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はじめて子どもに英語で助けられた話

アメリカに来て10年ほど経つわが家。発音とリスニングについては今となっては子どもには全くかなわない。私もフォニックスなどを勉強しているものの、染みついてしまった日本語のアクセントを無くすことは既に至難の技だ。現地のコーラスクラブに所属している妻も、歌詞の一部の発音については子どもの教えを請うて頑張っている。

そんな子どもたちもアメリカに来たばかりの頃は英語は全く話すことができなかった。彼ら曰く、学校の友達とあまりストレスなく会話ができるようになり始めたのは渡米して1年半くらいたってからだと言う。当然、渡米当初は一番英語を話すことができた私が子どもを助けていた。が、渡米して2年くらい経った時に、初めて娘に英語で助けらることとなる。その時の話をしたい。

とある日曜日の昼下がり、車で娘と出先から帰る途中のことである。運転中に電話がかかってきたので、Bluetoothで受けると、FEDEXの人間が猛然と話しかけてくるではないか。当時はノースカロライナ州に住んでいたのだが、ノースと州名に入ってはいるが、アメリカの地域で言うと南部諸州にあたるノースカロライナ州。家の修理のコンストラクターや配送ドライバーは特に南部の訛がきつく、運転中であることも相まってどうも聞き取れない。どうも私の家に荷物は既に配送したのだけど、もう一度私の家に来たいと言っているらしい。が、荷物を配達済みにもかかわらず、なぜ彼がもう一度わが家に来ると言っているのかわからないまま、適当に会話を終了して電話をきってしまった。
するとBluetoothで会話を一部始終聞いていた娘が驚きながら私に言うではないか。

「おとうさん、今の人、うちのポストをぶっ倒した、I knocked your mail box out!って言っていたけどいいの?

私の娘

「え〜!?全然、聞き取れなかった!」。いきなりFEDEXの配送ドライバーの私の聞き取れない英語の解釈を披露する娘に強い衝撃を覚えた。これは、再度電話をして確認せねば、と急いで車を路肩に停めた私。着信履歴から折り返しの電話をし、先程の配達人にあらためて聞いてみる。

Did you knock my mailbox out?
「お前さん、うちのポストを倒したのかい?」

"Yes sir..."
はい、間違えありません。

FEDEXの配達人

罪を認めた配達人(というかこちらが聞き取れなかっただけなのだが)。娘はやはり正しかったのだ。急いで家に戻ってみると、無残にももげ落ちたポストが地面に寂しげに鎮座しているではないか。娘は正しかったことをあらためて確認する。

無惨にもげおちたわが家のポスト

日常生活では、聞き取れなかったところは文脈から推測をして全体を理解するようにしているので、こういう想定外の内容にはついていけないという自分の英語力の限界を感じることになる。そして、それ以降、子どもに英語で助けられる回数は加速度的に増えていくこととなったのは言うまでもない。

今でもよく助けられるが、ドライブスルーなどでちょっと聞き取れなくて、"I'm sorry?"とか聞き直すと店員より早く、いらつき気味に「住所!」(相手が私の住所を確認していた)と助け舟を出してくれる。助かるには助かるのだが、もうちょっとお父さんに優しくしておくれ、と思うこともしばしばである。

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