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子どもの頃に負った身体の傷は治りやすいけど、心の傷は治りにくい

先日、手の甲に擦り傷ができた。
二週間弱経ってようやくかさぶたが完全にはがれ、皮膚が再生したのだけど、まだ明らかにけがをしたことが分かる傷跡が残っている。

大学生くらいで、身体の傷の治りが遅くなってきていることを実感した。
20代半ば、まだ若いと言われる部類であることは承知だけれど、さすがにもう子どもの頃の治癒能力にはかなわない。
ブランコから落ちて顔の片側一面にすり傷を負っても、ホットプレートの縁に腕が当たって火傷をしても、跡形もなくきれいに治った。


一方で、子どもの頃に経験したつらい出来事は、思い出すといまだに痛む。

わたしの場合、中学生の頃に友達と些細なことですれ違い、孤独を感じた記憶は、その後の他者との関わりにおいてもずっと尾をひき、わたしという人間を根本的に変えてしまったような気さえする。

他者からの視線や評価を気にしすぎてしまうこと。
しんどいとき、感情を無にしてひたすら耐え忍ぶこと。

そのときに生まれた自分の思考や行動の癖は、その後の人生においてプラスに働いたこともあるけれど、原点は傷を癒すための本能的な反応だった。

ある程度の処世術も身に着け、過去を上書きするように成功体験も積んだ自分の心は、もう血は流していないけれど、たまに後遺症のようにずきずきする。


まだ人生経験が少なく、刺激の強い物事への対処法を身に着けていない子どもの心は、きっとやわらかくて弱い。
運悪く経験したほんの小さな出来事がきっかけで、未来が狭まるようなことがあってはならないよな、と思う。


(634字)

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