ある朝の憂鬱
少し茶っぽくてパサパサのうねる髪の毛を指先でくるくる触りながら、
ワン・シンイーは烏の鳴き声を聞いた。
面格子の隙間から入り込む朝日と毎日変わらない何かが腐ったにおい。
シンイーは怠い身体に鞭を打って起こし台所へ行くと、冷蔵庫から消費期限ギリギリの牛乳を取り出す。
コップに注いだ牛乳を勢いよく飲み干してひとつため息をつく。
全身がずきずきと痛む。吐き気に襲われトイレに駆け込んだ。
ひとしきり吐いたあと、洗面所に行って顔を洗う。鏡に映る自分が自分を睨んだような気がした。
今日は何も無い日だ。
火をつける。煙草を呑む。煙を吐く。
決まった動作を繰り返す。
馬鹿な女だと笑うがいい。私は今死んだように生きている。
あの日の痛みも、煙と共に消えて無くなればどんなにいいだろう。
剃刀を腕に当てる。今日も切れない。
いつか、そうして、錆びていくのだろう。
ばかばかしい。どうして。
そんな自問自答を繰り返して何になる。
既に頭は破裂寸前だ。
私を一度だけ連れ出して、
この狭い路地裏から、
(いつか、遠くに)
胸の奥で固まった心臓が、わずかに音を立てたような、そんな気がした。
ワン・シンイーは今日も笑う。
嗚呼、救われない。
2022/06/11
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