席に決まっとるがな!店すら予約できない男はナシィィィ!!)とバッサリ。

「クチコミでも評判のお店で席数も少ないみたいだし、しょうがないね!!別なお店いこ!もうお寿司じゃなくても、近くのすぐ入れそうなとこでいいし!」すぐそばの大通りにはカフェやイタリアンの店があったので、早くこの昼の暑い日差しを避けて座りたい私。

そんなナイスフォローの提案を完全放棄で「いや、お寿司屋さんいこう!!」とさらに小道を進んでいく夫。夫はこちらに引っ越してきて間もない時で、予定のお店の場所すら怪しかったのに、いったいどこへ行く気なのか。もしかして、ムキにでもなってる?そんな不安をよそに幸いにも偶然小さい江戸前寿司屋をみつけられたので、そこに入ることに。

店の戸を開けると、客は誰もいませんでした。あれ?休みかなと思った頃、
奥からおばあちゃんがよっこらせと出てきました。

どうぞぉ~と案内されるのは3畳くらいの狭い子上がり。
ここ、初デートでくるとこじゃない・・・!!

さっきから私の心の婚活ナビゲーターは警報を鳴らしっぱなし。いや、確かにここも回らない寿司屋だけど、、カウンターに古いテレビもあるし、新聞片手に耳に鉛筆かけてるようなおっちゃんたちが集うとこ!!(偏

・・・気を取り直して、ランチだし、1200円くらいの握りでいいかなぁとメニュー表を見ていると

「特上!2つ!」

そんな夫の発言に驚く私に、「奢るから。」とキリッとする夫。(本来ならお!ってなるけど、、マジ全然カバーできてない!!!)おばあちゃんもまさか特上くると思ってなかったのか、「時間かかりますけど、いいですか」の一言。

特上お寿司がでてくるまで、他愛のない会話をしていたと思います。でも何話してたんだろう・・・全然覚えていないんです。というのも、そのあと何を話したか思い出せなくなるくらい強烈なワサビのお寿司を食べたからです。

そう、その時確実に思い出せるのは二人涙目になりながら、ワサビきついですねって何回もいっていたこと。生臭い特上寿司。きっとこの強烈ワサビはおばあちゃんの優しさ・・・。初デートで二人涙を流す、なんて、粋な思い出でしょう。恋愛で涙を流すことなんてこと、それなりにあったけど。

まさか「ワサビの涙」というものがあったなんて。 +鼻水 (チーン

そんなこんなで、散々なデートでした。
その日夫と解散した時、私の心の婚活ナビゲーターは「うぉぉぉーーー^^^ぶっちぎりNo.1不合格」と認定していました。

婚活女子は忙しいから。

初回のデートは大事。こんな散々なデートをする人なんて。すぐにゴミ箱。「はい、次」っていく案件。それは今回だって。

その日の夜、「今日は楽しかったです!ありがとうございました!また機会ありましたらぜひ!」そんな社交辞令のLINEすら、送らない。

送らないのに通知につられて画面を開く。

散々でした。散々だったけど、「お寿司食べたい」と私がめちゃくちゃ軽い気持ちでお願いしたこと。聞いてもらえなくたってどうってことない大したことないお願いだったけど、叶えようと大事にしてくれた人を思い出す。

あてもないのにこだわって、かっこわるいのにばかみたいって思いながら、そのときはそのままスルーできなくて。

一晩放置したのんきな「来週も迎えにいくから!」というメッセージ。散々なデートをした自覚があるのか、ないのか。

「うん。」とだけ返す。

そしたら、いつのまにか今に至ってしまいました。

今の私の隣には、あのときなんて書いてくれたの?って聞いても笑って教えてくれない人が。


また記事見にきてもらえると嬉しいです!!