未経験で人事になりたいあなたへ 005/100 秦野 優子さん
未経験で人事になりたい方向けに、人事コンサルタントの多田が100人の人事にインタビューをする企画「未経験で人事になりたいあなたへ」
秦野さんとは前職の時に知人に紹介してもらい、友人になった仲。それから、一緒に仕事をする機会もあったり、公私共に仲良くさせてもらう仲に。
今でこそ「採用広報」という仕事がメジャーになりつつありますが、「採用」も「広報」も(そして営業も)仕事として経験してきた秦野さんの話は、かなりユニークで面白かったです!
経歴
ー 最初に経歴から伺ってもいいですか?
2009年に新卒で株式会社リクルートに入社して、ホットペッパーのネット広告営業からキャリアをスタートしました。当時は紙媒体からweb媒体に移行していく段階で、私はネット版のホットペッパーを推進していく仕事をしていました。1年半くらい経った時、「人事をやりたい」と思っていた時に、未経験からでも人事を募集していたGREEという会社に出会い、転職しました。
ー 「人事」に興味を持ったきっかけってなんですか?
リクルートでの1年目は、居酒屋など個別の店舗に飛び込み営業をしていて、新人で初めて全国表彰もしていただきました。2年目には燃え尽きてしまって、「1年目は何が楽しかったのだろうか?」と振り返りました。
リクルートは、チームで営業目標を達成すると助成金が貰えるので、3ヶ月に1回グループで旅行に行っていました。ただ達成旅行に行ったんじゃつまらないということで、メンバーが「また仕事頑張ろう」と思える旅行にするために、新卒メンバーや先輩と、BBQ・料理対決・出し物などの旅行企画を練ったりしていました。みんなで一緒になって企画し、それを実行したときに一緒に働く仲間が喜んでくれた時間は、チームの絆を感じられる時間でもあって、とても楽しかったということに気づきました。
そこから、みんなが仕事を楽しんでくれたり、「この組織いいな」って思ってもらえるような仕事をしたいと思うようになったのがきっかけです。なので、人事の中でも、人事企画/組織づくりをやりたいと思っていました。
ー GREEではどんなことをしていたんですか?
GREEには3年半在籍していました。仕事内容としては、国内の新卒・中途・地方採用、海外の中途採用をしていました。当時GREEは世界11拠点に展開していて、ゲームが作れるエンジニアなどのスタッフがいるゲームスタジオを、アジアに作ろうということになりました。中でも主力支店となる中国・韓国に駐在しての現地採用もしました。
ー GREEから転職した理由についても伺っていいですか?
きっかけは2013年でした。当時、私がGREEに入社した時と比べて、社員数はグローバルで約20倍、人事と名のつく社員の人数も数十倍に増えていました。
GREEで急激に社員が増えていくのを見ていて、「“いい人“を採用できれば、自然といい組織になるのだ」ということに気がつきました。「採用」は人事の中でも明るい仕事だという点で、自分の性に合っていると思っていたのと、自分がやりたいと思っていた「いいチーム/働きやすい組織作り」は、採用が根幹になっているという所から、採用の仕事の醍醐味と、やりがい、その価値を確信するようになりました。
GREEが、採用を一旦緩やかにしていく方針に変わったこともあり、「自分の性に合った採用の仕事少なくなってしまうなら…」と思い、リクルートキャリアへ転職しました。
ー リクルートキャリアを選ばれたのはなぜですか?
一般的には採用と広報は別部署であることがほとんどですが、リクルートキャリアは、採用と広報が一体になった部を組閣していたというのが決め手でした。というのも、GREEで採用の仕事をしていた時に、某テレビ番組でGREEが取り上げられたことがあったんです。次の出勤日には、いつもは数件しかなかったホームページ経由の自主応募が300件以上も来ていて、マスメディアの力に感動しました。もちろん、それが有効な応募だったかというと一概には言えないのですが、沢山の採用をする会社の採用担当にとって、「応募者数を集める」ことはそれだけでもKPIになりうるような重要な指標です。採用担当は、応募者の数を集めること自体が、ある時は目的になってしまうほど、重要でもありました。この経験から、採用と広報を掛け合わせることで、広報の力で候補者を集めることができれば、採用担当が本来やるべき、候補者に最適な採用ストーリーを作ったり候補者に向き合う仕事に注力できるのではないかと考えるようになりました。
リクルートキャリアでは、採用と広報が一緒になった部署に所属していて、国内の新卒採用・中途採用・社内広報・社外広報といった仕事をしていました。広報未経験の私に、広報への異動を叶えてくれ、土台を作ってくれたリクルートキャリアでの時間は充実していましたが、ここまでやってきた力を、小さな組織でもいいから試したい、と思い始めたのがきっかけで、現職のTigerspikeに転職しました。
現在の仕事内容
現職のTigerspikeは、DXにおけるグローバルカンパニーで、イノベーションを誘発させるための洗練されたUX設計アプローチと、モバイル分野における先進的な開発力を用いてデジタルプロダクトを世界12拠点で事業展開している会社です。
私は、その日本法人であるTokyo Officeで中途採用と広報を担当しています。
中途採用は、基本的にはダイレクトリクルーティングがメインで、エージェントにも協力してもらいながら進めています。広報としては、メディア掲載などのPR活動をしています。
経験してきた人事の仕事
人事採用といっても、リクルートキャリアやTigerspikeでは、どうやって人を採用するのかといった採用戦略設計も経験させてもらいました。私は広報の経験もあるという点で、少し特殊かと思います。
人事の仕事のポジティブな面
・人の人生を良くする場面に立ち会うことができる
「転職をしてきてくれる」ということは、前の職場よりも魅力を感じてくれているということです。候補者の方は、少しでも人生を良くしようと思って転職を決意するので、その場面に立ち会えるというのが、採用のいいところだと思います。
また、元々転職する意向がなかった候補者の方でも、その方のキャリアにとって絶対にうちに来てもらった方がいい!と思ったら、連絡して、話を重ねて、決心してもらい、入社したその人が活躍するのを見ると、なんとも言えない達成感と共に嬉しい気持ちになります。
・経営に近い
会社の規模にもよりますが、社長の経営の姿勢がよく見えます。「他の部署には言えないけど、採用には言っておくね」みたいなこともよくあるので、秘密を厳守できる人間であることは大前提ですが、自分たちが会社の中枢にいて、自分たちの仕事が全社に影響している、しっかり経営者目線を持って仕事をしなければ、と高い視座をを持つことが習慣になります。
人事の仕事のネガティブな面
・全部が上手くいくわけではない
採用した人全員が、活躍してハッピーになっていくとは限りません。入社時はよかったんだけど、半年で辞めてしまうということもあります。採用から入社後活躍というスパンで考えると、採用担当は傷つくことが多いと思います。
採用した人が上手く活躍できず、もがいていたり、ハッピーじゃなさそうだったり、周りから「なんでこの人を採用したの?」みたいな雰囲気になることもあるので、そういう時はちょっと辛いですね。
・意外と数字に追われる
人事は定性的な仕事と思われがちですが、ほとんどの場合目標や締め切りがあります。これは守りの人事と言われる労務管理や制度設計系でも同じです。採用してもミスマッチが起きたり、候補者本人が入社したいと思っても他の要因で入社できなかったり、そこにいるのが感情のない「商品」ではなく、生身の人間だからこそ、無形商材の営業よりも難しい側面があります。
採用が遅れると、連鎖的に事業も遅れていくので、締め切りに追われることになります。
人事プロフェッショナルに必要な要素
・聞く力と見る力
人の状況をよく把握し、理解する力とともに、第三者の目線で客観的に、自分の会社を正しく見る力が必要です。自分の会社を客観視することができれば、候補者の方に対して、「私たちとしては、〇〇までは提供できます。でも△△は提供できないです。」といった正しい情報提供ができるようになります。ユートピアのような会社はありません。全ての願いを叶えることができると口説いてくる採用担当は逆に怪しいと思いましょう(笑)入社後のミスマッチを防ぐためにも、自分たちに心酔するのではなく、客観的にとらえ、できることとできないことを提案する。そのためには候補者が今回転職なり就職で、一番譲れないこと、叶えたいことはなんなのかを掴み、そこをアピールできるのか。聞き、見て、そして最後は背中を押せる力は採用担当の強みになると思います。
・経営者目線
経営者から信頼を得て、その人たちから情報を貰えるようにするためには、「私がもし同じ立場だったらどんな判断をするだろうか?」というのを常に考えている必要があると思います。人事と経営者が合わないと、組織は上手くいかないので、経営者の考えや目線を知り、意識することは重要です。
人事キャリアを目指す方にアドバイス
推進力や突破力は意外と武器になります。
人事のお客さんは、候補者と社内のメンバーです。社内のメンバーは、本業を抱えているので、採用の話や人事系の話の重要度はそこまで高くないことが多いです。そう言った人たちを動かしていかなければならないので、「言われたらやる」というスタンスでは、自分のやりたいことは中々できません。社内のメンバーに動いてもらうためには、人によって上手くキャラクターやアプローチ方法を変えながら、懐に入っていくことが必要だと思います。もし、推進力や突破力に自信がないのであれば、それを持っている上司がいるかどうかは入社する前に見た方が良いと思います。
他にも、マネジメント能力、段取り力もあるといいと思います。事業部の人に仕事を振る時は、「1から4までは私がやるので、5から8まではあなたしかできなくて、9から10は社長がやります。」というように、プロセスを全部見せた上で、やってもらいたことを明確に説明すると、動いてくれやすくなると思います。
人事の仕事を幅広く任せてくれる会社であれば、組織づくりやマネジメント能力といった独立するための力を身につけるチャンスがあるので、人事の仕事をするのはすごく良いことだと思います。
受け身な仕事をイメージしていたり、事務作業をきちっとやるのが好きという人は、人事そのものになるというより、人事アシスタントのようなお仕事の方が向いているかもしれません。人事は間違えられない作業が多々あるので、そうしたきちっと納期を守れる相棒がいてくれると、この上なく安心でき、ありがたいんです。また、人事で制度設計や採用設計を経験すると否応なく視座が上がるので、むしろ「新規ビジネスを作りたい」と考えている人も人事を経験してみるのは、面白いかもしれないです。しがらみなく人事をみてもらえる、そういう人に「人事」にきてもらえたら、私たち既存人事もとっても勉強になるし、一緒に働いてみたいですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?