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介護事業における「実地指導」とは? その概要と注意点を伝えたい

介護事業を営んでいる者が身構えてしまうものの1つに「実地指導」というものがある。介護業界で働いていない人には全く関わりがない話だろうが、意外なことに介護職でもよく分からない人たちは少なくない。

それはある意味で仕方がないことであり、実地指導は事業所や施設の運営に関わることなので、一般の介護職員からすると「何それ?」「聞いたことはあるけれど・・・」という認識だろう。これは介護職のキャリアが長くても介護福祉士という国家資格を持っていても、運営に携わっていなければ知らない人は知らないものだ。

さて、実地指導とは介護事業所や介護施設を対象に行われる、地域の管轄部署による定期点検である。6年に1度の間隔で行われるものとされている。
市町村の人員数や感染予防の背景もあるのだろう、点検項目は簡素化とともに、過去には一日かけて行われていたものが所要時間は短縮されている。(記事最後に補足あり)

実地指導の担当者が事業所を訪れ、法令に定められた書類の整備状況の確認したり、管理者らへのヒアリングをもって事業所の体制を見ていく。そこで問題点があればその場で指導を受ける。その後は先方が定める期日までに改善を進め、改善報告を提出する。(提出後も必要に応じて修正・再提出)

指導内容は様々だ。重要事項説明書などの対外的な書類の記載ミスや単語の統一性といった微細な修正要請もあるが、人員配置などの運営基準への適合性、支援計画の作成や介護サービスの提供状況、そして介護報酬の算定に関わる項目は徹底的に点検される。

また、実地指導を行う側は、管理者や施設長などの立会人が各項目の内容と解釈を理解しているという前提のもと、事前提出及び当日準備した書類の内容を閲覧したり、質疑応答によって事業所の体制が運営基準に適しているかを確認していく。

実地指導では、根拠の提示が非常に重要である。
いくら事業所側が「やっています」と言ったとしても、それを記録した書類や備品などを提示できない場合、それは「やっていない」と見なされる。
また、日常的に介護職員たちがしっかりと記録に残していても、管理者などが法令や運営基準の内容と解釈を理解していないと、その場で自信をもって
「やっています」と提示できないことにもなりかねない。

言い換えれば、実地指導とは日常の積み重ねと、管理者の運営スキルが問われる機会とも言える。

ここで「運営スキル」と言ったのは、実地指導で求められているのは「現場スキル」ではないため、実地指導の担当者からの指導点に対して現場の事情を訴えたとしても意味はないと思っていただきたい。大切なのは「運営スキル」によって整備される法令遵守体制なのだ。

何だか「根拠」とか「法令の理解」とか「運営スキル」だとか、面倒くさいと思われるだろう。まあ、実際は面倒くさいのだ。私もやりたくない。
実地指導をする側だって、おそらく色々な職場に足を運んでは嫌な顔をされるだろうから、面倒なのはお互い様だろう。

とは言え、現在の点検項目はある程度は統一されているし、当日までに準備する書類なども明確である。これは各項目ごとに深掘りして点検されるという意味でもあるが、見方を変えれば不備をしっかり是正する良い機会とも考えられる。もう少しポジティブに考えたいものだ。

実地指導の通知が来たときの「きたか・・・」という何とも言えない心理、当日までのストレス、実地指導中の体力と精神力がガリガリ削られる感覚は、担当した訪問介護の事業所にて2回の実地指導を受けた経験から良くわかる。また、経営視点からも法人内の介護施設で幾度か行われた実地指導をもって、総合的な整備がなかなか進まない状況も理解しているつもりだ。

このような実地指導の経験や指導への改善などから、「当日までにやっておけば良かったこと」「やっておいて良かったこと」「日常で気にかけておくこと」などを、今後は徐々にアウトプットしていこうと思うので、その際はお目通しいただければ幸いである。

【補足】

  • 実地指導の頻度は「6年に1度」と記載したが、あくまで一般的な目安である。実際、「実地指導 頻度」で検索すれば色々な年数が出てくる。介護事業所には指定有効期間というものがあり、それが6年間であるため、その間に1度は実地指導を行うようである。しかし、実際には6年を超えても実地指導が行われていない事業所や施設もある。

  • 地域ごとの指針や事業規模も異なるため、所要時間の明記は控えたが、令和4年に私が受けた訪問介護&有料老人ホームでの実地指導は4時間弱。しかし、終盤に私が担当者へあれこれ質問したので、実質的にはもっと早めに終わったかもしれない。(担当者の方々、ご迷惑おかけしました)

ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。


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