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人事のためのキャリアコンサル_001:採用のスペシャリストから、人事ジェネラリストにキャリアチェンジしたい

「人事のためのキャリアコンサル」とは、"人事"プロフェッショナルの方々のキャリア支援を目的に、架空の人事経験者のプロフィールを元に、「もし私だったらこんなアドバイスをする」をまとめたコンテンツです。


キャリアサマリ:

  • 33歳、男性

  • 大学卒、在学中に1年間イギリスに留学

  • 日本語ネイティブ、英語ビジネスクラス

  • 新卒で日系総合商社(4年)
    → 外資系人材紹介会社(2年)
    → 外資系人材紹介会社(2年)
    → ITシステム会社での採用担当(現職、3年目)

  • 現在年収850万円、希望年収850万円以上

課題:

  • 人事としてキャリアアップをしていきたいが、現職では上が詰まっているため採用以外の業務の幅を広げていくことや、昇格をするまでかなり時間がかかる。

  • キャリアチェンジをするのであれば、今の年齢がギリギリだと考えているが、今からスペシャリスト(採用)→ジェネラリストにキャリアチェンジをするのは可能なのか?

  • 結婚をしており、家のローンも組んでいるため、現職より年収を下げるのが難しい。年収をキープしたまま、キャリアチェンジをすることは可能なのか?

キャリアアドバイス:

人事としてキャリアアップをしていきたいが、現職では上が詰まっているため採用以外の業務の幅を広げていくことや、昇格をするまでかなり時間がかかる。

まず、こちらの悩みは、転職を検討する理由として多くの人事が抱えています。特に、従業員数300人以下の企業に在籍している人事の方が悩んでいることが多い所感です。

従業員数300人以下の企業ですと人事部の人数が10名以下の企業が大半を占めている、という調査結果があります。

企業規模300〜500人未満の本社人事人数
 0人 4%
 1人 4%
 2〜5名 36%
 6〜10名 32%

 11〜20名 15%
 21〜30名 5%
 31〜50名 2%

パーソル総合研究所「人事部大研究」の情報を元に作成

その中でも、離職率の高くない企業であれば、いわゆる「上が詰まっている」状態が長く続いており、現在任されている業務以外に、人事の職域を広げていったり、役職を上げていくのが難しい環境でしょう。そのため、自分のキャリアの幅を広げていくために、採用スペシャリストから人事ジェネラリストへの転職を検討される方とお会いすることが非常に多いです。

しかし、その上で、「転職活動をしながらでも、現職で少しでも採用以外の業務にチャレンジをしてください」と、私はアドバイスをしています。

中途採用は「経験者採用」と呼ばれ、基本的には「未経験」の職種の転職は難易度が上がります。未経験での転職に比べたら、現職の上司・同僚の仕事を手伝う形で、今の仕事以外の業務に手を出すことの方が難易度は低いです。

  • 新入社員研修や新任役職者研修などの会場設営や当日運営

  • 入退社手続きなどのオペレーション業務の一部

  • 期末の評価・異動のタイミングで発生する情報を取りまとめる作業

  • 新入社員面談や退職者面談など、定期/不定期に発生する面談業務

  • 従業員からの問い合わせに対する一次対応

など、人事部の中には任せてもらえる可能性のある業務はたくさんあります。

面接の中で初対面の人に対して全くの未経験業務を「できます!」とプレゼンテーションするよりも、今まで一緒に仕事をして信頼を獲得できている上司・同僚から一部の業務を任せてもらう方が、未経験業務にチャレンジをする手法としてはおすすめです。

その過程で、現職でキャリアチェンジが実現できればそれが一番良いでしょうし、現職で実現できずとも、転職活動をするにあたって、職務経歴書に記載することができ、面接でも多少なりとも経験をしている方がアピールに説得性を持たせることができます。

キャリアチェンジをするのであれば、今の年齢がギリギリだと考えているが、今からスペシャリスト(採用)→ジェネラリストにキャリアチェンジをするのは可能なのか?

私の経験として、下は24歳、上は65歳の「人事」の方のキャリアを伺ってきました。その上で、「35歳までの経験で、その後のキャリアの方向性が決まっている」方が多かったです。

つまり、採用業務で言えば、35歳までに「採用」業務の経験をしてきた40〜50歳代の方の多くは「採用マネージャー/責任者」をやっており、逆に言えば、40歳まで採用業務に特化したキャリアを積んでこられた方の場合、そこから人事ジェネラリストとしてキャリアの幅を広げていくことは、非常に難易度が高いように思います。

そのため、この方の場合(33歳、採用業務の経験のみ)、ジェネラリストへのキャリアチェンジは、大いに可能性があると考えます。

ただし、35歳以降でキャリアチェンジをされている方も、もちろんお会いしています。

  • 決裁者(役員/事業責任者/人事責任者)とコネクションがある

  • 人事責任者が候補者と近しい経歴があり、キャリアチェンジに対して理解がある

  • 人事部内でのリファーラル採用

  • 事業の特性上、「採用」が業績と大きく連動するため、特に採用に強い人事マネージャーを求めている

などの要因でキャリアチェンジを成功させている方々もいるため、「35歳以上は人事のキャリアチェンジはできない」というわけではありません。

結婚をしており、家のローンも組んでいるため、現職より年収を下げるのが難しい。年収をキープしたまま、キャリアチェンジをすることは可能なのか?

ご結婚をされていたり、お子様がいる候補者様からは、特に「給与」に関するご相談を多くいただきます。

住宅ローン、教育費、保険料など、家計の固定費が上がってくるため、未経験でのキャリアチェンジとはいえ、年収を下げるわけにはいかない。

結論から言えば「可能」です。

人事ジェネラリスト(マネジメント業務なし、人事領域の複数業務を担当)のポジションを検索していただくと、大体は500 - 800万円くらいの求人が多く、この方の希望年収(850万円以上)は下回ります。

そのため、人事ジェネラリストの求人だけに拘らず、今までの経験を生かして、採用業務からキャリアの幅を広げていける可能性の高い求人・会社を選んでいくことをお勧めします。ただし、現職の転職理由である「上が詰まっている(=キャリアアップやキャリアの幅を広げることが難しい環境)」が、次の転職先でも起こり得ないかどうかを確認した上で、転職を決めた方が良いです。

その観点から、私は、以下のアドバイスをします。

  1. まずは、すぐに転職を決めず、上述の通り、現職で「採用」以外の業務にチャレンジをし、少しでも「人事ジェネラリスト」の経験を積む

  2. LinkedInや職務経歴書などに、採用以外の業務経験を記載する
    ※ 全く経験がないにも関わらず記載をすることはNGですが、多少なりとも経験があるのであればその全てを記載をしておいた方が、書類選考が通過しやすくなります

  3. 自身の希望年収以上の給与水準の求人、かつ、以下のどれかに該当する求人を選ぶ

    1. 「HR Generalist」等のタイトルで、特に採用業務を求めらている求人

    2. 「Recruiter」「Talent Acquisition」等のタイトルで、求人票の「職務内容」に、採用業務+αの業務が記載されている求人

    3. 現在よりも従業員規模が大きい/人事部員が多い企業で、人事部内での異動実績がある会社の「採用担当」の求人

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