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モノづくり、VUCAはどこにある?

現代は、企業が変動性(volatility)・不確実性(uncertainty)・複雑性(complexity)・曖昧性(ambiguity)の四重苦に苦しむVUCAの時代と言われ、この状況を乗り切るため企業活動に即興的な創発性が必要との声が高まっています。それは基本線として正しいと思うのです。

ですが、企業活動を顧客に《価値(顧客にとっての価値)》を提供するプロセスとして考えたとき、モノづくりにおいてプロセスの全体が同じレベルで即興的・創発的である必要はないと思うのです。

《顧客にとっての価値》は、かつてはモノの使用価値および所有価値で測られていました。それが、今は、モノを使うことで得られる体験価値が重視されるようになり、その動きの中で所有価値がもつ意味は小さくなりつつあると思います。

ですが、使用価値の方は、依然として重要だと思います。なぜなら、モノを使うことで得られる体験価値は、モノの使用価値に大きく依存しているはずだからです。モノの使用価値を決める性能と品質が安定していないと、顧客が得られる体験価値にバラツキが生まれてしまい、体験価値を提供する企業が顧客から信頼を得られない結果を招くと考えます。

したがって、モノづくりには、安定性(stability)と確実性(certainty)が必要になります。安定性と確実性を最も実現しやすいのは、可能な限り単純さ(simplicity)と明快さ(clarity)に支配されたモノづくりのプロセスを採用した場合です。
この結果、モノづくりのプロセスには、VUCAとは正反対のSCSCの世界が出現することになります。

もちろん、かつての高度成長期に比べたら、顧客の体験価値に影響する技術と社会環境の変化の速度が飛躍的に増しているので、モノづくりのプロセスにもVUCAに対応できる即興性と創発性の要素が必要になってきています。それでも、モノづくりのプロセスは可能な限りSCSCの世界であることが望ましいと、私は考えているのです。

モノづくりのプロセスというコトバを定義もなしにザックリ使ってきましたが、実際には、大きく分けても研究開発⇒商品開発⇒設計⇒製造の3段階があり、段階によって必要なSCSCの水準は変わってきます。この点はかなり細かい話になるので、別の機会に改めて記事にしたいと考えています。

今回、何が言いたかったかというと、モノづくり企業を取り巻く環境がVUCAなのは確かだけれども、だからといって、企業の内部環境すべてを同じ水準でVUCA対応にする必要はないのではないか、ということでした。

やや、とりとめない話になってしまいました。また機会を改めて、以前取り上げたピラミッド型組織とネットワーク型組織の比較や日本的な雇用慣行とイノベーションの関係などにも触れながら、掘り下げた記事を書きたいと思っています。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

『モノづくり、VUCAはどこにある』おわり



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