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ランニング故障中のクロストレーニング(スイム、バイク)

故障などでランニングができない時、代わりとなる運動で持久的能力を維持しようと考える人は多いだろう。

題名の”クロストレーニング”とは、専門競技以外の運動を取り入れる、という意味で用いられることが多い。ランニングであれば、走る以外の運動が該当する。

ランナーのクロストレーニングで代表的なものはスイムとバイクだろう。すでに取り入れたことがある人も多いと思う。この2つを中心に、クロストレーニングに対する考えを書いていきたい。

まず、故障が軽いもので、2週間以内に治りそうな目処が立つ場合である。

この場合は、そもそもクロストレーニングをする必要はないと思う。

なぜなら、2週間程度では呼吸循環器系の能力はそれほど低下しないからだ。それでもパフォーマンスに多少の影響が出ることは避けられないが、それはクロストレーニングをした場合でも同様である。専門種目の練習に勝るものはないので、1日でも早く競技復帰することを優先した方が良いと思う。もちろんリフレッシュとして泳ぐ、バイクを漕ぐのは良いと思うが、トレーニングとしての必要性は小さいということだ。まあ、良い休養として過ごすのが丸いだろう。

次に、故障の完治が2週間〜数ヶ月かかりそうな場合。このような中長期戦を覚悟した時にクロストレーニングを導入するのは良いと思う。

最初に結論を言うと、クロストレーニングを行うなら、低強度でスイムを行い、高強度でバイクを行うのが良いと思う。

スイムは技術が占める割合が大きく、競技レベルでないと呼吸循環器系に負荷をかけるまで追い込むことは難しいと思う。また、成人後に素人状態から競技レベルに技術を引き上げることは相当困難だろう。25mを全力で泳ぐようなインターバル形式でメニューを組むような人も見られるが、キツさはあっても、それほど刺激を得られていない可能性がある。

また「スイムはカロリー消費が大きい」とよく言われるが、それは競技レベルに限った話で、一般的な「泳げる」のレベルではカロリー消費も大して期待できないのではないかと思う。詳しくは八田益之さんのnote「運動で痩せる方法 ・・・水泳/自転車/ランニング/筋トレ比較」を参考にして頂きたい。

スイムのメリットは、水中で抗重力筋を解すことができることや、ランニングではあまり使わない上半身の可動域が大きいことだと感じる。ウォーキング以上ジョギング以下の負荷と割り切って身体ほぐしとして用いるのがスイムの利点を生かしたやり方だと思う。

バイクにも技術的要素はあるが、スイムほど特異性は大きくない。トライアスロンでも、スイムは幼少期に経験がないと難しいが、バイクは成人前後から初めても上達するようだ。一般人でも、パワーマックスやローラー台を用いれば最大付近まで追い込むことは可能である。接地衝撃のないバイクで高強度域の運動を行うのは良い戦略であると思う。

注意すべきことは、最初からランニングメニューの強度、時間の全てをバイクに置き換えることは難しいということである。

長距離の練習でよくある1000*10(r60”)、12000mペース走などをそのままバイクに置き換えるならば、3’*10(r60”)@90〜95%HRmax、30〜40’@80〜90%HRmaxであろうか。

しかしこの強度と時間のメニューを遂行することは、バイクを専門としている人でないと困難だろう。なぜなら、高い心拍数や酸素摂取量を長時間維持して運動することは、その競技に特化しているからできることだからだ。

高い持久的能力を有するトップスイマーでも、ランニングも同水準の競技レベルを持つわけでないことは直観的にわかるだろう。”持久的能力”というざっくりしたものは、競技間で共通する部分としない部分があるのだ。上の例に挙げたランニングとスイムで起こっていることがランニングとバイクの間でも起こると思えば良い。

最大付近まで追い込むことはできるが、それを長時間維持することは難しいことを考えると、ランニングでいうロングインターバルやペース走のような実践に近い練習は難しいと割り切るのが賢明だろう。ランニングと同じメニューを遂行しようとすると、最大付近から離れた強度になりどっちつかずのトレーニングになることが予想される。まずは1〜2分の運動時間でインターバルを組むのが良いと思う。

バイクは接地衝撃がない点では優秀だが、同じ姿勢で座り続けることで梨状筋などの臀部の筋肉が凝る可能性がある。梨状筋が緊張すると坐骨神経を圧迫するため、神経痛を伴う故障の場合は使い方に気をつけた方が良いかもしれない。

ここまでクロストレーニングの取り入れ方について書いてきたが、一切やらないという選択も十分ありだと思う。どれだけスイムやバイクを頑張ってもランニングと同じだけのトレーニング効果を得ることは難しいし、故障が癒えればほぼゼロの状態でも2〜3ヶ月で元の競技レベルに戻すことは十分可能だと思うからだ。

ちなみに、故障が明けても長期間状態が戻らない選手は、単に持久的能力の問題というより、故障によって筋肉や腱に障害が生まれたり、故障部位を庇う動作が定着してしまったりしたせいで、最適な動作ができなくなってしまったことによるものが大きいと思う。

ひょっとしたら、クロストレーニングを行う意義は生理学的なメリットよりも、精神的なメリットの方が大きいかもしれない。

故障中はどうしても精神状態が不安定になりがちである。また、精神状態が不安定になる時というのは、だいたいやることがない時なのだ。ただでさえ走れずに精神的に辛い時に、トレーニング計画がなくなれば精神状態がますます不安定になっていく。

逆に言えば、何か集中すべきこと、やるべきことがあれば、精神状態に気を遣うヒマがなくなる。卵が先か、鶏が先かという問題なのだ。スイムやバイクをしている間は身体を一生懸命動かしているので、なおさらそれに構うヒマはなくなる。

以上の効用から、僕は長期の故障をした時はスイムやバイクをするようにしている。スイムやバイクのトレーニング計画を立てて、それにのめり込んでいる時は、もう少しスイムやバイクを上達させたいな、と思うものである。そのくらいの方が無理な復帰計画を立てずに良いだろうと思っている。

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東大で箱根駅伝を走って、実業団の世界に飛び込みました。大学院では運動生理学の研究も。 GMOインターネットグループ所属 東京大学大学院八田研 5000m 13’36/10000m 28’19/half 63’43/full 2:14’13