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米国におけるDefense Techのスタートアップ投資トレンド

はじめに近年、米国におけるDefense Techのスタートアップへの投資は顕著な増加を見せている。これらのスタートアップは、革新的な技術とビジネスモデルを通じて、従来の防衛産業に新たな動きをもたらしている。本稿では、その背景と具体的な事例を紹介し、将来の展望についても考察する。 Defense Techに対する投資の増加は、特にAI、ロボティクス、サイバーセキュリティなどの分野で顕著だ。これらの技術は、ミッションの自動化や効率化を促進し、軍事作戦の安全性を向上させる可能性

    • イスラエルにおけるSecurity / Defense Techのスタートアップ投資トレンド

      イスラエルのSecurity/Defense Tech分野におけるスタートアップ投資のトレンドは、近年、顕著な発展を遂げている。特に、ソフトウェアベースの防衛システムへの関心が高まり、これがさらに加速されると見られている。AI、自律兵器、衛星技術、再利用可能なロケット、サイバーウォーフェアなどの技術が新しい軍事能力として注目されている。本稿では、このようなイスラエルの投資トレンドを広く紹介していく。 イスラエルのDefense Techにおける投資トレンド イスラエルの

      • イスラエルのDDR&Dとは

        はじめに以前の記事で紹介された防衛イノベーション技術研究所(仮称)。 防衛のための研究開発を中心に行う防衛省所属の研究機関であるが、似たような組織がイスラエルにも存在することはご存じだろうか。中東情勢が混迷を極めていることは連日の報道の通りであるが、そのような状況の中で「国防のための技術開発」が大きな役割を果たしている例をそこに見ることができる。 今回の記事では、イスラエルの技術力を支えている「イスラエル国防研究開発局(Directorate of Defense Rese

        • 防衛イノベーション技術研究所の基となったDARPAとは

          はじめに以前の記事で紹介した、「防衛イノベーション技術研究所(仮称)」。防衛省の外局である防衛装備庁の下部組織として2024年秋にも発足する。 先端技術に裏付けられた「新しい戦い方」が顕在化が顕在化している中、防衛装備品の開発を強化し、将来の技術的優越を確保できる機能・技術の創出することが目的だ。 この「防衛のための研究開発」というコンセプトは、日本独自の全く新しい取り組みというわけではない。モデルとなった取り組みがアメリカにすでに存在する。 今回の記事では、日本が防衛イノ

        米国におけるDefense Techのスタートアップ投資トレンド

          【イベントレポート】「イスラエルのスタートアップの現状と日本企業の取り組み〜戦時下での協業・投資・M&Aの可能性〜」

          はじめに先週4/11(木)、株式会社K Squared主催、イスラエル大使館、TMI法律事務所、Frontline Initiative後援の下、「イスラエルのスタートアップの現状と日本企業の取り組み〜戦時下での協業・投資・M&Aの可能性〜」が開催されました。およそ150名の方々にお申し込みいただき、盛況のうちに終えることができました。 当イベントでは、イスラエルに強く関係する政府関係者およびベンチャーキャピタル、日本企業、業界専門家の方々をお迎えし、現在の環境下における

          【イベントレポート】「イスラエルのスタートアップの現状と日本企業の取り組み〜戦時下での協業・投資・M&Aの可能性〜」

          防衛装備研究の新組織「防衛イノベーション技術研究所」とは

          はじめに令和6年度、防衛省の外局である防衛装備庁が「防衛イノベーション技術研究所(仮称)」を創設する予定だ。 (参考:2月24日読売新聞オンライン、2月26日日本経済新聞) 防衛装備品の開発を強化し、将来の技術的優越を確保できる機能・技術の創出することが目的である。官民双方から幅広い人材を登用しつつ、早ければ今秋にも100人態勢で発足する。 今回の記事では、この「防衛イノベーション技術研究所(仮称)」の創設に至った経緯とその具体的な内容について解説する。そして結びとして、新

          防衛装備研究の新組織「防衛イノベーション技術研究所」とは

          Defense Tech界のGAFAM、SHARPEを読み解く

          はじめに本記事では「SHARPE」と呼ばれるDefense Techにおいてユニコーン企業となっている6つのスタートアップについて紹介する。各社の事業内容の実態を細かく見ていきたい。 SHARPEが設立した背景2022年の段階で、国防分野における企業において、過去10年間の資金調達において評価額が10億ドルをこえた会社が6社になった。これにより、今回取り上げる「SHARPE」への注目度は大きくなり、現在のDefense Tech領域の盛り上がりを牽引している。 米国のスタ

          Defense Tech界のGAFAM、SHARPEを読み解く

          GAFAMがなぜサイバーセキュリティに投資するのか

          はじめに本記事では、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)のサイバーセキュリティへの投資の裏にある動機や、その実例などをもとに、サイバーセキュリティへの投資が加熱している背景について考察していく。 GAFAMはサイバーセキュリティに多く投資している 2021年、GAFAMはサイバーセキュリティ関連企業23社への資金調達や買収に対し、合わせて24億ドルを費やし、CB Insightsが集計したデータによると、約18億ドル

          GAFAMがなぜサイバーセキュリティに投資するのか

          ヒト、モノ、カネ、情報を守り抜くための技術「Security Tech」とは

          はじめに弊社K SquaredではSecurity Techにおけるコンサルティングおよびリサーチサービスを提供している。Security Techと聞いた際に真っ先に思い浮かべられるのはサイバーセキュリティかもしれないが、本来はさらに広義に定義される技術領域である。そこで、今記事は弊社におけるSecurity Techの定義を詳らかにし、当該領域に取り組む方々に周知いただくことが目的である。 Security Techとは我々はSecurity Techを「個人、企業、

          ヒト、モノ、カネ、情報を守り抜くための技術「Security Tech」とは

          民間のセキュリティインシデント事例〜モビリティ編〜

          はじめに現代社会においてモビリティサービスは、交通やロジスティクスの利便性を高める重要な役割を果たしている。しかし、その利便性の裏側では、サイバーセキュリティの脅威は増大している。特に、個人情報の取り扱いや車両の遠隔操作など、技術的な進化により新たなリスクは生まれている。以下では、モビリティセクターにおける顕著なセキュリティインシデントの事例を挙げ、その影響と対策を考察する。 モビリティセクターにおけるセキュリティインシデント事例トヨタモビリティサービス(2022年)

          民間のセキュリティインシデント事例〜モビリティ編〜

          モスクワテロ事件、その背景と「忘れられた」中東アクターとしてのロシア

          はじめに ちょうど一週間前、3月22日にロシアの首都モスクワ郊外のコンサート会場で大規模な銃撃テロが発生した。27日時点で当局に確認されているだけでも死者数は143人となっていて、過激派イスラム組織イスラム国(ISIS)が犯行声明を発出している。実行犯とされる4人の容疑者はロシア当局により既に拘束されており、現在は取り調べが行われている状況だ。  多くの人が事件の凄惨さに心を痛めた一方で、今回の事件で久しぶりに「イスラム国」という単語を新聞で見かけた人も多かったのではな

          モスクワテロ事件、その背景と「忘れられた」中東アクターとしてのロシア

          民間のセキュリティインシデント事例〜製造業編〜

          はじめに製造業はその先端技術と製品イノベーションにより、世界経済の中心的な役割を果たす。しかし、この業界の進歩は、IT技術との統合を経たことにより、サイバー攻撃の脅威に晒されることとなった。近年、製造業界は、ランサムウェア攻撃、サプライチェーン侵害、内部犯によるデータ漏洩など、様々なセキュリティインシデントに直面している。これらの攻撃は、企業の運営を停止させ、財務的損失を引き起こし、市場での信頼を損なうものである。 製造業界は運用技術(OT)と情報技術(IT)の統合により、

          民間のセキュリティインシデント事例〜製造業編〜

          民間のセキュリティインシデント事例〜医療業界編〜

          はじめに現代社会における医療機関は、高度な情報技術に依存して患者情報の管理や診療サービスの提供を行っている。この技術依存度の高まりは、患者ケアの質の向上に寄与する一方で、サイバーセキュリティの脅威に対する脆弱性も増大させている。 グローバルでは医療機関を狙ったサイバー攻撃の増加は、国境を越えた深刻な問題となっており、患者情報の漏洩や医療サービスの中断など、医療提供における重大なリスクを引き起こしている。国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)がガイダンスを発行するなど、

          民間のセキュリティインシデント事例〜医療業界編〜

          オーストラリアとの技術協力、その役割と展望

          はじめに 皆さんは日本とオーストラリアとの防衛協力が近年急速に進展していることはご存知だろうか。日本の唯一の「同盟国」と言えば米国という認識は広く共有されているが、日豪関係は俗に「準同盟」と呼ばれるのみならず、公式にも「日米防衛協力に次ぐ緊密な協力関係」(国家防衛戦略,p.15)として位置付けられていることはあまり知られていない。日豪はお互いにとって自由民主主義の価値、インド太平洋という地域的環境、台頭する中国と米国との対立という戦略的環境を共有している数少ないパートナー国

          オーストラリアとの技術協力、その役割と展望

          防衛三文書から読み解く防衛産業におけるスタートアップの展開可能性〜防衛省はスタートアップに何を求めている?その真意を探る〜

          はじめに 防衛省とスタートアップ企業との関わりが深くなっている、と言うと意外に思われる方もいるだろうか。実は昨年から防衛省はスタートアップ企業からの調達を増やすために多くの政策を矢継ぎ早に打ち出している。さらに航空自衛隊はベンチャー企業の集積する虎ノ門ヒルズCIC Tokyo内に昨年10月からオフィスを構え、企業関係者を対象にセミナー等を頻繁に開催している。スタートアップのフィールドにおいて防衛省の存在感は近年急激に高まっていると言えるだろう。  しかしこのような防衛省か

          防衛三文書から読み解く防衛産業におけるスタートアップの展開可能性〜防衛省はスタートアップに何を求めている?その真意を探る〜