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「熱力学・統計力学 熱をめぐる諸相」講談社 2023年/「相転移・臨界現象とくりこみ群」(共著)丸善出版 2017年

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公開1周年のアクセスログ

    • 熱力学・統計力学 第21章問題解説

      「熱力学・統計力学 熱をめぐる諸相」第21章章末問題の解説。解答例はこちらを参照。 第21章は電磁場、光子気体の統計力学である。20章と同様に、統計力学では必須のテーマである。ただ、統計力学の範疇に収まるものでもないため、書く方としては非常に扱いに困る問題である。 内容的には、三つのポイントがある。 (1) 電磁場のエネルギー密度を扱うこと 通常の熱力学系では熱容量を測定することによって系のエネルギーを捉えているが、電磁場の場合は、放射測定があるため、エネルギーを直接的

      • 相転移・臨界現象とくりこみ群 アウトテイクス

        復刻シリーズ第?弾。 拙著「相転移・臨界現象とくりこみ群」は東工大で行った大学院講義に基づいている。講義は2011年度から2014年度まで4期行った。各期の14回程度を全く同じにするのもつまらないから、2、3回分は年度ごとに異なるテーマを選択した。非平衡統計力学(Brown運動とか)、スピングラス、モンテカルロで詳細つりあいを破る方法、量子スピン系(教科書14章よりもう少し専門的なものも含む)、微分方程式のくりこみ群解析(13章に書いた。全く不十分なので書き加えたいが、スペ

        • 熱力学・統計力学 第20章問題解説

          「熱力学・統計力学 熱をめぐる諸相」第20章章末問題の解説。解答例はこちらを参照。 本章では統計力学の典型的な応用例である格子振動を扱っている。統計力学の教科書であればまず間違いなく議論される例である。情報理論など、他の分野を志向しながら統計力学を勉強する方は少なくないと思うが、そういう方にとってはあまり興味のない内容かもしれない。ただ、それほど難しい問題でもないし、非自明な性質も得られるので読んで損はないと思う。大自由度系で起こる集団励起、集団運動は物理系でなくてもありえ

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          論文紹介 断熱ゲージポテンシャルとKrylov部分空間法

          共同研究者の研究室に滞在して行った研究の第二弾。 ここに書いたように、もうひとつの共同研究で共同研究者にKrylov部分空間法について教わった。非常に汎用的な方法であり、何か他に転用できるのではないかと思った。もちろん、Krylov部分空間法は数値計算でもっとも有名な汎用アルゴリズムの一つであり、さまざまな問題に応用されている。20世紀のトップ10アルゴリズムの一つともなっている。そういうのとは別の意味で使えるのではないかと思った。 Krylov部分空間法とは、状態空間を

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          熱力学・統計力学 第19章問題解説

          「熱力学・統計力学 熱をめぐる諸相」第19章章末問題の解説。解答例はこちらを参照。 本章はスピン系の統計力学の入門編である。統計力学がもっとも活かされて精密な理解が進んでいる分野である。Ising模型は事実上、統計物理学の標準模型となっている。数理的な面白さも相まって、はまる人が多い。 スピン系の問題はいくらでも作れる。面白いテクニックや計算できる題材はたくさんある。以下の解説も長くなってしまった。書いていると語りたいことがいろいろ出てくる。ただ、動機や本来の目的を忘れて

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          熱力学・統計力学 第18章問題解説

          「熱力学・統計力学 熱をめぐる諸相」第18章章末問題の解説。解答例はこちらを参照。 18章は応用編の導入という位置づけである。いくつか、相互作用のある系の扱い方を議論した。物理現象を本格的に記述するというにはほど遠いが、どういう問題や扱い方がありえるか、とっかかりになる議論を扱った。前半と後半で内容が違うので戸惑うかもしれない。講義ノートの時点では章を分けていたが、出版時にいろいろ考えて一つにまとめた。いろいろな方向性やアプローチがあるのだと捉えていただきたい。その代わりと

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          熱力学・統計力学 エネルギー論と運動論

          熱力学とエネルギー論 熱力学を大学であらためて学ぶと、力学や電磁気学とかなり異なる雰囲気にとまどってしまう。Newton方程式(Euler-Lagrange方程式)やMaxwell方程式のような印象的な微分方程式は出てこないし、微分方程式をいじることもまったくないわけではないが、限定的である。 そうなる理由は、熱力学が運動論ではなくエネルギー論に基づく体系であるからである。 運動論とはその名の通り、物体の運動を扱う。その場合、状態の時間発展を問題にする。時間発展の規則は

          熱力学・統計力学 エネルギー論と運動論

          電磁気学基礎(大学1年生向け)

          以前公開していた電磁気学基礎の講義テキストを再公開する。 ・内容は理工系の大学1年生向けのものである。実際に講義で使用した。専門的な内容・技術的に込み入った内容は扱われておらず、物理学専攻者向けのテキストとしては不十分である。 ・できるだけ平易に記述することをこころがけたが、難度は高いと思われる。受講者にとって、前半部分はともかく後半はかなり難しかったようである。 ・各章に「まとめと考察」の節を入れている。電磁気学(物理)とはどういうふうに考えていくものなのかをあれこれ

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          相転移・臨界現象とくりこみ群 正誤表

          「相転移・臨界現象とくりこみ群」の2023年12月時点での正誤表を公開する。 第5刷(2021年8月)以前 • p. 307 (14.62) 式: $${Z = \mathrm{Tr}\,(\cdots) = \cdots \to Z = \mathrm{Tr}\,\exp(\cdots) = \cdots}$$ $${\exp}$$が抜けている • p. 340 最後の段落二つめの文: 「式(C.1) に$${1/\sqrt{N}}$$をつけない代わりに式(C.1)

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          熱力学・統計力学 第III部章末問題の解答例と訂正

          解答例「熱力学・統計力学 熱をめぐる諸相」章末問題の答えと解説。 ファイルは第III部統計力学の応用の章末問題(18章~21章)の解答例である。第I部の解答例はこちら、第II部の解答例はこちらを参照。 各章の解説は後日順次公開していく。 訂正これまでに見つかった修正点を以下にまとめる。 (1) 276ページ、(18.5)式下の重心座標の式 正しい式は(18-1.1)式(287ページ)にある。 (2) 465ページ、[18-2]略解のE Eの第2項が間違い。以下の

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          熱力学・統計力学 統計力学における模型

          物理と模型 物理では模型という語がよく用いられる。模型は現実の現象を捉えるために用いられ、現象と法則体系をつなぐ役割を果たしている。狭い意味では、模型が与えられることは系のハミルトニアン(ラグランジアン)が与えられることであり、量子力学や統計力学など、扱っている系や注目する現象を支配する法則体系に応じて解析がなされる。いくら完成された法則体系があろうとも、それだけでは意味がない。現実の現象と結び付けるには現実の系を適切に捉えた模型化を行う必要がある。そう考えると模型がいかに

          熱力学・統計力学 統計力学における模型

          熱力学・統計力学 第17章問題解答例・解説

          「熱力学・統計力学 熱をめぐる諸相」章末問題の答えと解説。 解答例はこちらを参照。以下は第17章の解説。 本章の議論は他の統計力学の教科書ではほとんど扱われていない。まったく載っていないわけではないが、せいぜい確率分布の対数の平均がエントロピーであることに言及されているだけで、その意味まで議論していることはほとんどない。例えば、「久保演習」では「エントロピーの一般的な定義」という節があって、確率分布を用いたエントロピーの式が書いてあるが、「この定義が正しくエントロピーを与

          熱力学・統計力学 第17章問題解答例・解説

          量子力学第三(完全版)

          某所に置いていたファイルが消えてしまったのでここで暫定的に再公開する。量子力学第三の講義ノートである。 以前の公開版には章末問題の答えがついていなかったが、今回のは答えがついた完全版である。 扱っている内容は、摂動論・多体系・量子情報と量子計算である。くわしくはまえがきや序章をごらんいただきたい。 内容について、責任はもてないのでご了承いただきたい。いくつか気づいた間違いを修正したがまだまだあると思われる。今見ると、根本的に書き直した方がよいと思う部分もあるが、恥を忍ん

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          熱力学・統計力学 第16章問題解答例・解説

          「熱力学・統計力学 熱をめぐる諸相」章末問題の答えと解説。 解答例はこちらを参照。以下は第16章の解説。 本章は古典系の場合の扱い方を議論している。講義を準備しているときはあまり面白くないと思っていたのだが、講義したらすごく楽しかったのを覚えている。量子と古典を比べるといろいろなことがわかって面白い。高温で量子効果が効かないのは経験的に知っているが、きちんと議論する必要がある。 短い章のわりには、節の数が多い。Maxwell-Boltzmann分布については、本書で議論

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          論文紹介 演算子のスピードリミット

          ちょっと趣向を変えて、出版された研究論文にまつわるあれこれを書く。以前自前のWebページでやっていたのだが、なくなってしまったのでここに書くことにした。ここに書くネタが尽きたからではない(たぶん)。 原則としては研究論文を見てもらえればうれしいが、だいたいがマニアックな計算であり、本質を理解してもらえるのは人類全体からみればごくごく一部に限られてしまう。以下の説明は専門用語を使いまくっているが、研究内容の詳細を伝えるのが目的ではないので、適当に読み飛ばしていただきたい。

          論文紹介 演算子のスピードリミット