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学力格差は親のせい

子「ねえ、勉強は何の役に立つの?」
親「さあ? そんなことより宿題やった?」

世襲制からメリトクラシーへ

ヨーロッパや東アジア等では、近代以前の社会は身分間の移動は原則禁止であった。機械的・世襲的に社会階層は再生産されていた。(中略)
『教育キーワード―155のキーワードで押さえる教育』より

近代以後では以下のように変わりました。

近代以後、私たちの社会は、メリット(merit:能力)があるものによる支配体制により成り立つようになった。メリットは、個人の「知能(IQ)+努力」と定義される場合がある。このメリトクラシー(能力主義)、すなわち学力や学歴により、社会の制度やシステムが成立する。能力に応じて人々を選抜し、富や地位を振り分けていくことを可能にする価値観が支配的担ったことがその背景にある。そのため、学力や学歴の格差は個人的な能力の結果としての格差として容認された。
『教育キーワード―155のキーワードで押さえる教育』より

確かに、身分・人種・⺠族・国籍・性的指向などの属性によって評価されていた時代と比べると、努力さえすれば適切に評価される時代になったのだから良くなったのかもしれません。しかし、メリトクラシーも問題点を抱えています。

能力は目に見えないものであるため、どうしても学歴や資格などによって評価されざるをえませんし、能力それ自体も勉強によって身につくものです。専門職になるほどその傾向があるでしょう。学歴に依存するということは、教育に依存するということです。そうなると、教育に必要なお金をかけられる裕福な家庭ほど有利になるために、結局、家庭環境に左右されることになります。もちろん、塾などに通わずに自力で奨学金をもらって難関大学に通う人もいますが、そのような人間はごく少数で、一般的には保護者が高学歴層の富裕な家庭ほど、また子供の学校外教育に支出を惜しまず高い学歴の獲得を期待する家庭ほど、子供が高い学力を持っている傾向があります。

格差の原因はペアレントクラシーかもしれない

勉強をするには理由があるはずです。大人であれば仕事で必要になったからだとか、学生であればテストが近づいてきたからだとかがその例でしょう。同様に、児童・生徒も勉強をするには理由があるはずですが、その理由を自ら見出すのは難しいと思われます。大抵は保護者に「勉強をしなさい」と言われたとか、保護者の期待に応えたいという理由ではないでしょうか。保護者がどの段階までの教育達成を期待するかなどの、子供の教育達成における保護者の関与の影響をペアレントクラシーといいます。子供の学力を決定づける主な要因は、おおかたこのペアレントクラシーであると予想します。

経済格差から生じる教育機会の不平等によって学力格差が生じていることを考えれば、教師はそこに介入し、教育機会を補うべきだと思われます。しかし、経済格差から生じる教育機会の不平等を是正したとしても、本人が勉強したいと思わない限り、学力格差を是正するのは不可能です。ペアレントクラシ―から生じる学力格差を是正するためには、ペアレントクラシーから生じる教育機会の不平等を補う必要があります。教師は学力によって就くことができる職業に差があるという事実を、どのような職業も素晴らしく、すべての職業は尊敬されるべきものであるということと共に伝えるべきです。教員にはその責任があるのではないでしょうか。

結局差はなくならない

教育の機会は均等に用意されるべきだとは思いますが、その結果には必ず差が生じます。その事実を認め、教育の機会の格差の介入・是正に努めて、結果の平等を追い求めるのではなく、正義に目を向けてもいいのではないでしょうか。たくさん稼いでいる人間が福祉で還元するという考えも素晴らしいと思います。このような考え方を学力上位の人間に伝えるのも教師の役目にあっていいはずです。もちろん、教育の結果に生じる差にも限度はあります。それは格差であってはいけません。


参考文献
國分麻里(2019)「経済格差と学力」, 藤田晃之・佐藤博志・根津朋実・平井悠介編『最新 教育キーワード―155のキーワードでおさえる教育』pp.188-189, 時事通信社.


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