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【詩】言霊

言葉が好きだ

言葉を使わなければ生きていけない

詩を読むのも小説を書くのもアナウンスをするのも演技をするのも

みんな言葉を使う。だから、みんな好きだ

ヒトが人になったとき、言葉が生まれた。

言葉は心を伝えるために存在する

自分を表現するために使われる

身振り手振りだけじゃ心を伝えきれないから

だからみんな言葉を使う。相手に心を伝えたいから。

俺もそうだった

いろんな人といろんな話をしたい。そう思ううちにしゃべること自体が好きになっていた

しゃべることは楽しい。いろんな言葉を使うのは面白い。

言葉遊びに夢中になっていた。言葉の組み立てに感動さえ覚えた。

外国語とのニュアンスに興奮を覚え、いろいろと調べてみたりもした。

そしてやがて知った。言葉の魂という、言霊のことを。

言霊がいるからこそ自分たち人間は心を伝えられる。

それはすごいことだと思った。俺たちは言霊使いなんだと。言霊に助けられているのだと。

言葉は魂を持っている、だから言葉はすごい力を持っている

そう、言葉によって平和にも混乱にもできるし、元気にも病気にもできる

言葉によってお互いをすばらしい未来へと向かわせられる

はずだった

言葉は自分の意思とは関係なくどんどんとあふれてくる

言葉は心を伝えきることなく、むしろまったく違った心を伝えることさえあった。

言霊は意思を持ち、ヒトが自分たちを使うことを面白がり始めた。

俺はそれに対抗しようとしてはたと気づいた。

俺の武器は言葉しかなかった。言霊に侵食されている俺が頭に浮かんだ。

言霊に対抗するためには、言葉を取り戻さなくてはならなかった。

言霊の言葉を使うことになれきった俺たちにそれは不可能だった。

言霊のチカラは次第に恐ろしいものとなっていった。

言葉一つで政治家は辞職に追い込まれ、

言葉一つでヒトは犯罪に走り、地球を破壊し、

言葉一つで自らの命を絶つようになってしまった。

だが同時に、言葉で救うことができることも事実だった。

俺は、言霊を元に戻したい、言葉を取り戻したい

だけどそのためには言葉を使わなくてはならない。

言葉以外の何かで対抗しようとしても、それは言葉の代用品に過ぎない。

だから今俺はここで詩を読む。

言霊にだんだんと侵食されていく俺を頭から振り払い、

言霊に対抗するための手段を模索し続ける。

こんなことしても無意味か?俺は惨めで無様ながきか?

だったらお前はなにができる?俺がこんなことをする必要がないと証明できるか?

俺の話を聞いても多忙というすばらしき言い訳で忘れていくだろう

だから俺はここでお前の心に種を植え付ける。

お前の言葉は、お前のものか?

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