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レースへの調整方法

昨日の走る研究室では【レースへの調整方法】を扱った。各地でレースが開催されてきたこともあり、需要のあるテーマだったと思う。

今回は調整方法の中でも、テーパリングを主に扱った。

テーパリングとは、試合に向けて徐々にトレーニング負荷を減らすことを指す。

テーパリングは、トレーニング負荷を軽くすることで疲労は抜けるがフィットネス(体力)は減少しないことを利用している。例えば、トレーニング量を4週間かけて85%減少させても、VO2maxは下がらなかったという研究もあるくらいだ。

疲労を最小限に減らし、フィットネスを最大限キープした状態を作り出すことで、高いパフォーマンスを発揮する、というのがテーパリングの原理である。

テーパリングについてのメタ解析(複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること)を行った論文(Bosquet et al., 2007)での結論は以下だ。

・期間は2週間でトレーニング量を41~60%減らす。

・トレーニング頻度と強度はそのまま。

上記の結果はランニング以外にも水泳、自転車、ボートなど様々な種目が含まれれており、ランニングに限れば21~40%減で最も効果が出ている(とは言っても大差はない)。

テーパリングをする際はこのテンプレを指標にして、個人でアレンジしていくのが良いと思われる。

また、テーパリングのメリットとして、筋グリコーゲン量が高まること、主に速筋繊維の筋力が改善されることを報告する論文がある(Murach and Bagley et al., 2015)。

このことから考えると、以下のことは留意する必要はあると感じた。

・とりわけトラックレースであれば、筋グリコーゲンを満タンまで貯める必要はない(むしろ体重増加によるデメリットの方が大きいと思われる)。

・速筋繊維の動員が大きくなりすぎるのも、レースの距離や速度帯によってはエネルギーロスに繋がると考えられる。

ちなみに、僕のテーパリングはテンプレからかなり外れている。今もホクレンディスタンスで転戦しているが、トレーニング量(走行距離)はテーパリング前の10〜15%減程度である。また、周りのレベルの高い長距離選手を見ても、トレーニング量を半分まで落としている選手は全くと言っていいほど見ない(正解かどうかは別として)。

今のテーパリングに落ち着いている自分なりの理由はある。

・持続可能なトレーニングサイクルを心がけているので、テーパリングに入る前からそこまで疲れていない。

調整=脚の張り感の調節、と考えている。量を減らしすぎるとバネがたまりすぎて、上に跳ねてしまう感覚がある。バネを溜めすぎると、1km2’40”では楽に走れるかもしれないが、1km2’45”ではロスの大きい動きになってしまう。脚の張り感は、上述した速筋繊維の筋力の改善度合いに近いと思う。

・普段からハイボリューム(脚が重い状態)が当たり前になってしまっていると、身体が軽い時のコントロールの仕方を知らない可能性がある。

僕は、試合前の刺激は早めに終わらせ、試合までの残り2〜3日はジョグと流しのみで脚の張り感を調整する、というのが今のところしっくりきている。

テーパリングは個人差が大きいものなので、自分に合うものを採用するのが1番だと思う。しかし、テーパリングの理屈や多くの人が当てはまるひとつのテンプレは覚えておいて損はないと思う。




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