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5人の敵、あるいは6人の同好の士

「敷居をまたげば7人の敵あり」というが、わたしの住んでいる市内にはどうやら、5人はいるらしい。「どうやら」というのは、お目にかかったことがないからだ。が、その足あとで確認できる。

何年か前に引っ越して、自由になるスペースが極端に狭くなったことから、数ある本を処分した。再読することはないかもしれないのに段ボールに詰めるのを躊躇した。残した本は、司馬遼太郎と丸谷才一、向田邦子、井上ひさしくらいかなあ。以来、本は買わないという基本方針のもと(あくまで基本だけれど)、もっぱら図書館を利用している。そこに、敵がいたのだ。

近くの図書館は分室で、開架の本棚はほんの少ししかないから、もっぱらネットで予約して借りる。新聞の書評を読んで面白そうな本をみつける。毎日新聞の書評は丸谷才一さんが主幹を長くつとめていた。彼が選んだ書評者が、めいめい自由に本を選んで記事を書く。ジャンルが広く、バラエティにとんでいて、自分では手にとらないような本でも、あの人が言うならと本を借りたこともある。今は書評者が交代したけれど、続いている。

土曜日の朝、書評を読んでスマホで図書館を開く。在架を確認して3冊予約をした。「日ソ戦争(麻田雅文:加藤陽子評)」「核燃料サイクルの迷宮(山本義隆:池澤夏樹評)」それに「神と人と言葉と(武田徹:吉川浩満評)」。今回は「そこそこかたい」の上をいく「かたい」本だ。

「またかよ」
予約順位が3冊とも6番めだった。

初めてじゃない。いままでにも何度か「6番目」「5番目」ということがあった。むろん、超話題の本はそんな順位じゃないが、「そこそこかたい」本や「好み」の書評者のときは、だいたい5-6番目だ。

そうか。5人の敵、いや、同好の士がわたしを入れて6人いるのだろう。朝起きるのが早い人たち、トシヨリの同年代かもしれない。予約順位をあげるには敵よりも早起きするしかない。戦術はきまった。朝3時、配信早々のウエブ版をベッドの中で読むことだ。

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