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まちのにおいが入りこむ

マスクを外して出かけることが多くなった。

マスクをしなくちゃいけないのが嫌で仕方がなかったわけではないけど、風邪でもないのにマスクをし続けることなんてなかったから、着けているといつも不思議な心地だった。

マスクをはずして外に繰り出すと、今までそのフィルターに阻まれていたにおいが次から次へと鼻腔に入り込んでくる。
どんなにおい一つとっても新鮮で、想像が掻き立てられて、においのもとを辿りたどり、その情景をイメージする。

お料理のにおい、ベランダに干してある洗濯物のにおい、ごみ捨て場のにおい。川、たばこ、工事現場、人混み。

人の情報源の多くは視覚だと聞いたことがある。ただそれだけでは、対象の輪郭しか感じられない。目から映り込むものに加え、耳から聴こえてくるもの、肌で触れるもの、舌で味わうもの、これら全てが足し合わされて、たとえばひとつの事物が、情景が、感情が生まれるのかもしれない。

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