見出し画像

未経験で人事になりたいあなたへ 004/100 青柳 伸子さん

未経験で人事になりたい方向けに、人事コンサルタントの多田が100人の人事にインタビューをする企画「未経験で人事になりたいあなたへ」

青柳さんとは、昨年SNSを通じてオンラインでお会いさせていただき、一度ご自宅に遊びに行かせてもらった仲です。僕が仕事で困っているときに気軽に相談を乗ってくださる、頼りになるパートナーです!(写真にも写っていますが、ご自宅には素敵なハープが二台も・・・)

スクリーンショット 2020-12-23 18.34.09

経歴

ー 最初はどのようなキャリアからスタートしたんですか?

短大を出て、新卒で日本ビクターに入社しました。国内機器営業本部という、ステレオ・TV・ビデオなどの営業所を統括する部門の事務職からキャリアをスタートさせました。こちらの会社は、ハープの海外演奏旅行に行くために2年ほどで退職しました。
ハープの先生や、会計事務所でアルバイトをしていたのですが、株式会社システムハウスミルキーウェイ(現 弥生株式会社)の創業者に誘われ、事務職として入社しました。
在籍期間18年間の中で、人事だけではなく、営業・カスタマーサポート・サプライチェーン・総務・経理など、幅広く仕事を経験させていただきました。

ー こちらの会社で人事の仕事を始めたきっかけは何だったんですか?

入社10年目にアメリカ企業に買収をされたタイミングで、当時の上司から「このまま一生便利屋さんでいくの?この会社にずっといるならいいけど、外資に買収されると先が不安定だよ」と声を掛けていただき、自分の今後のキャリアを考え始めました。
人事をやろうと思った一番のきっかけは、グロービスマネジメントスクールに通い始めて、まず一番とっつきやすかった「組織行動学」を受講したことでした。
ケーススタディとして、どんなにいい製品、社長、戦略があっても、それを実行する人・組織がないとダメだ、といろんな会社の失敗事例を学び、「やはり会社経営にとって重要なことは人だ」と思うようになりました。
当時働いていた会社はまだまだベンチャーで、友達感覚、学生のサークルに近いような雰囲気がありましたが、新しい人が入社してくると、自分の仕事がなくなっていくかもしれない、また外資なのでリストラがあるかもしれない・・・と、自分が生き残っていく術を見つけようと考え、「人事」をコアにキャリアを積んでいこうと考え、自ら手をあげて、当日新設された人事部に異動しました。
人事部には計4年間在籍し、給与計算、勤怠管理、労務、採用、教育・・・人事の実務はほぼ全般的にやらせていただきました。

ー なるほど、こちらの会社で人事の基礎が出来上がっていったんですね。その次はどのようなキャリアだったのですか?

次は、エルメスジャポンに転職をしました。知り合いから紹介してもらったエージェントに、エルメスジャポンを紹介してもらい、最初は記念受験くらいのつもりだったのですが、ご縁があったため入社をすることにしました。
ちなみに、入社後、当時の社長に「なぜ、私だったのか?」と聞いたら、
「話が面白かったのと他業界出身だから何か新しいものを持ってきてくれると思った」とのことでした。

ー エルメスジャポンではどのような仕事をしたのですか?

最初のミッションは、銀座の路面店のスタッフ100名と店長の採用でした。入社してすぐに人事部の本部長が辞めてしまったので、自分でやらざるを得ませんでした。当時の社長が「組織・制度を一新させたい」と考えていたのもあって、給与・社内組織・教育・キャリアプランまで色々変えました。結局エルメスジャポンでは、約8年もの間、いわゆるHRBPとして、社長のやりたいことを形にするという仕事をしてきました。

ー エルメスジャポンの後はどのようなキャリアを歩まれたのですか?

ボッテガヴェネタに3年間、その後フォリフォリジャパンに5年間在籍し、ここで定年を迎えました。その後は、独立して自分のオフィスを構えました。そのタイミングで、人の縁もあり、業務委託契約でモンクレールジャパンで2年間働くことになりました。モンクレールでは、人事マネージャーの採用や制度設計に取り組みました。

ー 20年間くらいラグジュアリーリテールをなさっていたということになりますね。

はい。ITベンチャーで約20年、ラグジュアリーリテールで約20年という感じです。モンクレールでの契約満了後、株式会社サイダスというHR techというタレントマネジメントのシステムを作成している会社に出会いました。サイダスでは、経営者や人事向けに、システム導入前後のコンサルティングを行っていました。その他にも、経営者向けの研修、採用、新卒の教育も行ってました。

現在の仕事内容

現在は在宅で様々な仕事をしてます。
IT業界での経験を活かしてeラーニングシステムのカスタマーサポートやハープを教えたりしています。他にも、人事の方から相談を受けたり、外部の人事にしか聞けない様な相談を受けたりします。具体的には、「早期退職を考えているけど、自分にとって損か得かわからない」とか「競業への転職は禁止とあるが、どれくらいの縛りがあるのだろうか」などです。

経験してきた人事の仕事

100人インタビュー.002

上記の4項目以外にも、
・人件費の予算と人員数の管理
・給与計算
・勤怠管理
・人材情報の管理(スキルや経験のデータ化)、タレントマネジメント
の経験があります。
人を育てることが好きなので、中でも教育・研修といった分野が気に入っています。

人事の仕事のポジティブな面

・人の成長が見られる
人の成長を見ることができて、人生に関わることができるのは、人事だけだと思いますし、人事の醍醐味だと思います。リテールとして現場を回った際に、社員がお客様と話をしている姿を見たり、お客様から褒められたという話を聞いたりするのは、やっぱり嬉しいです。お店に行くといまだに覚えてくれていて、「青柳さんですよね、私〇〇年に採用してもらったものです!」みたいに声をかけてもらえたりもします。他の職業ではここまで現場の人に覚えてもらえないのではないかと思います。
他にも、社員が長期休暇や産休から復帰するのも嬉しいです。

・経営者に近いところで働くことができる
HRBP(Human Resource Business Partner)の仕事はものすごく面白いです。自分が打った施策や制度によって、人事の面から会社をドライブすることができます。会社のヒトに関する戦略を考え、実行しているという感覚は病みつきになります。人事は、事務的な仕事だけだと楽しくないかもしれませんが、ここまで行くと、「楽しいな」と思えるようになると思います。

人事の仕事のネガティブな面

・人の人生を左右してしまう
採用するかしないかに始まり、異動や配置転換の話、退職勧奨など、本人にとっては歓迎されない話をしなければならない機会があります。

・メンタルの維持が難しい
メンタルにトラブルをかかえてしまった人のケアも人事の仕事になります。自分自身をトレーニングしておかないと、引きずられて鬱になってしまうこともあります。長期休職をされて、そのまま退職される人を見るのは辛いです。

・孤独になる
まず、会社の飲み会にいけなくなります。飲み会は色んな情報が飛び交う場です。お酒が入って、「今度の昇給はどれくらいなの?」とか「〇〇が昇格するって聞いたんだけど、、」といった話になることもあります。そういった話を聞いて、表情を変えることは許されません。そういった意味でも孤独になります。

人事プロフェッショナルに必要な要素

・鳥の目と虫の目
細かいところにこだわらなければならない一方で、全体を把握している必要があります。そういった意味でのバランス感覚は必要です。

・コミュニケーション能力
誰が聞いても、同じ意味に解釈されるステートメントを発信する必要があります。そのため、高い日本語能力が求められます。一度出した文書に訂正を入れるということは、信頼を失うことに繋がります。特に、人の人生を扱う人事としてはやってはならないことです。

・数字に強いこと
まず、売上が上がっていることと利益が増えていることが違うというのが肌感でわかる必要があります。例えば、「みんなを一律10%昇給させるとしたら、どれだけ売上をあげないといけないのか」という数字計算ができないと、「来期これだけ利益が出るのであれば、そのうちの何%を昇給の原資にください」という交渉ができなくなります。

・経営者的な目線を持つこと
この目線を持つと、人事以外の仕事にも興味を持つ様になります。これからはジョブ型人事を取り入れる企業が増えると思いますが、どの仕事のジョブ・ディスクリプションも書ける必要があると思います。そうなると、社内のありとあらゆる業務を薄くでも、知っている必要があります。現場についてよく知り、社内に自分のネットワークを張っておくことが重要です。
他にも、事業のポテンシャルを見抜く力もあるといいと思います。例えば、半年で事業を畳むとした場合の、既存社員の異動プランを予測することもあります。この目線があれば、事業の将来性を見抜いて、ジョブディスクリプションの確認、各社員のスキルの確認、個人面談、社内の他のポジションの提示といったところまでできるようになります。

人事キャリアを目指す方にアドバイス

人事の入り口として入り易いのは、採用だと思います。
採用は、1番人事くさくて、1番人の人生を左右する仕事だと思っています。
「この人採りたいな」と思ってオファーしても、断られてがっかりすることもあります。やっとの思いで入社してくれた人が、全然活躍できていなくて、「なんであの人採ったの?」と言われることもあります。採用した人がものすごく活躍する可能性はそんなに高くないですし、優秀な人ほど2年程で辞めたりもします。そもそも人の成長曲線は様々で、同期の中で出遅れていた人が、突然伸びたりすると、「この人を採用してよかったな」と思えます。そういった経験をしながら、「人事って大変だけど、面白いな」と思って欲しいです。
採用という仕事は、「どういう人を採りたいか?」「どんな人が優秀なのか?」と現場に聞いて周る過程で、社内の色んな人に会うことができます。そういった点からも、採用という仕事は人事の入り口として、いいと思います。

同時に、給与計算の仕組み、所得税・社会保険についてなど、いわゆるアドミ業務と言われる管理事務に関する勉強はしておくことをオススメします。私も人事の仕事を始めた時は、給与計算実務の講習を受けました。アドミ業務に関する自信は、人事の基礎になっています。
例えば、「なんで私だけ年末調整で税金が返ってこないのですか?」という質問にも即答できないと信用されませんし、「給与計算は外注しているので、私はわかりません」なんて返事は決してしてはいけません。

評価は基本的に年1回、多くても2回なので、評価に伴う処遇・昇給・昇格も年に数回しか仕事はありません。一方で、人が辞めれば採用しなければなりませんし、新卒採用は年間を通してスケジュールを組むので、採用に関しては、一年中仕事があります。

人を採用すると、
その人をどう育てていくかに興味を持ちますし、
人が育つと、
その人をどう配置していくのかという組織論に繋がっていきます。
それが処遇・昇給・昇格に繋がり、最終的には、予算に繋がっていきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?