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少年と餃子

「少年自然の家」や「青年の家」など宿泊を伴う野外活動や合宿で利用される青少年教育施設の廃止が相次いでいる。20年間で250ヶ所以上が廃止され、跡地利用も課題となっている。文部科学省によると自然環境の中で集団宿泊生活を通した健全な青少年の育成を図ろうと1958年に青年の家、70年度に少年自然の家を国の補助金で整備出来るようになり、全国各地で設置が続いた。しかし近年は利用者が年々減少し、現在は往時の4割ほどしか稼働していない。

読売新聞オンライン記事より一部抜粋

「えー、めっちゃいい思い出だったのにー」「体験学習楽しかった」「もうないんや」「非常に残念です」 

ネットに溢れるコメントを読んだ僕は、此れは由々しき事態である、帝國の危機である、どげんかせんといかん、國家有用の徒たる青少年の為に、立ち上がれ、令和維新じゃ、うおおおおお、国会議事堂にションベン、てな煮えたぎる熱い義憤に駆られた、かというと、全く逆であり、「ははは。全部潰れろ。馬鹿野郎」そんな軽い呪詛を心中唱えて一人北叟笑みながらニュースを読んだのである。

「やー!」

少年自然の家。クラスメートが掛け声を発した。福岡県民独特の掛け声だった。白く広い大会議室で、僕は、下半身丸出しになった。クラスメートが、立ったままの僕の背後から近づき、勢い良く体操服の白半ズボンをずり下ろしたのだ。ゴム部分にフルネームを記載した白ブリーフも一緒に足元まで脱げた。数秒の丸出しの後、僕は慌ててズボンを履き直した。振り返ると、クラスメートは意地汚く笑っていた。僕は何も言わなかった。言葉が出なかった。「ここでやるか。こいつ、正気か」そう唖然と立ち尽くしていた。担任の教師が近付いてきて小声でクラスメートに注意した。彼は当時30代前半位だったのだろうか。今の僕より若かっただろう。

「コラッ。女子も見よろうが…」

僕は、それを女子が聞いてるじゃねえか、聞こえないように注意しろよ、余計恥ずかしいじゃねえか、こいつも馬鹿か、そう呆れた。クラスメートもクソだが、教師も同じくクソだった。自然体験学習だったか、よく名称は覚えちゃいないが、一泊二日、小学校高学年時の恒例行事だった。晩飯食った後に催された、じゃんけん大会、僕は絶好調だった。壇上の代表者とじゃんけんして負けた者は座っていくシステム、残り数人になったところで、勝ち続けていた僕は、妬みなのか、単に揶揄いの積もりか知らねえが、狙われたのだ。みんなが見ている前で、下半身丸出しの標的にされた訳である。少年自然の家で僕が学んだのは、恥辱。僕は、健全たる大人、になれたのであろうか。

バウルーが届いた。老舗のホットサンドメーカーである。敬愛してやまないカリスマキャンプスター、ヒロシさんも愛用の逸品である。僕は餃子を焼いた。カリカリに。試し焼きだから自室のガスコンロで。早く、野に行きたい。焚き火に豪快にバウルーを突っ込みたい。そう。自然の家を恨む、僕の趣味は、ソロキャンプ。

それから、岐阜から電話があったのだ…。


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