![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/35186951/rectangle_large_type_2_9b979d8cf3e5e83b3edfdc3a052f7e48.jpg?width=800)
ボーカロイドを"読む"~しま氏監修のボーカロイドガイド本をみんなに紹介してみよう、の話③
どーも、kthn.です。この連載は"しま"氏監修のボーカロイド本を特集しております。
前回、資料としてかなり優秀なボーカロイド本を編纂してしまったしま氏。
そのボーカロイド文化に対する多大なる愛情と知識、そして情熱の結果が翌年に又してもP-ヴァインからボーカロイド本を出版…という形で結実してしまう(笑)。
その結果がコチラ。
・ボーカロイド音楽の世界 2017
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/37201766/picture_pc_aaf525ea68862e223774fc58f2f09f6c.jpg?width=800)
前回のしま氏監修の著書「別冊ele-king 初音ミク10周年─ボーカロイド音楽の深化と拡張」では周年付近を含めた[初音ミクとボーカロイドのこれまでの10年]にスポットを当てていた。
こちらは言わばその後編…[10周年付近とそれに纏わる以降]を論点に当てて纏めた感じになっている。
という訳で早速見所をピックアップして行きまっしょい。
★an interview with EHAMIC
図書館司書であり音楽活動を続けているアーティスト「EHAMIC」へのインタビュー。アナログLPやカセットテープの話からボサノヴァ、「音楽家」としての在り方やブライアン・イーノの話題まで出て来るぞ!!
…全部「初音ミク」の話です(笑)。
★The World of Vocaloid Music 2017
この章はまさしく[10周年付近とそれに纏わる以降]の流れをトピック形式で書いていて、読む者を魅了する作りとなっている。
それぞれのスポットを当てた項目が簡潔且つ丁寧に書かれているので、読む者を飽きさせない。
項目で言うと、
・ボーカロイドに関する2017年の重要トピック
・初音ミク10周年のトピック
・鏡音リン・レン10周年のトピック
・「ボカロ」という言葉、単語について
・「2017年(10周年)」という「節目」をキーワードとした新世代と旧世代の温度差や関わり方の差異
・VOCALOIDランキング「ぼからん」で見る2017年の流れ
この様な構成になっている。
それぞれの内容に軽く触れてみよう。
・ボーカロイドに関する2017年の重要トピック:
下記の様に説明文を入れると野暮ったく見えるが、実際は2017年にボーカロイド界隈全体で起きた出来事をを俯瞰視点で書かれているので非常に理解し易い。
・初音ミク、鏡音リン・レン10周年
から始まり、
・ボーカロイドの市場規模
・(前誌でも触れた)手塚治虫・冨田勲とのコラボレーション
・和太鼓を扱う伝統芸能集団「鼓動」やオーケストラとのコラボレーション(初音ミクシンフォニー)
・IA -ARIA ON THE PLANETES-の海外ライブ公演の成果
・中国のボーカロイドやその市場
・YAMAHA VKB-100(ボーカロイドライブラリ搭載のキーボード。アプリから他のボーカロイドを選択する事が可能)やポケット・ミクの販売開始
・増えて行く新しいライブラリ
・ボーカロイド楽曲の映像化
これらの分厚い内容が簡潔に理解し易く、数ページに纏められている。
…何度も同じ事言うなって?実際に読んだらサラッと読めて舌巻くで。
・初音ミク10周年のトピック:
こちらは「初音ミク」単体の10周年に関する商業展開中心のトピック。
・記念コンピアルバム
・フィギュア
・ウォークマンや切手、大手企業のコラボ
・記念書籍
・マスメディアへの展開や特集、反応
・ライブ・イベント
・まとめ
特にまとめでは10周年に対するユーザーの反応も少し紹介していて、とても興味深い。
というのも、「[初音ミク]を中心とするボカロシーン」に触れていると度々「ユーザーの視点・反応」が結構ダイレクトに、そしてストレートに書かれているものが多く、生々しく感じることが多い。
個人的には嘘偽りなくシーン全体を見つめ、課題や反省点、そして有りの儘を書き出せる器を持つこの界隈にはとても好感を持つ。
─閑話休題。
・鏡音リン・レン10周年のトピック:
・鏡音リン・レンの特徴や好まれる理由
から始まり、
・10周年記念で発売された公式と同人のCD
・祝辞イラストから見る国際文化問題やネットミーム
・感動と軽い皮肉(笑)な記念イベント
・10周年当日の動き
・まとめ
「初音ミク」と「鏡音リン・レン」。
同じ会社・同じエンジンを使用したソフトウェアで有りながら、その10年の歩みは違う色合いを魅せる。
ただの「物」とは一線を画した「個性」の存在を改めて感じさせる良記事。
・「ボカロ」という言葉、単語について:
VOCALOIDやボーカロイドで無く、「ボカロ」という単語自体の使われ方や意味についての考察。
・「2017年(10周年)」という「節目」をキーワードとした新世代と旧世代の温度差や関わり方の差異:
所謂シーンに対して「10周年の節目」という行事の際に改めて浮き彫りになった世代間のシーンに対する温度差…その現象を追う。
・「ぼからん」から見る2017年の流れ:
週間VOCALOIDランキング(通称ぼからん)で見る、2017年における目立った現象の紹介と考察。
…と、徹底的に厚い(熱い)内容だぜこりゃ。
この後に続く章は2017年を彩った楽曲や作品の紹介。
★The 50 Essential Songs 2017
★The 20 Essential Albums 2017
実際、この曲やアルバムのセレクトや選出理由も多角的且つ相当な説明なので納得。
★Various Aspects of Vocaloid Music
この章ではタイトル通り、シーン総合をメインストリームの内側からでは無く外側、様々な観点から見たボーカロイドシーンを取り上げている。
・ボカロとジャズ
・ボーカロイド・アンダーグラウンド
・中国ボーカロイドシーン
・ニコニコ動画のVOCALOIDタグ、ニコニ広告の影響とランキングについて
個人的に面白かったのが、関西JAZZ界への激震やアンカタの話。これは貴重な話が盛り沢山なので是非とも本誌を読んで貰いたい。
あ、あと
StripelessレーベルよりチンアナゴLPをリリースしました。チンアナゴをテーマにした全45曲を3枚組のアルバムでお送りします。フリーダウンロードですのでぜひ聴いてみてください。 https://t.co/p4SgeXmGeb pic.twitter.com/5NDi0QKaXT
— しま@11/15のボーマスは「ど17」 (@shima_10shi) March 13, 2016
の答え合わせも載っています。凄ぇぞアンカタ!!(※)。
※:凄ぇぞアンカタ!!な点が二つあって、一つはこのアンカタの動きが無ければ今回特集しているしま"氏監修のボーカロイド本も無かったかも知れないって所。
もう一つがこの本との合同企画
「合成音声ONGAKUの世界」
が発売されたこと。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/37883067/picture_pc_6065c12d1cedc92cd6ba330372ec0490.jpg?width=800)
こちらも要ピックアップ音源なので是非とも聴いてみてほしい(監修は我らがスッパマイクロパンチョップ氏。ちなみに配信版では1曲目の春野「nuit」が抜けているので注意)。
Pヴァイン:ボーカロイド音楽の世界2017/合成音声ONGAKUの世界
紹介ページ
スッパマイクロパンチョップ氏が纏めてご自身のブログにUpしてくれた「合成音声ONGAKUの世界」セレクト曲を聴けるページ
同氏ブログ「合成音声ONGAKUの世界」各収録曲から連想される音楽をセレクト
(スッパマイクロパンチョップ氏のブログ…音楽好きは得しかないので是非。)
・まとめとして
VOCALOID界隈の動きは、従来のマーケティングでは予想し辛い面もあり、全体の把握となると非常に難しい一面もある。
こういう俯瞰で見た総括はシーン内部からは気付き辛い面も見えて、とても面白く感じるので非常に貴重な資料足り得るし、続けてほしい企画でもある…
…そして続くんだなー、これが!!
では、また次回!!
サポートしていただけると幸いです。