食事介助における「ねこまんま」への認識を、少し改めるべきではないか?
昨日は介護者が「立ったまま」食事介助は誤嚥リスクがあるうえ、介護者にもメリットがないことをお伝えした。
また、介護者が基礎をないがしろにしても効率的だと思ってやっていることは、根拠や検証に基づいたものではないため、実際の時間や作業量から見ると大した効果はないこともある。
今回も食事介助において、介護現場が忙しさのあまりにやってしまいがちが対応をお伝えしたい。
今回は食事介助時のポジショニングや誤嚥の関係といった理論ではないため、人によって意見が異なるかもしれない。
しかし、「食事とは何か?」「自分がそのような介助を受けたら気持ちいいと思うか?」という観点からみた問題提起であるとお考えいただけば幸いである。
なお、本記事は「かわうそ」さんの以下の記事より着想を得ている。
介助を受ける側の貴重な考えとして、この記事を読んで以降、周りの介護職員に対して食事介助のあり方を伝えるようになった。
(何ならこの記事を読まなくていいから、かわうそさんの記事を読んでいただきたい)
■ 介護者による「ねこまんま」
介護者が食事介助をするとき、ありがちなのは「ねこまんま」だ。
「ねこまんま」と言うと「ご飯+汁物」をイメージされるだろう。
もちろん、それもあるが「ご飯+おかず」もある。
ここまで書くと、とりわけ変だと思う人はいないだろう。
しかし、これ以上の組み合わせを平気で行う介護者がいるのだ。
「おかず+おかず」
「ご飯+デザート」
「ご飯+薬」
「おかず+おかず」は、組み合わせによっては美味しくなるかもしれない。しかし、まずくなる可能性も高い。また、見た目が悪くなることもある。
「ご飯+デザート」は、デザートが小豆系ならば”おはぎ”みたいになるかもしれないが、プリンやゼリーなどはどうかと思う。
さすがに「おかず+デザート」をしている人を見たことはないが、もしかしたら当たり前にやっている可能性もあるかもしれない。
最後の「ご飯+薬」は、粉薬の場合はむせ込む人に対してやむを得ず行うことは理解できるが、人によっては食前薬の錠剤と一緒に食べさせる所業を行う人もいる。とりえあず飲ませればいいと思っているのだろう。
ちなみに「ねこまんま」をするタイミングは、介護者によって異なる。
多くの場合は、最初のうちはそのまま食事介助をするが、利用者の食事のペースが落ちたり、思った以上に時間がかかると「ちょっと味を変えてみようか」と言って「ねこまんま」をする。
しかし、人によっては「ご飯ですよ~」と言って、トレイをテーブルに置いた途端にいきなり「ねこまんま」を躊躇なくする人もいる。そのような人を見ると開いた口がふさがらなくなる。
■ 「ねこまんま」しても介助時間は短縮しない
では、なぜ「ねこまんま」をする介護者がいるのか?
それは味を変えて食欲を増進させたいという意図もあるだろうが、大抵の場合は介護現場の忙しさから「早く終わらせたい」と思うがあまりの行動だと思う。
良く言えば効率化を図るために「ねこまんま」をしているわけだ。
「ねこまんま」をすると、2つのお椀が1つにまとまる、それぞれの食べ物が一体化するため、その分だけ食事介助は早くなると考える。
つまり、「ねこまんま」によって食事介助の時間短縮を期待するのだ。
しかし、「ねこまんま」しても食事介助の時間短縮にはならない。
その理由は簡単だ。
1つ目は「ねこまんま」しても、食事の総量は変わっていないから。
2つ目は、利用者の口の中に入る限度量は変わらないから。
「100gのご飯」と「100gの味噌汁」を一緒にしたところで、計200gであることは変わらない。1つのお茶碗に入ったところで、150gに減るわけでもないし、体積も減るわけではない。
また、どんなに「ねこまんま」にして口当たりや喉越しが滑らかになっても、結局は食べ物はある程度の固さがあるため、一定の咀嚼行為は必要となる。つまり、口の中に食べ物を留める必要はある。
しかし、どんな人でも口の中に食べ物が入る量は限度があり、それを超えると吐き出してしまう。
このように考えると分かると思うが、結局のところ「ねこまんま」したところで、介助者の口へ食べ物を運ぶ回数は、ほとんど変わらないという結論に辿り着く。
つまり、「ねこまんま」は介護業務の効率化にはならないというのが私個人の考えである。
■ 最後に
別に「ねこまんま」に大きなデメリットはない。
先日お伝えした「立ったまま食事介助」のようなリスクはない。
しかし、人間の楽しみの1つである食事のあり方として、いつも「ねこまんま」をされるのは、介助を要する人にとっていかがなものだろう?
また、その食べ物を準備してくれた調理者が見たらどう思うだろう?
丹精込めて作った献立が、すぐに介護者の手によってぐちゃぐちゃに混ぜられる場面を見たらガッカリするのではないか?
何も「ねこまんま」をした食べ物を、それをする介護者に「お前が食べてみてから介助を行いなさい」とまでは言わない。
しかし、現場の忙しさを理由に、食べるという生物としての基本、調理した食材を美味しいと思える楽しみを忘れてはいけないと思うのだ。
「ねこまんま」する前に、せめて「これって美味しいのかな?」くらいは考えていただければ幸いである。
ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。
そして、かわうそ氏へもスペシャル感謝。
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