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輪廻の風 第3章

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2022年8月の記事一覧

輪廻の風 3-48

キリアンの能力に罹ったマルジェラ達は、為す術もなくただ呆然と立ち尽くしていた。

忘却とは恐ろしいもので、彼らは様々なことを忘れていった。

今、なぜ自分達が戦場へと出向いているのか。

つい最近まで共に笑い合い、今日まで苦楽を共にしてきた仲間達の顔や名前さえも忘れ、次第に自分自身が何者かさえも忘れていった。

極み付けには四肢の動かし方も忘れ、彼らは目を見開いたまま、目の前に広がる光景、その全て

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輪廻の風 3-47

魔族73000対バレラルク1800。
現在の魔界城内部の戦況である。

場面は、魔界時の4階へと移り変わる。
緩やかに全滅へと近づくバレラルク側に対し、魔族側の戦力は大幅に減少していた。

これは、バレラルク王国の将帥にして鳥の天生士であるマルジェラの奮闘のおかげだ。

鳥化して高い天井を悠然と羽ばたくマルジェラを、魔族の戦闘員達は例の空中浮遊能力を使って追い詰めようと試みたり、または闇の破壊光線

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輪廻の風 3-46

イル・ピケは戸惑っていた。
自身の能力が、一向にアズバールに効いている気配が無いからだ。

アズバールの能力によって床からニョキニョキと生い茂る木々は、イル・ピケに向かって縦横無尽に襲い掛かっていた。

イル・ピケは闇の破壊光線を放ち、それらの攻撃をひたすら弾き返し、一貫して防御に徹していた。

飄々と自分を殺しにかかるアズバールに、イル・ピケは動揺を隠しきれず、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてい

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輪廻の風 3-45

巨大隕石の接近によって蒸し風呂の様な酷暑に襲われた魔界城内部は、隔世憑依したモスキーノが放った冷気により瞬間冷却され、今度は凍える様な極寒に襲われた。

「な、なんだよ!今度は突然寒くなったぞ!」

「どうなってんだ!?」

「いや…最早一周回ってちょうど良い気温かも?」

城内にいた戦士たちは、あまりの寒さにブルブルと体を震わせながら、その身に降りかかった異常気象ともいえる現象に騒然としていた。

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輪廻の風 3-44

魔界城最上階で激闘を繰り広げていたエンディとヴェルヴァルト大王は、一旦戦闘を中断して上空を見上げ、空を敷き詰めるように覆い尽くす3つの巨大隕石を眺めていた。

「はぁ!?なんだよ…あれ…!?」

「フハハハハッ!シュピールの奴め、中々面白い余興を見せてくれるではないか!」

エンディは突如出現した巨大隕石を見上げ、口をあんぐりとあけていた。

一方でヴェルヴァルト大王は、自身の部下であるシュピール

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輪廻の風 3-43

「ダメだぞ〜?子供がこんな場所ではしゃいでちゃ〜!メッ!」
「大体君は生意気なんだよ、目つきも立ち居振る舞いも!子供のくせに!」
「酢いも甘いも全部噛み分けた様な顔して…ほんと鼻につくんだよねえ〜君みたいなガキンチョはさ〜。」
「コラッ!お仕置きしちゃうぞ〜!」

モスキーノは、くどくどと嫌味ったらしくシュピールに文句を言い続けた。

シュピールは苛立ちを募らせ、一瞬我を忘れて激昂しそうになったが

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