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他界した父との思い出


僕の父親が他界したのが、僕が大学に入学した年の年度末。20歳だった僕はもう30歳になる。

父はいつもおちゃらけてるように見えて、(今なら少しだけ分かるけど、)きっといつも何かにまじめに悩んでる人だったんだろうと思う。
いつもひょうきんな人っていうのは、だいたい人の目のないところでは真顔なもんだったりするから。

そんな風に勝手に想像して、親父もかわいい人だったんだな、なんて思うくらいには、ぼくも大人になった。


最近仕事はどうだ

ぼちぼちだよ

なんて、すこし大人になった僕と、
白髪が目立つようになった父と2人で
ちょっと距離のある会話をしながら、
お酒を飲んだりしてみたかったな。と思う。

と思うと、そういえば僕は父と一度だけ、お酒を一緒に飲んだことがあることを思い出す。


未成年飲酒に時効があると信じて書くと、確か当時僕は高校生で、受験シーズンの真っ只中。

毎日遅くまで塾に通って、自転車で帰って、母が温めなおしてくれた晩ごはんを食べて、風呂に入って寝て、起きたら自転車で学校に行って、終わったら塾に行って、、という生活を繰り返していたそんなある日。

風呂に入ってもう寝ようかという時間、
毎晩ひとりで晩酌して静かに寝る父に、
この日は呼び止められた。

けいすけ

なに

ちょっと座れ

父はだいたいいつもふざけていて、だから
いつもならうるせー黙って寝ろ、で済ませるところなんだけど、
でもその日の父はなんというか、黙ってそこに座らざるをえないような雰囲気を纏っていて。

一杯飲め

うん

こうして一杯だけ、一緒に飲むことになった。

詳しくは書かないけど、父は父でこの頃しんどい出来事があった。
傍目にはヘラヘラしてるように見えたけど、きっと相当、なんというか、喰らってたと思う。
それもあって、たまにはちゃんと会話してみようと思った。

どこの大学に行きたいだとか、いつオープンキャンパスだとか、この前の模試がどうだったとか。そんな話をひとしきりしたあと、
父は言った。

けいすけ

いいか、人生には3つの坂がある

のぼり坂

くだり坂

まさか、だ


いやダジャレかよ、とも思ったけど、
実際親父の身にはまさかと思うようなことが起きて、それで喰らってる。だから、

うん。そうだね。そうかも。

そんな風に適当な相槌をうって、
お酒が回ってきたのでその日は眠った。


翌日。
昨晩のことを思い出すと、ちょっと気恥ずかしいけど、でもすこし大人になったような、
そんな気持ちで、友人にこの話をしてみた。
人生には3つの坂があるって話、知ってる?

すると友人はこう言った。


ちょっと言いづらいんだけど、
それ昨日テレビで言ってたよ


_人人人人人人人人人人人人人人人_
> それ昨日テレビで言ってたよ <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

やっぱりふざけた人でした




#コラム #日記 #エッセイ  #一駅ぶんのおどろき


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