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不当なGoogleクチコミやFacebook虚偽広告を放置するデジタルプラットフォーマーの現状と課題について

 Google検索エンジンやMAP機能を提供するAlphabetやSNS(Facebook・Instagram・Threads)を運営するMetaといった巨大デジタルプラットフォーマーは、とても便利で快適なサービスを人々に提供しています。僕もそうした機能を無償で利用させてもらっており、とてもありがたく思っています。

 そうしたデジタルプラットフォームは、膨大なユーザーが利用するサービスですから、システムの維持や利用者問合せへの対応など、運営事業者の作業負担もかなり厳しいものだというのは想像できます。

 しかし、名誉棄損レベルのクチコミ投稿が放置されたり、著名人の肖像を悪用した明らかな詐欺的な広告の取締りがされないなど、疑問符が付くデジタルプラットフォーマーの対応が目に付く現実があります。
 これはさすがにコンプライアンスの観点から対応しなくてはまずいだろうと思いますし、対応しない事業者には法的規制により強制するしかないのですが、現状はそのような動きは起きていません。
 
 MetaやAlphabetのサービスは広告収入によるビジネスモデルですから、スポンサー以外の利用者はほとんどの機能を無償で利用しています。
 そんな無償サービスだから少々の不満があっても黙っておけ、無償ユーザーや部外者がシステム内部のことに口出しするなという姿勢があるようにも感じます。
 しかも外資だし、問い合わせをしてもトンチンカンな回答を返して終了となるのも仕方ないよねという諦めの空気に支配されているところもありそうです。

デジタルプラットフォームのユーザー対応のお粗末さ

 それでは実際にどのような問題が起きているのか、ツイッター(X)の投稿から、いくつかスクリーンショット画像を引用します。


Googleクチコミ被害者の会
https://twitter.com/GoogleReviewNo/status/1636458741414662144

 Googleマップには店舗等のレビュー欄があります。そうした利用者によるクチコミ評価機能自体は参考になることも多く有益なものです。
 しかし、店舗にとって事実無根の苦情の声が放置されることも多く、Googleが事実調査をすることなく、そうした投稿が残り続けます。それはクリニック等の医療機関でも同様です。

 これについては僕も過去に以下のブログ記事でとりあげています。

省庁のグーグルマップのクチコミが激烈に渋く、レビューの放置は問題では?|遠山桂ブログ(2019年09月09日)

 Googleがクチコミ機能の管理責任を放置していることは長年継続している問題といえます。


前澤友作
https://twitter.com/yousuck2020/status/1697865338078310488

 前澤友作さんの写真(肖像)を無断で使用し、あたかも前澤さんが販売しているかのような詐欺的な情報商材の広告がFacebookやInstagramに氾濫していることについて、ご本人がプラットフォーマーに苦情を申し入れても改善されないとのことです。

 これは単なるご本人の肖像権侵害だけではなく、ご本人の信用も棄損され、詐欺業者が儲かり消費者被害が生み出される状態をプラットフォーマーが放置しているということです。
 こうした詐欺広告で宣伝される商材は、アフィリエイトやFX、副業サポートなどの情報商材やコンサルティングサービスです。ビジネス初心者に対し、30万円~200万円程度の詐欺的商材を販売し連絡が取れなくなるケースが多発しています。
 このような状態を放置するのは大企業のコンプライアンスとして大問題といえるでしょう。


堀江貴文
https://twitter.com/takapon_jp/status/1679776828591058945

 堀江貴文さんも前澤さんと同様の被害に遭って、プラットフォーマーに苦情を申し立てされているそうです。
 他にも数々の著名人が同様の被害に遭っているようです。


辻正浩
https://twitter.com/tsuj/status/1698326850471428215

 辻正浩さんの指摘も強烈です。
「福島の汚染水は危険」という人の注目を集める話題のキャッチコピーの広告を表示させて、タップすると何の脈絡もないウェブサイトに遷移させられます。
そこで「ウィルスに感染した」というアラートが画面表示され、解決するにはサポートダイヤルに電話することを求められ、そこに電話すると不要なウィルス対策ソフトの定期購入契約をするよう誘導されてクレジット決済まで進んでしまうというものです。
しかも販売業者は海外事業者のため、契約手続きをするのも相当に困難を伴います。

 こうした詐欺的広告は、恐らくアドネットワークを介した広告配信になっているため、GoogleやFacebookが直接に広告審査をしているわけではないのでしょう。
 アドネットワークは広告配信の代理店のような存在で、アドネットワークが許可をした広告がYutubeやFacebookといったプラットフォームで自動的に配信される仕組みになっています。そのためGoogleやFacebookが直接に詐欺広告を制御するのが困難という事情はあるのでしょう。
 そうは言っても、GoogleやFacebookが本気で広告コンプライアンスを維持するつもりなら、アドネットワークに対して改善を指示し、それが出来ないならアドネットワークからの配信を切断する対応はできるはずです。
 そのような本気の対応をGoogleやFacebookがしないのは、日本の広告市場や消費者庁を舐めているということかもしれません。

 GAFAと呼ばれる外資系プラットフォーマーは、経費抑制のためか電話オペレーターによる対応を極限までしません。問い合わせ方法は電子メールかチャットに指定され、高齢者やデジタル操作を苦手とする人は連絡をとることもできません。
 そうしたデジタル弱者が詐欺的広告の犠牲者になっていますが、電子マネー・サービスを提供するGoogle・Apple・Amazonはまともな顧客対応をしていません。(国内のクレジット会社や電子マネー発行会社は、もっと血の通った顧客対応をしています)。

 しかも重要な問題になると「国内では判断できないので米国本社に問い合わせてほしい」と逃げ出します。日本市場でも莫大な利益を上げているにもかかわらず、日本の消費者対応はしないのです。それに対してプラットフォーマーに実効的な対応をさせる法律も見当たりません。

 つまり、肖像を悪用されるインフルエンサーも詐欺商材購入の被害者(情報弱者)も外資系の巨大デジタルプラットフォーマーの不作為に泣かされている状態です。

デジタルプラットフォーマーを規律する法律

 それではデジタルプラットフォーマーを縛るルールは何もないかと言えば、そうではありません。

 2021年2月施行の「特定デジタルプラットフォーム透明化法」と2022年5月施行の「取引デジタルプラットフォーム消費者保護法」の2つの新法が制定されています。
 両法ともに短期間で制定されたこともあり、法理念や定義、DPF運営事業者の努力義務などの基礎的な事項のみの規定となっており、詳細なルールや事業者規制については今後の法改正によって実現していく見通しになります。

 つまり「特定デジタルプラットフォーム透明化法」と「取引デジタルプラットフォーム消費者保護法」は、現時点ではプラットフォーマーに対して有効な規制は期待できません。

 この両方の位置付けについては、以下の過去のブログ記事をご参照ください。

デジタルプラットフォーム新法と特定商取引法改正とデジタル広告への影響|遠山桂ブログ(2021年04月16日)

 その他のインターネット・ビジネスを規律する法律としては、景品表示法の広告表示ルールと特定商取引法の通信販売ルールが該当します。

 景品表示法の広告表示ルールでは、優良誤認表示、有利誤認表示、内閣総理大臣が指定する告示が禁止行為に指定され、違反事業者は措置命令や課徴金納付命令の対象になります。
(2023年10月1日に内閣総理大臣が指定する告示に“ステルスマーケティング広告の禁止”が追加されます)。

特定商取引法の通信販売ルールについては以下のような事項が定められています。これらに違反した事業者は業務停止命令や罰金・懲役といった罰則の対象になります。

・広告の事業者情報や取引条件などの表示義務(第11条)
・誇大広告の禁止(第12条)
・承諾をしていない者に対する電子メール広告の提供禁止
・法定返品権(第15条の2)
・最終確認画面の表示義務(第15条の6)
・最終確認画面の表示に不備があった場合の取消権(第15条の4)

 景品表示法も特定商取引法も、通信販売(インターネット・ビジネス)の不当表示広告には行政処分を課することができますが、消費者の取消権(民事効力)は認めていません。
 そのため悪質業者が詐欺的広告によって上げた不当収益については限定的にしか没収できない状態です。
 それは広告は不特定多数に緩く働きかけるものであり不意打ち性がないとされているためです。これが悪質業者にハックされ、プラットフォームには詐欺的広告が溢れる温床になっています。
 こうした通信販売(広告)の不当表示に対する取消権も再考の時期に来ていると思います。

 更に外資の巨大プラットフォーマーが対象になると、これを縛る法的根拠が薄弱になっています。
 そろそろこのような状態にメスを入れる時期になっているのではないでしょうか。


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インターネット取引と消費者法

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顧客相談(カスタマーサポート)ガイドラインの雛形|クレーマー対策」


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