会議の生産性を5倍上げる「ファシリテーション力」を徹底解説する
こんにちは!のだかつきです。
UXデザイナーとして働き始めて、4年が経ちます。今では、マネージャーとして8人のUXデザイナーをマネジメントしています。以前から「言語化」や「構造化」等いくつか優秀なデザイナーが共通して備える素養について触れてきたんですが、今日はUXデザイナー、マネージャー、プロダクトマネージャー等幅広い職種のメンバーと関わる人が特に身につけるべき「ファシリテーション」について解説していきます!
この記事は↓のグロービスから出ている「ファシリテーションの教科書」を多く参考にしています。素敵な本をありがとうございます!
ファシリテーションという概念は人によって解釈の異なる言葉です。正しくファシリテーション力を身に着けていくためにも、ファシリテーションという概念を徹底的に解剖し、解像度を高めていきたいと思っています!では早速参りましょう!
(こんな人に読んでほしい↓)
・会議のファシリテーションをすることがある人
・部下と1on1をする機会がある人
・多職種と合同でコラボレーションする人
【定義】ファシリテーションとは何か
※ https://formapart.com/definition-of-facilitation/ より引用
ファシリテーションと聞くと、↑の絵のような「会議」の場面がまず連想されると思います。会議を「ファシる」等と言ったりしますが、それはそもそも何をしていくことなのでしょうか?Agendaを元に議論を進めていく役割のようなイメージをするかもしれませんが、それはファシリテーターではなく、「司会」です。ファシリテーターにはもっと大きな役割があります。
まず、語源を見てみましょう。
そもそもファシリテーションは、facilitate(ファシリテート)という単語から来ています。そして、facillitateは、facio(行う) + ilis(事ができるようにする) がラテン語の語源です。英英辞典を引いてみます。
To facilitate an action or process, especially one that you would like to happen, means to make it easier or more likely to happen. (ケンブリッジ英英辞典より)
要は、工程や行動を円滑に、容易に促進する役割があるということです。やや難解な理由は、もともとは「工業」の文脈で使わてきた言葉だからだと考えています。そしてそれをビジネス文脈に翻訳すると、、、会議を以て何を行えば円滑に物事が進むか?と考えてみると、先述の書籍で紹介されている定義がしっくりくる形になります。
ファシリテーションとは「メンバーや関係者の知恵とやる気を引き出し、深い納得に裏付けられた合意を形成し、次の行動を生むこと」である。(ファシリテーションの教科書より)
これ自体がファシリテーションの定義であり、目的そのものです。1on1も、KPTも全ての会議がこうあるべきだと思っています。ここから逆算してみると、「良い会議、良いファシリテーションのゴール」が見えてきます。
・集合知を集め、良い意思決定を導くこと
・参加者の腹落ち感を生むこと
・意思決定と腹落ちから、ネクストアクションが発生すること
これが出来ていない会議は、良い会議だったとは言えない。ということですね。例えば、進捗共有をするだけの会議は僕は不要だと思います。それはテキストで送ってもらえば済む話。会議をするからにはボトルネックが何かを明らかにし、参加者の知恵を借りて新しいアクションを生むまでやるのが会議の意義です。
また、マインドセットとしては、ファシリテーターとしては、チームの意欲・能力・知恵を信じて、可能性を信じる。 引き出し、決めさせ、自ら動く状態を作るのが重要です。
ここからは、具体的にファシリテーションをどう行っていくか?という話をしていきます!
【前提】会議はどんな構造から成り立っているのか?
ここからはファシリテーションのやり方自体の解像度を上げていきます。そもそもまず、会議や議論の構造について考えたことありますか?会議の構造自体は、こんなモデルで考えられます。
会議は場の目的を合意し、今ある課題を合意した上でアクションを選定し、それを実行するというコミットをするまでを会議としています。
また、そこにはそれぞれ論点が横に存在に、各論点に対して参加者の状況を見ながら出発点から到達点まで導くのがファシリテーションの役割です。
また、それを正しく導くための役割として、「議論を仕込む」ことと、「議論をさばく」ことが大きな役割の2つだとファシリテーションの教科書の著者は挙げていました。それぞれの中身を見ていきます。
ファシリテーションの詳細:議論の事前仕込み編
まずファシリテーターは会議の前に会議自体の流れをイメージし「仕込み」を行っていく必要があります。具体的には、以下の流れで行っていきます。
「到達点を明確にする」→「参加者の状況を知る」→「論点を把握しておく」
になります。具体的に説明していきます。
【仕込み】⛳議論の到達点を明確にする
まず、会議自体のゴールを具体的に仮置します。「具体的に」という点が重要です。例を出してみると
×「問題意識を共有する」
◯「今回のアプリリニューアルにあたって、関係するステークホルダーが現状の問題点を認識し、変更の目的と時期について合意し、ネクストアクションに各メンバーが着手できること」
「問題意識を共有する会議です!」だと実際どこまで何をやればいいのかわからないですよね?一方、○のパターンであれば、参加者が具体的に何をイメージして会議に臨めば良いのかがクリアです。ゴールを具体的に置くことで、参加者の準備もシャープになってきます。
以前わたしが書いたプロジェクトマネジメントを加速させる良質な目的設定の5Cの記事や、
Globisの出している目標設定の5つのポイント「SMART」とは?などを元に「この議論が終わった時に、何がどの様になることが正解か?」と問い続けることがまず一歩だと思います。(人に壁打ちするのもおすすめ)
【仕込み】👪参加者の状況を知る
会議のゴールを立てたら、次に参加者の状況をイメージしておきます。結論から言うと、以下の3点を事前に理解出来ているとベストです。
①理解度…議論の前提×議論の中身×場の雰囲気
②意見・態度…賛否×賛否の理由×賛否の背景
③特性…参加者の人柄×ファシリテーターとの信頼度
①理解度に関して、一言でいうと相手の認識をいい意味で疑ってかかることから僕は始めます。具体的には、会議の事前情報をわかっているでしょう!という認識でいるより、過剰なまでに前提をシェアしておくのが重要です。情報共有は不足より過剰のほうがマシというのが持論です。
②そして、参加者の意見や態度を想像します。どんな意見をもつか?を予測しておきます。立場の違いが価値判断の違いを生むので、どんな役割の人が来て、その背景からどんな意見を出してくるのか?をイメージしておきましょう。ここがファシリテーションの見せ場です。具体的には、情シスはセキュリティの論点を気にしてくるはずで、経営者は売上を気にしてきそうだ。であれば両方に関するカウンターを用意しておこう。等です。
③最後に、場の空気を読む。そして、信頼されるのが重要です。この人がファシリテーターなら大丈夫だ。と思ってくれる人が会議の参加者に多ければ多いほど重要です。でも会議だけじゃすぐに信頼を勝ち取れるわけではないので、日々のコミュニケーションや発信がとっても大事で、日々の些細な仕事から信頼をされる仕事ぶりをしておくことがいざ重要な会議が来たときの助けになります。(日々の信頼の勝ち取り方は↓参考までに笑)
【仕込み】🎯 論点を把握しておく
そして、ゴールや参加者の状況を把握したら、最後に最も重要な「論点」を把握しておきます。とはいえ、そもそも「論点」とはなんでしょうか?
論点とは、「意見」に対応する「問」のことです。例えば、
Aさん「〇〇コンサルは、単価が高く、自社で内製した方が安いから発注すべきでない」
Bさん「自社より〇〇コンサルの方がリサーチのクオリティが高いから、〇〇コンサルに頼むべきだ」
コアとなる問である「Q. 〇〇コンサルに頼むべきか?」は同じだが、
Qa:〇〇コンサルに頼んだ場合のコストは?
Qb:〇〇コンサルに頼んだ場合のクオリティは?
というサブとなる問、つまり論点に差がある状態です。
なので、このAさんとBさんの意見だけでは本来の問に対する意思決定をすることはできません。ですので、ファシリテーターは意見に対してその人がどんな問に対して、意見を言うのか?を抽出する必要があります。
注意すべきことは
・意見には論点が複数含まれることが多い
・論点自体は発言されないことが多い
・人は論点を網羅するのが苦手(一つの論点にのみ着目していることが多い)
ということです。ファシリテーターは、事前に論点を広げ、絞り、深めておく必要があります。Stepとしては、論点の発散→グルーピング→階層化 等がよくあるパターンです。とはいえ0から論点を網羅するのも難しいので、フレームワークにも頼ります。例えば、ビジネスの全体像の論点を把握したいなら、リーンキャンバスだし、ユーザー課題ならペルソナやカスタマージャーニー、戦略立案なら3C分析、開発案件の外注ならQCD(Quality Cost Delivery)のように、すでにフレームワークがあるものはそれを頼るもの一つの手です。
このように、「到達点を明確にする」→「参加者の状況を知る」→「論点を把握しておく」をしておくことで、議論の「仕込み」が完了するのです。
今回の内容はモリモリに全部内容を詰め込んでいるので、実際の会議ではここまで準備ができないとは思います。適宜状況によって時間をコントロールしてどの部分を参考にするかはピックアップをしてみてくださいね!自分自身も超重要会議の前は↑の流れを全てしっかりやりますが、日々の定例などではそこまでできないことが多いのが正直なところです。
ここまでが、仕込み編でした。つまり会議前の話でした。ここからは実際の会議の最中のファシリテーション、会議の「さばき」に行きます。
ファシリテーションの詳細:議論中のさばき編
ファシリテーションとは「メンバーや関係者の知恵とやる気を引き出し、深い納得に裏付けられた合意を形成し、次の行動を生むこと」である。と前半で定義をしました。まさに会議中においては、参加者の発言を引き出し、理解・共有し、議論を方向づけ、結論付ける。ことがファシリテーターに求められています。そのため、前提としてファシリテーターは人の話を論理的・構造的に理解する力が求められています。「わたしの発言が正しく伝わらない」と思われてしまうのか「まさに思ってきたことを汲み取ってくれる!」と思われるかで信頼度は大違いです。ファシリテーションをするためには「構造化」や「言語化」が非常に重要なんです。
会議中の「さばき」には4つのステップがあります。
発言を引き出す→発言を理解する→議論を方向づける→結論付ける のステップです。それぞれ見ていきます。
【さばき】💡発言を引き出す
発言を引き出すには、「心」と「頭」を刺激する必要があります。
💘「心に訴える」
参加者の発言する意欲を引き出すために「心に訴える」ことが重要です。つまり、発言を躊躇する要因をなくしてあげることが求められています。言い換えると、なぜあなたの発言が必要か?を伝えてあげることでそれは達成できます。
「(反対してそうだけど、自分勝手だと思われるのを怖がり、躊躇してそうな人に対して)○○さんの立場からすると懸念もあるかなーと思うんですが、あえて挙げるとするとどうですか」
「〇〇さんならではの見方もあると思うんですが、どう感じますか?」
意見をいいづらそうにしている人がいたら、こんなような言葉をかけてあげてみてください。「Why Me」が明確になると「正しいことを言わなきゃ!」というバイアスを外してあげることができます。これもファシリテーターの重要なテクニックです。
💡「頭を刺激する」
心に訴えても、そもそも何を発言したらいいかわからない場合もあります。そのために発言する刺激を与えてあげることも大切です。「何を発言したらわからない」を解消するために、発言のヒントやきっかけを与えてあげることが「刺激」になります。
「今日は、結論を出すことではなく発散が目的なので、なんでもアイデアを発言いただきたいです」
「KPIが下がっている件に関して、皆さんが率直に感じている課題を教えて下さい」
など、前提条件(何を、なんのために、どのように)を伝えてあげると、引き出せる情報も増えます。
また、
「アウトプットのクオリティに関してはどう思いますか?」
「プレゼンテーションのわかりやすさに関してはどう思いますか?」
のように、論点を示してあげて、刺激する方法もおすすめです。
他の刺激方法としては
・反対意見を求める時はそれを示す
→「逆に言うとどうですか?懸念を出してみるとどうですか?」
・意見を出す具体例を示す
→「ユーザーの欲求を〇〇したいで表現してみてください」
・具体的に状況をイメージさせる
「もしあなたがお客さんに説明するとしたらどうしますか?」
・制約を外す
「もし予算が無限だとしたらどうしたいですか?あなたが社長だったらどうしますか?」
こんなように、質問の手札を予め持っておけば、いざ!という時に使えるのでおすすめです。
【さばき】🧠発言を理解する
発言を理解するときにも、「心」と「頭」が出てきます。理解にも「心から、内容を頭で理解」する必要があるんです。
💘👂「心で聞く」
心で聞くとは、端的に言うと「聞いているよ」という姿勢を参加者に伝えることです。これに関してはシンプルで
・発言者に体を向ける
・発言に対して相槌をする
・発言を言い換えて伝える
などを通して、あなたの発言を聞いているよという姿勢を示します。その姿勢が安心感を生み、発言者の発言が更に増えていくのです。
🧠👂「頭で理解する」
人の意見を正しく理解するためには、そもそも「意見」がどう成り立っているのか、つまり発言の構造を理解していることが前提になります。そこで「意見」を分解してみましょう。
意見というのは網羅性のある形で表現をすると
<論点>について、<根拠><根拠>の理由で、<目的>のために、<主張>と考える。
こうなります。
〇〇さんの面接の合否(論点)に関してですが、私は合格とすべき(主張)だと思っています。なぜなら、学生団体を率いた経験からリーダーシップがあると判断をしたからです(根拠)。採用することで、自社に新しい文化を吹かせて欲しいです(目的)。
例えば、こんな形↑です。
しかし、毎回の会議でこんなに完璧に発言をしてもらってはスピードも遅いし、発言が出てきづらくなってきてしまいます。なので、ファシリテーターは参加者が「論点」の話をしているのか「根拠」なのか、「主張」なのかを聞きながら理解し、足りていない点を埋めてあげる質問を投げかけることが重要です。
ちなみに、人の発言は多くの場合が、なんと言っているのか?(主張)と、なぜなのか?に集中することが多いです。そこで、準備しておいた論点(何の問についてなのか?)と、その人がその発言をする目的はなんのか?を汲み取るのが重要です。
特に、目的はその人が認知していない心理的、情緒的なときもあります。「俺の意見を通してアピールしたい」「喜怒哀楽を会議で表現したい(無意識)」ここまで汲み取ることが、冷静に議論を進めるカギです。ただ感情にまかせて発言をしてくる相手に関しては、聞いてるふりして参考にしない。ことも極端に言うと必要になってきます(僕もたまにやりますw)
【さばき】🚩議論を方向づける
発言を引き出し、理解をしたら、次に議論を方向づけます。結論に向かって論点を倒していき、議論自体をゴールに導きます。
🛩「議論を広げ、深める」
先程「意見」の構造の話をしましたが、良いファシリテーターは議論の過程で、足りない論点を補足したり(議論広げる)、意見の根拠を厚くする(深める)ような質問を投げかけます。
具体的にいうと、
主張がよくわからない場合:「つまりあなたはどうしたいですか?」
→メッセージの明確化
根拠がない場合:「どんな背景からそう思ったんですか?」
→根拠の整理
のように深める質問をしたり
「ここまではコストの話がメインだったので、クオリティの話をしましょうか?」
論点をA→Bにずらすような質問をする。などを通して、結論に至るまでに話し切る必要がある論点を潰していきます。
✋「議論を止める」
また、ときには議論を導くために、本来議論するべきではない内容が出てきた際には「議論を止める」必要もあります。
この止め方は、相手に悪い印象を与えてしまうこともあるので慎重さが求められます。そのため、まずは意見を受け止めることが大事です。本来議論すべき方向に目を向けてもらうために、意見を無下にするのではなく、重要であれば後で議論することを示すことで、本題と逸れた内容に議論が行くことを回避します。
一つおすすめの手法をおすすめします。「パーキングロット法」です。
※ https://ameblo.jp/wakuwaku-yumeippo/entry-11386867610.html より
議論を可視化する議事録やホワイトボードなどに「パーキングロット」と呼ばれる後で話す内容をストックしておくスペースを用意しておく手法です。
これによって、ファシリテーターは「確かにその意見は重要ですが、今すぐの話題ではなさそうなので、一旦パーキングロットに入れておきますね!後日話しましょう」のように本題から逸れることを回避出来るようになります。
【さばき】🎯議論を結論づける(まとめる)
会議の最後には、論点に対する結果を振り分け、結論をまとめます。会議のアウトプットとなる結論は以下をまとめることで完了します↓
「決まったこと」
「決まっていないこと」
「誰が、何を、いつまでに」
特に重要な点が、「いつ(納期とスケジュール)」「何を(タスク詳細)」「どのように(プロセスとアウトプット)」「誰が(役割分担)」を全員で合意することです。これがなければ会議が終わったあとのTodoを誰も管理せず、いつの間にか忘れ去られてしまいます。
ファシリテーションとは「メンバーや関係者の知恵とやる気を引き出し、深い納得に裏付けられた合意を形成し、次の行動を生むこと」である。(ファシリテーションの教科書より)
このゴールを達成させるためにも、「次の行動」がとても重要です。ファシリテーターはTodoを完遂させるところまで意識を研ぎ澄ましていきましょう。
最後に
ファシリテーションの目的は、「メンバーや関係者の知恵とやる気を引き出し、深い納得に裏付けられた合意を形成し、次の行動を生むこと」と定義して、そこに必要なプロセスやスキルを定義してきました。ここまで深ぼると、会議の奥深さにビックリしますよねwですが、会議はファシリテーターが入念に「仕込み」をして、現場で「さばく」ことが出来ると見違えて進化します。
自分も全員の納得感を高まることが出来た会議の後は、ファシリテーターとしての達成感もものすごいものがあるし、何より参加者の方から「良い議論が出来た、ありがとう。」と言っていただけた時はニヤニヤしながら会議室を後にしています笑
会議の参加者が5名だとして、ファシリテーターは1人である必要はありません。極端にいえば、5名の参加者全員がファシリテーターマインドを持った状態で会議に臨めば会議の生産性は何倍にもなります。是非ファシリテーターになったつもりで、会議に参加してみてください。
ここまで読んでくださった方の会議ライフがより良くなることを祈っています!
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