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マネージャーが中間管理職からリーダーになるための守破離

2020年は、マネージャーとして苦しみ、もがきながらも自分なりのやり方やスタンスを見つけていった一年でした。6月の段階でマネジメント歴が1年を経ったので一筆残した記事は多くの反響がありましたが、今回はそのアップデート版です。

主に語る内容としては、マネジメント経験を通してわかってきた、マネジメントの守破離です。

以下のような方々に特に共感頂けると嬉しい記事になっています。

・デザイナーやエンジニア
・中間管理職の方
・チーム作りに関わる方

中間管理職が行うマネジメントとは管理ではなく、ファシリテートである

現在自分は7名のUXデザイナーをマネジメントしている立場にある。世にいう中間管理職的な役割だ。マネジメントという言葉はあまりに幅広い意味を持つために、その役割自体を曖昧に捉えてしまうことが多い。

ここまで約2年マネジメントを経験してきた上で自分がたどり着いた結論は、中間管理職としてのマネジメントはあくまで「メンバーの仕事をファシリテート」する仕事だということだ。ファシリテーションは、英語で、容易にする、前に進めるなどの意味がある。

結論を先に述べると、中間管理職のマネージャーがメンバーをファシリテートするとは、「チーム活動が円滑に進むように、そして、チームの成果を最大化できるように、中立的な立場で支援すること」を指すのだ。

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では、それをどのように成し遂げるか?を次に語っていく。

マネージャーは組織の人材の触媒であれ

自分がかつて想像していたマネージャーの仕事は、上から下へ指示を下ろし、その指示が示す仕事を管理することだと考えていた。数値や効率、コスト削減が至上のマネジメントスタイルだったからであろう。

だがしかし、現代の従業員と会社の立場は大きく変化した。従業員のビジョンと会社のビジョンをすり合わせることが重要な時代にある現代においては、上意下達の考え方は通用しない。

そこで、現代の自分の中でのマネージャーの役割は、「組織の中で触媒となること」と捉えている。ここでの触媒は、「あらゆるものをつなぐ役割」ということだ。化学の世界では、触媒は化学反応を促進させるような物質のことを指す。ビジネスの世界でも同様メンバー同士、メンバーと組織、等あらゆる関係性の間に立ち、化学反応を起こす触媒となることがマネージャーには求められているのだ。

会社のビジョン/ミッションとメンバーのキャリアを一貫させる

まずひとつ目に、マネージャーはメンバーのキャリアの一番の理解者である必要がある。どのポジションを守りたいかを聞かずにいきなりピッチャーをやらせる野球監督はいない。キャリアにおいても同じことが言える。よく使われるフレームワークでいうと、Will Can Must 等があるが、ここで重要なことはフレームワークにそってキャリアプランを埋めることではない。

マネージャーとして、メンバーが自分のキャリアを語りたい相手になれているか?また、Will Can Mustに秘められた原体験や挫折の経験を理解出来ているか?の方がよっぽど重要だ。

自分もメンバーと週次の1on1をするが、つい目の前の業務の会話に囚われて未来の話や、夢の話をすることを忘れてしまう。月に1度でも、3ヶ月に一度でもいいからメンバーと「どうしてこの会社を選んだんだっけ?」「なにか成し遂げたい未来はある?」「やってみたい仕事は?」といった問を定期的に投げかけてあげることが重要だ。

また、ただ未来像をヒアリングするだけでなく、その機会を出来る限り提供してあげることも重要な仕事だ。一言でいうと、「アサイン戦略」とも言える。中間管理職である以上決定権があるときもあれば、そうではないときもある。だからこそ更に上の上司に、「このメンバーはこういうタイプで、こういうことをしたい。」といった情報を意識して定期的にインプットしてあげることで、組織の中でメンバーのポジションを徐々に築いていく。それが出来れば自然と会社のビジョンとミッションはすり合っていくだろう。

メンバーによってWill Can Mustのどれを参照するかの重み付けをする

ただ、全員が全員やりたいことをやらせるコミュニケーションをすればいいだけとは限らないとも思う。無論スキルによって提供する機会は変わってくる。

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具体的には、よりシニアなメンバーには守破離の破離 を担ってもらえるよう、Willを重点的に引き出し、機会を創出することを意識する。シニアなメンバーは会社の既存の枠組みをはみ出たWillを持っていることも多い(新規事業等)ため、マネージャーの仕事は泥臭い機会提供のための根回し的なコミュニケーションになる。これも個人の未来と会社の重役とをつなぐ触媒としての重要な仕事だ。
ミドルメンバーに重要なことは、MustやCanを活かしつつ、Willにも少し挑戦しながらスキルを伸ばすような機会提供だ。言い換えると、得意なことを活かせるが、一筋縄ではいかない環境を用意してあげることを意味している。それが成長に繋がる事が多い。
ジュニアメンバーには、まず仕事の基礎を叩き込めるような場を提供することを意識する。ただ、基礎を任せることと同様に重要なことが「簡単でもいいから意思決定を基本的に任せる」ことだ。書籍や動画を見れば基礎知識はつくかもしれないが、その知識が血肉になるには、その知識を利用して「自分で決める」経験が必要だ。ジュニアメンバーには、基礎知識の応用で対処出来る仕事(つまりMust)を自分で決めながらこなす経験が重要になる。

このように、メンバーのレベルによって機会提供の仕方を少し変えるコミュニケーションをすることで、会社の提供できる機会とメンバーの成長の触媒となるのだ。

メンバーとメンバーをつなぐ触媒になり、化学反応を生む

社員が50名〜100名を超えてくると、そろそろ新しい社員の名前を覚えられなくなってくる規模になるだろう。だからこそマネージャーが率先して情報をキャッチして、組織にどんな人材がいるのかを解像度高く把握する必要がある。

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それによって一人では立ち向かえない難題にも、「〇〇部署の〇〇さんに壁打ちしてみたら?」だったり、「〇〇さんがそれ得意だから聞いてみたら?」といったような、メンバーが知らなかった人材との接続を叶えることもマネージャーの重要な仕事だ。

自分が行っていることを例に上げると以下になる

・会社のほぼ全プロジェクトのSlackチャンネルに入る
・timesなどの雑談が行われるチャンネルにも入る
・他部署のコアのチャンネルにも顔を出す
・そこでの発言を見て、得意分野や性格を類推し記憶しておく

これらをすることで、新しいメンバーが会社に入ってきても常に誰が何を得意か?を把握出来る。自分で把握出来ない場合は、別のマネージャーに聞きに行く。ここまで出来れば大体組織の全体像が把握出来てくる。時間はかかるが、組織の触媒としての機能を果たすためには重要な時間で、自分もよくメンバーに「〇〇について詳しい人って誰ですかね?」といったような相談をよく受ける。メンバー同士をつなげることでプロジェクトが前に進んだり、課題が解決された瞬間はいつも快感だ。(笑

中間管理職のマネジメントの守破離

これらを言語化する中で、中間管理職マネジメントの守破離が見えてきた。

守…メンバーのWill Can Mustを的確に把握し、機会を提供できる
破…組織の全体像を把握し、人材の化学反応を起こせる
離…??

といった具合だ。ただ、ここまで述べてきた中では「離」にあたることが言語化出来ていない。離 に関しては、個人的には触媒となることやファシリテーションする以外の力が必要になってくる。

結論からいうと、それは「揺らぎを起こすリーダーシップ」だと考えている。

ここまで述べてきた触媒としての仕事はどちらかというと、メンバーの意志や会社のビジョンなどを踏襲して、それを疑うことなく既存の流れをよりよくすることに当たる。しかし、そればかりではただのコミュニケーションの接続役としての中間管理職に成り下がってしまう。

中間管理職からチームを先導するリーダーとなるための一歩が、「揺らぎを起こすこと」にある。ときにチームにはこれまでのやり方に固執しようとしたり、安定を求めようとする力が働く。これは慣性の法則と同様で、人は変化を無意識的に嫌ったり、気づかないことが多いから一種仕方のないことだが、マネージャーはその状況を俯瞰して、既存の流れとは逆の一手を勇気を持って打つ必要がある。

例えば、デザインプロセスを書籍から表層的なものだけ真似することが徐々に当たり前になっていると感じた際に、「既存の情報を参考に手軽に成果を出そうとする力学」と認識をして、そこに対してあえて「過去の文献を一切参照せずプロジェクトを進行させる」ような一手を勇気を持って打つ。といったような話だ。※あくまで例

ただ、この勇気やリーダーシップを持つためには、マネージャー自身が理想とする未来を解像度高く描いている必要がある。このチームをどうしたいのか?という意志が固く、解像度が高ければ高いほど目の前の違和感の質が上がる。中間管理職こそ、ハブになるだけでなくリーダーとしてのWill Can Mustを明らかにして、未来への足かせになるものを徹底的に排除することで良いチームが出来上がっていくのだ。以上をまとめると、マネジメントの守破離は以下になる、

守…メンバーのWill Can Mustを的確に把握し、機会を提供できる
破…組織の全体像を把握し、人材の化学反応を起こせる
離…組織のバイアスを認知し、揺らぎを起こす施策を打つ

この記事を書いてみてはじめて自分の中でも何が守で、何が破離なのかが言語化できた。

さいごに

ときにリーダーのアイデアはメンバーに変化を促すもので、初見では否定されることもあるかもしれない。でももしリーダーとしてそれが正しいと思うのであれば、丁寧に意図や背景をメンバーに共有し対話を通して全員が腹落ちする形まで導くのもマネージャーの重要な仕事だ。「熱のある触媒」それがマネージャーの理想像なんだと思う。

みんな、マネージャーやろう!

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