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未経験で人事になりたいあなたへ 007/100 東城 朋さん

未経験で人事になりたい方向けに、人事コンサルタントの多田が100人の人事にインタビューをする企画「未経験で人事になりたいあなたへ」

東城さんとは、最初はSNSを通じて出会いました!人事のプロフェッショナルである以前に、人への向き合い方が素晴らしい方です。(ちなみに、娘ちゃん激かわ)

ちなみに、この前インタビューをした秦野さんを紹介してくれたのは東城さん。感謝。

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経歴

ー 一番最初のキャリアから伺ってもいいですか?

博士課程ということで新卒で受け入れてくれる会社がなかったこともあり、第二新卒の様な形でGREEに入社しました。最初の配属から人事でした。私は元々、教育心理といった分野に関心があり、学生時代から人が成長する環境づくりについて学習していて、それをビジネスで実践したいと思って就職活動をしていました。

ー GREEではどんな仕事をしていたんですか?

GREEではほぼ6ヶ月ごとにアサインメントが変わるという体験をしました。
一番最初は、育成グループで、新卒研修・中途入社者研修・マネジメント研修など、階層別のトレーニングを社内もしくは外部のトレーニング会社と合同で企画して提供する仕事をしていました。
次は、英語を話せたこともあり、海外新卒の採用を担当しました。エンジニア職をメインに、中国・韓国・インド・シンガポール・アメリカと、国を選別するところから採用方法の企画、そして実際に説明会や面接を現地で実施しオファーを出すところまでやらせて頂きました。
その次は、ディレクター・クリエイター職の中途採用担当に移りました。当時まだGREEは拡大フェーズであったこともあり、毎月100人入社するくらいのボリュームで採用活動をしていましたので、毎日百通を優に超える数のレジュメをスクリーニング(書類選考)して、部門と相談し各候補者の面接フローを設定し、オファーを出し、口説くということをひたすら繰り返していました。
この仕事がきっかけとなって、ディレクターやクリエイターが所属するメディアビジネス本部という部門の担当人事チームに配属されました。仕事内容としては、今で言うHRBP、HRジェネラリストのジュニア職の様な感じで多岐に渡ります。部門長と一緒に、新卒入社者のフォローアップ、リーダー育成の為の研修、総会なども含めエンゲージメント政策、人事本部の施策の担当本部への落とし込みサポートなど様々です。この仕事を通して、事業に近くでバリューを発揮する、部門付き人事という仕事の面白さに気がついたことが、転職に繋がりました。GREEを卒業し、CRITEO(クリテオ)という会社に転職しました。

ー CRITEOではどんなことをしていたんですか?

CRITEOはフランス系のアドテクノロジーの会社で、日本と韓国のHRBPという形で入社しました。入社当時は日本もまだ50名程度の規模だったので、日本と韓国両方を担当し、採用・トレーニング・労務など人事業務全般をやっていました。このときに報酬まわりも、実務を通して勉強することとなりました。CRITEOに在籍中に子供が生まれ、4ヶ月程度産休・育休を取りました。お休みを頂くころにはCRITEOの日韓チームも併せて150名程度の規模になっていて、私が産休に入ったこともあり、体制を変更し日本と韓国にそれぞれHRBPを置くことになりました。ですので復帰後は私は新しい役割を頂き、人材開発・国をまたぐ人事異動などの仕組みをアジア全体で企画・管理するお仕事をさせてもらいました。具体的には、人事異動や人材開発のポリシーの作成、各国のカントリーマネージャー向けのリーダーシップ・トレーニングの企画運用といった内容です。
HRBPに戻りたいと考えていましたが、体制強化と共に各国のHRBPのポジションが固まっていたので、再度転職という選択をしました。

ー 次のキャリアについても聞かせてもらえますか?

このとき初めてエージェント経由で、ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下JnJ)に転職しました。JnJは従来、製薬・医療機器など、それぞれのビジネスラインで4つのカンパニーに分かれていて、それぞれのカンパニーに人事組織がありました。私が入社した当時のJnJのグローバル的な動きとして、シェアード・サービス・モデルへの移行を進めているところでした。そのため、HRBPは一つの同じ組織に所属し、シェアードサービスのプロジェクトを遂行しつつ、カンパニーを支えるHRBPの二つの帽子を被るような立ち位置でした。私はシェアードの役割として人材開発、HRBPの役割として製薬事業(ヤンセン・ファーマ)のサポートの2つを担当させて頂きました。人材開発としては、カンパニーをまたいだ人材異動やサクセッションプランニング(後継者育成計画)を動かすための企画、他にはグループ全社規模でのメンタリングプログラムの企画・運用等を担当し、HRBPとしては複数部門を担当し人材登用、育成計画を含め、人事周りの業務が滞りなく進むように各人事部署と連携しながら全般的なサポートをしていました。JnJの素晴らしい環境にも後ろ髪ひかれつつも、ちょうどテスラから声がかかり移ることに決めました。

ー テスラではどんなポジションについたんですか?

日本のHR Headです。私は個人的に、一つの法人の事業を左右する様な仕事を任せて頂けるのはHRBPの本望と思っていました。テスラで働いていた元上司から、「日本のHR Headをやらないか?」声をかけていただいた時に、テスラという未来を創造する会社の、一つの市場を任されるという機会がいかに稀有かを私なりに理解し、転職を決めました。入社時は土台がない状態の中、人事規則・制度の整備、働き方の管理・改善から取り組み足元を固め、次第にチームメンバーを採用し、戦略的な各部門への支援、トレーニングの企画、エンゲージメント施策、採用スキームの構築へと順を追って取り組んでいきました。給与のレビュー、インセンティブの設計などなど、小さな組織でしたので本当に人事全般を見回す役回りに携わらせて頂きました。これまで各社でやらせて頂いた仕事が、集大成として役に立ちました。テスラではまさに全エネルギーを集中し、日本の事業を支えること、そして世の中のリーダーとして過去にない挑戦を続けるテスラのミッションを進めることだけを考え、必死に業務に取り組みました。
ここまでの間は自分の経験値を伸ばすために兎に角スピードを止めずに成長の場を選んで進んできました。テスラの各組織の体制が固まってきた頃に、始めて足を止め自分のライフフェーズなども含め俯瞰して考える機会をもちました。その時に改めて私自身の一人の人間としてのパッションを見つめなおし、人材開発や組織開発をやりたいという結論になり、ご縁もあり現職のLVMHに移ることにしました。

現在の仕事内容

テスラの日本法人の社長、CRITEO時代の上司とのご縁で、実際に移る2年くらい前から、LVMHとは繋がりがありました。そのご縁を通じて、現在はLVMH Cosmeticsという法人に所属し、複数のブランド・法人を横串する形で、人材・組織開発を担当する新しいポジションに就かせて頂いています。 

経験してきた人事の仕事

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外資系の企業に在籍していた期間が長く、制度設計に関しては、GREEで若干携わっていた程度です。

人事の仕事のポジティブな面

・経営に物凄い近い
採用でも労務でも会社のヒト・モノ・カネをどの様に効果的に事業運営の中で活かしていくのかということに物凄く近いです。人材を原資と考えた時に、その人がAからBに大きく化け、事業にインパクトを与えたりします。そういったところが非常に面白い仕事だと思います。まさに「人財」の考え方だと思います。

・人の変化を目の当たりにする
一人の人が感動やインスピレーションを得ることで、その方のパフォーマンスが何倍にも変化し、組織に与えるその人の影響力が大きく変わります。いちスタッフだった方のポテンシャルを見出して育てていくことで、その方が組織をリードしていくようになったりします。これは前職で実際にあったことで、セールスマンとして非常に優秀だった方で、チームを管理した経験がない方がいたのですが、その方に対して一からトレーニング、コーチング、メンタリングなどを提供し、一緒に組織管理のフレームワークを作成して、新しい店舗を任せたことがありました。最近その方からお電話を頂いて、日本で一番売る店舗になりましたと連絡をもらいました。簡単なことばかりでは在りませんでしたが、共に伴走し課題を解決し、その方自身の素質もあり、管理職としてのスキルがどんどん伸びていくのを感じました。そういった人の成長に触ることができるというのが一番面白いです。1つの会話から、仕事に対する熱意や態度が変わるということもあるので、仕事の中である小さな関わりも含め、組織に所属する人材が動く原動力を共に見つけていくことが、人事の仕事の最大の魅力のひとつだと思います。

人事の仕事のネガティブな面

・人の退職を見送るのは、やっぱり辛い
人事も人なので、退職勧奨などをする時はしんどい思いをします。採用する時は、その人の力や組織への適性を判断して採用しています。その人が活躍しきれなかった時は、半分自分の力不足かと思うこともあります。そうとは言っても、人事も他の部署と同様、会社の成長のために存在する役割ですし、会社の成長によって社員の方が職を維持し、その中で自己成長をする、というのがあるべき形だと思います。会社の健全な成長が大前提であり、それが人事のミッションなので、会社の成長のために、ケースによっては、人の雇用という形で割り切りの必要が出てくることもあり、それがネガティブというか人としてしんどいと思う時です。

・意外とめんどくさい
物理的なサイエンスとは違って、人のサイエンスなので、「これをやればこうなる」と言う正解がありません。1つの物事を起こすにしても、辛抱強さや良い意味での政治力も必要となります。以前、「政治を嫌うな」と言われたことがあります。人間は社会的な生き物なのであり、やはり政治は必要ですし、人事は社内政治の渦中にいるなと感じることもあります。私の性格が単純な所もあるかもしれませんが、日々、めんどくさいと感じる遠回りなことは多々あると思います。

人事プロフェッショナルに必要な要素

・ビジネスに対する熱意と理解
特にHRBPに興味があるような、自分がいる会社に対して事業的に貢献したい方には、ビジネスに対する熱意と理解が不可欠だと思います。ビジネス的な視点から出発しないと、何のために存在しているかわからないシステムやお金を無駄に使う人事プロセスが生まれてしまいます。人事も事業の一部であるという意識が必要だと思います。

・ヒューマンサイエンスの知識
人の行動が変わったり、人が自発的に動いたり、人が複数集まった時に組織的に何が起こるのかといったことを考えるにあたって、行動科学の知識は役に立つと思います。例えば、人事制度やポリシーを作るにしても、全てを禁止するよりかは、信頼をベースに社員1人1人が善悪の判断をしてくれる様なナッジを効かせた文章を取り入れる方が、おまわりさんのように取り締まり罰則をあたえるような規則よりも、最終的に効率がいいです。どういう仕組みにするか、どういう言葉遣いにするかというところにもヒューマンサイエンスを応用することができます。他にも、何か上手くいっていないチームがあった時に、こうした知識を持っていると、「何がうまく行ってない、何が悪いのか」という仮説が立てやすくなると思います。積み重ねた経験則も大事ですが、時代も変わりますし、よりバランス良い仮説が立つことで、効果的に軌道修正できます。私は人事の仕事の中に、人と人との依存や人と組織の依存や距離感をいかに健全に直していくか、という大きな役割を感じることがあります。人の依存のメカニズムや依存がどういう行動に表れるか、という感性が大事になります。
サイエンスの話ではないですが、こうした距離感について話が及ぶ面白い本がありますので、ご紹介しておきます。(LVMHでも一部のリーダーシップ研修のデザインに取り入れられています。)

・冷静と情熱の間?なバランス感
人なので温かみは必要・大事である一方で、事業に関する意思決定をしなければならない時があります。どっちかに偏ると何かしらの歪みが起こります。

人事キャリアを目指す方にアドバイス

1番のヒントは皆さんの目の前にあると思います。
事業の仕組みや現状を客観的に理解することが、その組織においてヒトがどういう行動をしたらその事業が効果的に回るのか、という問に対する大事なヒントになります。同じ人事施策が全ての組織には通用しません。文脈が大事です。
サラリーマンをやっている限りは、今の職種が何であっても、その立場からわかる情報は常にあるはずで、今の立場の中で徹底的に考えているか?が大事だと思います。

因みに個人的には、日本では今はまだオールドスタイルの人事から、ビジネスに寄り添った戦略的な人事への過渡期だと思っています。

新しい試みも含めプロアクティブな貢献をしたいのであれば、HRBPの様な戦略を立ていく仕事にやりがいを感じると思いますし、人事オペレーションを管理する仕事も、ビジネスとの繋がりを意識してコストや手段を効率化するといった貢献の仕方があります。
全ての人事の役割が、ビジネスに貢献する人事という風にシフトしていくこの移行期間において、日本で人事が活躍する方法に正解はありません。ベンチャーなんかにも人事畑ではない方が人事を管轄し、逆に物凄く面白いことをやっている人事の実践例がありますよね!

ですから一番シンプルなアドバイスとしては、事業を誠実に見つめて、人や組織に対して何をやったらその会社が一番成功するのか真剣に考えてみられると良いと思います。それを自分の今いる環境でやってみることが出来れば、面接での物凄いアピールポイントになります。例えば、営業本部にいるとして、営業本部のチーム作りのために何かやってみたらよいですよね。もし、人事がお客様となるような人事業務のアウトソーシング系の会社にいるのであれば、お客様の悩みに対して、自分で仮説を立て、サービスの提供を最適な形にしてみることから始められますね。

採用・育成・組織開発、人事には様々な領域がありますが、全てツールでしかないということを理解しておいた方がいいと思います。事業や所属する組織に対して、何のカードを出し貢献していくのか?という視点がないと、どの仕事を経験しても、高い貢献はできないと思います。課題の定義には時間がかかるかもしれませんが、それがうまくできた時に初めて、「それを採用で解決したいのか?」「育成で解決したいのか?」といったように、自分が一番初めに手を付けるべき人事領域が見えてくると思います。

最後に

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