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春の、色。

 各地から、春の便りが届きます。様々な、春の便り。
そう言えば少し前に、播磨の浜の春を書きましたね。
https://note.mu/ktnh/n/nf3dfddd6c551

 春と言えば、鮮やかな色彩が溢れだす季節です。新芽いぶく緑、桜そして桃のピンク、雪解け水の青、いろいろな、色。

 私にとって、春は、黄色。

 4年前の春、私は韓国の田舎を独り歩いていました。
 まだ冬枯れのイメージが色濃い農道を、歩いていました。この道は、鉄道の廃線跡。

 趣味の鉄道、しかも軽便鉄道の跡地なのでテンションはアップしていましたが、こんな光景が続くと、やはり気持ちも萎えてくる一面もあったりします。

 そこに、ふと現れる鮮やかな黄色。

 ふふん、これがケナリ(連翹)かぁ。生垣とか公園の植栽にも使われる、韓国の春を代表する花と話には聞いていたけど、なるほどこんな道端にも咲いているんだなぁ。くらいの感覚でした。
 しかし、翌日にはこんな感覚は吹っ飛ぶのでした。

 滝のような、ケナリ。

 迫り来る、ケナリ。

 圧倒、されました。韓国らしい団地から、坂を登り、山麓のタルトンネ(バラック街)を抜け、僅かばかりの畑の先は、ケナリの世界だったのでした。

 色の消えたような冬の野、色を失くしたようなタルトンネ、それらの先に、この黄色は、あるのでした。チラリズム的な存在だったり、世を埋め尽くす暴力的なボリュームだったり。

 あぁ、なるほど。
 これが、春の色、なのかぁ…、と。

 桜にも春の色を感じるのですが、この鮮やかさ、この力強さ。これこそ、春の「勢い」なのか…、と。

 山から下り、里へ向かう道中、こんな光景に出合いました。

 あぁ、どんな人の下にも、春はやってきてケナリは咲くんだなぁ、と。

 力強い、春の、黄色。

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