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47話難しい顔

【遊戯王VRAINS考察】遊作サイドの伏線の話【ネタバレ】

・pixivに同タイトルの考察を投稿していますが、こちらの記事はテンションを抑えて大幅に加筆修正&再構成したものになります。
・内容について、特に五の最終決戦については独自解釈が激しいですが、本題は四までの「2期の遊作はAiの干渉に気づいていたし、Aiもそれは分かっていたと思う」という話なので、それ以外に解釈違い等ありましたらスルーして頂けると幸いです。私自身、文脈と気分で細かいところは日々変わります。
・引用の範囲と判断してniconicoより公式動画のスクリーンショットを使用しています(niconicoなのは画面保護のプロテクトがないため)。問題があれば削除しますのでご一報下さい。
・Playmaker/プレイメーカー等の表記やアカウント名と本名の使い分けはフィーリングですご了承下さい。


はじめに

最終決戦の始まる「TURN117 交わらない道」において、こんなことはやめろと説得に当たる遊作に、Aiは聞く耳を持たずにこんなことを言います。

Ai「俺は正直なところ、いつかお前と戦うんじゃないかって覚悟はしてたぜ。お前だってそうだろ」
遊作「………」

 「いつか戦うんじゃないかって覚悟してた」?? 二人とも??
微妙に引っかかりつつ、デュエル開始1ターン目。遊作がデコード・トーカーを召喚し……

Ai「デコード・トーカー、俺達が共に手にした、最初のリンクモンスターだな」
Playmaker「Ai、俺にサイバースデッキを探させたのは、お前だな」
Ai「何の話だ? 俺はハノイに追われ、逃げ回ったあげくに、お前の所に辿り着いた。お前が俺のパートナーだと知って、助けを求めたんだ」
Playmaker「いいや。お前はずっと、俺を監視していたはずだ。サイバース世界がハノイに襲われ、お前がハノイから逃げ回っていた5年の間。お前は影からずっと、俺の人生に干渉していたんじゃないのか。きっと、何かと言えるほど大きな干渉じゃないんだろう。俺が見てきた、そして、俺が聞いてきたちょっとしたこと。そういうものに手を加え続けた。俺がハノイへの復讐の道を歩むように
Ai「へえ?」
Playmaker「そして、それは俺だけじゃない。草薙さんにも同様だ。お前は俺達を、気づかれないようにデンシティとLINK VRINSに誘導した。俺と草薙さんがいずれ出会うだろうことも、お前は分かっていたはずだ」
Ai「ほお?」
Playmaker「そして、俺にサイバースデッキを与えた。お前を守らせ、ハノイを倒させるためにな。違うか?」
Ai「ふっ、さすがだな。みんな気付いてたってわけか。そうさ。俺がお前に戦う武器を与えた。Playmakerの象徴となる、サイバースデッキを。そしてお前は俺の期待通り成長し、邪魔なハノイを倒してくれた」
Playmaker「全ては計算尽くか」
Ai「哀しいこと言うね」

そういう大事なことこれで済ませる!?

確かにAiは怪しかった、2期でもなんか怪しげな描写はちょいちょいあったけど……遊作がそれに気づいていたとしたら、2期のニュアンスが変わりすぎるんですが???
これは、そういう考察です。先に言うと1期は手薄です、ご了承下さい。

一、いつ気づいたか

結論から言うと、2期開始時点では確信しているんじゃないかと思っています。「TURN3 ファースト・コンタクト」の時点で、

Playmaker「ハノイの騎士! お前達の正体はなんだ!」
ハノイの騎士「教えられるわけが無かろう。貴様も道連れだ……!」
Ai「やばい! 俺達を巻き込む気だ!」
(Aiがハノイの騎士のアバターを捕食)
Playmaker「お前、何をした」
Ai「お前を守ったんだろー?」

遊作と草薙がサイバースデッキを手に入れたダンジョンでハノイを食ったモンスター(TURN65)と、そこそこ似た姿(あくまでそこそこ)でAiがハノイを食っているのを遊作が見ており、

草薙「驚いたな……。お前が手に入れたカードデータを出力しただけで、実物を作り始めた。データストームってのは、とんでもないものなのかもしれないな

データストームで物理カードが作れること、

Ai「いやー、プレイメーカー様はすっかり有名人だなあ。まあログは消せても、画面を録画したものは消せないからな。目立たないようにしてたのに残念だったな」
遊作「お前、何故それを知ってる!」

Ai「そりゃ分かるさ。俺はネットの世界を逃げ回ってたんだから。色々知ってるのさ」

Aiが出会い以前からPlaymakerの動向を知っていたことを遊作と草薙が知っているので、あとはサイバース族がイグニスに関連する種族であることが確定すれば(43話で了見から聞くことになります)、遊作のデッキとAiに何か関係があると考えてもおかしくありません。推理材料は、かなり初期から揃っています。

そして、「TURN46 未来を描き出すサーキット」で、遊作とAiはお互い名残惜しそうにしつつも、とても綺麗に別れたその後。

「TURN47 帰ってきたPlaymaker」冒頭。

ロボッピ「えーん、えーん、アニキがいなくなってから3ヶ月……。どうしてオイラを置いていっちゃったんですかー?」

泣いているロボッピのあと、広場のカフェナギでソーセージを焼いている遊作のシーンに切り替わり……

47話難しい顔2

待って遊作何考えてその顔になったの?
なかなか見られないレベルのしかめっ面です。

葵「そんな難しい顔していたんじゃ、お客さんが逃げるわよ。藤木遊作くん」
遊作「財前葵」
葵「たまたま通りかかったんだけど……こんなところでバイトしてるのね」
遊作「ここのマスターが知り合いでね、留守番を任されたんだ」

続く葵との会話を見ても、何故そんな顔をしていたのかの理由になりそうなものは見当たりません。(さすがに留守番をさせられているのが不服とかそういうことはないと思います)(ソーセージ焼くのに苦戦しているわけでもないと思う)
2期最後の103話でも、遊作と葵は同じようにカフェナギで会話をしていますが、そこでは遊作の表情に注目させるような演出はありません。この「難しい顔」は予告でも採用されていて、明らかに「見てほしい表情」として描写されている、にも関わらず遊作が何を考えているかは明示されないという、かなり意味深な表情になっています。

その上で、演出的には直前のロボッピと似たようなことを考えていたと取るのが自然だと思います。すなわち、Aiのこと。

サイバース世界に無事たどり着けたら連絡の一つでも寄越すと思っていたのか? 依然イグニスを脅威とするリボルバーの存在もあり、何かあったのかもしれないと心配していたのか?

それとも……「リンクセンスで5年間感じていた何か」みたいなものがあって、それがAiがいなくなって初めて途切れたことで、「Aiは遊作を5年前からずっと見ていた」ということを確信して考え込んでいた……なんてこともあり得るのでは……?
また、その結果「復讐」や草薙との出会いへと導いたのもAiだったということに、3ヶ月で思い至ったのではないか?

もともと、1期でAiは「嘘をついていた」ことや「遊作を利用していた」ことを一応謝って(?)います。

(41話でAiが記憶をなくしているというのは嘘だとバラされたあと)
Ai「俺が盾になってやる! ただしもって30秒! その間に決めろ!」
Playmaker「だが、そんなことをしたらお前は!」
Ai「うるせえ! 俺様なりの償いだ!」
(TURN42 スターダスト・ロードの導き)

(満身創痍のPlaymaker)
Playmaker「サイバース世界ってのは、どんなところだ」
Ai「いいところだ! 俺達のパラダイスさ!(中略)俺達は、リボルバーが言うように人間に対して悪さしようなんて思っちゃいない! あそこでひっそりと暮らしたいだけなんだ! 俺はずっとお前を利用してた。でもそれは、ただ故郷に帰りたかったからなんだ! ただ仲間のもとに帰りたかっただけなんだ! プレイメーカー様よぉ、立ってくれよ! 立ち上がってくれよ!」
(TURN45 極限領域のデュエル)

悪気はなかったと弁解してはいるものの、「具体的には5年前から」「復讐へと誘導していた」ことについては触れていません。状況的にここで言うことが難しくても、別れ際に改めて謝罪することもできたはずですが、それもありませんでした。
その一方で、ここで言っている「故郷に帰りたい」という理由、遊作を誘導した目的である、「自分を守らせ、ハノイを倒させる」という目的は、遊作がロスト事件時に、了見から「考えることで君はまだ生きられる」と示された3つのこと、「生きるための3つのこと、帰るための3つのこと、敵を倒す3つのこと」(11話他)にそのまま当てはまります。遊作には、なかなか否定しづらい動機と考えられます。
そんな理由もあって、Aiの言葉を信じるべきか否か、信じたとして、それで良しとするかどうか含め、Aiについて考え込むことになったのではないか。
確証はありませんが、とりあえずそんな仮説を立てています。

二、ひとまず人質として

遊作がAiの干渉を確信した前提で、47話の続きを見てみます。
仁の意識が奪われ、犯人を追ってLINK VRAINSにログインした遊作は、Aiを渡せと賞金稼ぎ・ブラッドシェパードに追われます。

Playmaker「俺はもうイグニスを持ってはいない! お前達に追われるいわれは……!」
ブラッドシェパード「では、それはなんだ」
Playmaker「あ?」
(デュエルディスクからAiが顔を覗かせている)
Ai「ごめんなープレイメーカー。戻ってきちゃった!」

……「ごめんな」!? お前、謝ることなんだな!? 戻ってきたことは謝ることなんだな!?

これ、5年間のことを遊作がどう思っていたとしても、あらゆる追求を封殺する一言だと思います。少しでも迷惑だったとか言ったら一瞬でいなくなるやつじゃん、みたいな。
Aiもよほど申し訳ないのか、ブラッドシェパードを一発で追い払い、ガチカードを5枚も(あるいはもっと)くれる有能ぶり。「本当のことは言いづらいのでこれで許して」感もなくはないです。

Q.そんなAiに遊作が取った対応とは。

遊作「はしゃぎすぎて見つかるなよ」
Ai「分かってるよ。でもよ、また俺をロックしちゃうなんてどういうつもりだよ
遊作「1つ、草薙さんは弟の意識が奪われ、今深く心が傷ついている。俺達の現状を知り、相談に乗れる存在が他にいても悪くない」
Ai「それは、俺を仲間だって言いたいの? 悪くないねえ」
遊作「2つ、お前の故郷と、草薙さんの弟が襲われた事件、何か引っかかる。しかも、奴の仲間はイグニスを要求してきた。お前も今回の事件と、何か関連している可能性がある」
Ai「ワタクシ!?」
遊作「3つ、これが最も重要だ」
Ai「なになに~?」
遊作「お前には人質が似合っている」
Ai「あら~。おあとがよろしいようで……」
(TURN50 転校生、穂村 尊)

A.お前には人質が似合っている。

「お前には人質が似合っている」!! 確かに!!
というわけです。このロック、遊作を再び頼ることに申し訳なさのあるAiを引き留める意味と、「お前まだ隠してることあるだろ」というメッセージだったのでは? と思うわけです。そして、反発するでもないAiの態度も、思い当たる節にお茶を濁しているように見えます。

お前それで相棒って言ってもらおうって無理筋じゃん、と思うわけなんですが、遊作は別に怒ってはなかったんだと思います。Aiが過去の干渉について白状しない限り、対等な関係でいようと思ったら正面切っては認めてあげられないだけで。

そんな二人の関係は、「TURN48 裁きの矢」より、遊作の初の召喚口上(※OCGwiki情報)である「契約は結ばれた! 2つの魂は、闇の力を操る賢者へと受け継がれる! 儀式召喚! 降臨せよ、サイバース・マジシャン!」から察するに「契約関係」だったのかなと思います。共通の敵を追うため、その存在と力を互いに利用し合う契約。「儀式」モンスターなのも、再会早々「Ai! 何故ここに!」「はい、手短に説明します。……(もったいぶって)実はさ……」「あとにしろ」「あぁんこの感じ久しぶりw」とお約束をこなした二人っぽい。

その後、尊と共に遊作達に接触してきた不霊夢は、Aiがいない間にサイバース世界で何が起きていたのかを教えてくれます。イグニス達は、自分たちが生み出したテクノロジーをめぐり、人間を信じて共に道を歩むかどうかという議論をしていました。

不霊夢「少なくとも生みの親である鴻上博士は、我々を抹殺しようとした。その息子のリボルバーもだ。これは人間が我々の敵に回る可能性があるということの証明だ」
遊作「リボルバーは言っていた。AIはやがて人間を管理しはじめ、人間がAIを敵視するようになる。それが原因で、AIもまた人間を敵視すると。皮肉だな、博士自身が、その扉を開いてしまったのだとしたら」
不霊夢「だからといって、我々がそう結論づけたわけではない。我々の中で様々な可能性が検討されていた。その最中に新たな敵は襲ってきた」
(TURN50 転校生、穂村尊)

人間とAIが争うことになる流れについて、リボルバーに聞いた話を改めて確認する遊作。「人間がAIを敵視する」ことで「AIも人間を敵視する」というのは、69話でリボルバーを説得するために遊作が繰り返している話でもあります。遊作は、Aiが自分を監視・誘導したことを理由に自分がAiを敵視すれば、Aiは自分が原因で自分や人間を敵視するのではないか、ということも考えた上で、Aiへの態度を保留にしていたのかもしれません。

遊作「草薙さんの弟の属性は」
Ai「その情報は、ペアのイグニスしか分からない。そんな情報は必要ないからな。まさか俺だって、遊作にコンタクトするなんて思ってなかったし

ここでさらっと「遊作とコンタクトするなんて思ってなかった」と口にするAiですが、そのコンタクトの経緯が自分の計算だったことを遊作に黙っていると考えると、ちょっと引っかかるセリフです。サイバース世界が平和だった頃には思ってなかったかもしれないので嘘とは言い切れませんが、遊作に対して誠実とも言えないでしょう。のちに遊作は67話で「コイツを相棒と思ったことはない」と言い切っていますが、そりゃそうだなと頷くしかない。
ここで遊作は特に反応していませんが、もともと「人質が似合っている」に対して弁解したりもしていないAiなので、想定内とスルーしたとも考えられます。

不霊夢「今のような事態となり、ネットから隔離された安全な場所を作るために、尊と初めてコンタクトを取った。Ai、私と一緒に他の仲間を探し出そう」
Ai「ああ、分かったよ」

不霊夢「Playmaker、君の力を貸してくれないか」
遊作「お前達の気持ちは分かるが、俺は草薙さんの弟を探さなければならない」
不霊夢「それなら問題ない。二つの事件は繋がりがある」
(中略)
Ai「じゃあ、草薙の弟をさらったやつと、サイバース世界を襲ったのは、同じ奴か」

こうして、ひとまず利害の一致で同じ敵を追うことになる遊作とAi。遊作の態度には、Aiを「自分とは別の目的を持つ別の存在」として捉え、協力することに関してギブ・アンド・テイクと割り切ったスタンスが窺えます。

余談1 ロスト事件に縛られるリボルバー

少し話がそれますが、「TURN59 ハノイ再始動」にて、リボルバーが再び動き出します。

遊作「バイラが脱獄!」
Ai「うそー! あのお姉ちゃん逃げたの!? これってまさか……」
遊作「ああ、間違いない。これは、リボルバーの仕業だ!」
(46話回想)
回想リボルバー「私の負けだ、プレイメーカー。だが、覚えておけ、イグニスが人間の脅威である限り、私は自分の運命から逃げるつもりはない……!」
(回想終了)
遊作「リボルバー。再び動き出したのか」

リボルバーが言い残した「イグニスが人間の脅威である限り」「自分の運命から逃げない」という言葉。この「運命」は、44話でリボルバー自身が自分と遊作を指して「運命の囚人」と言ったところの、ロスト事件という過去に否応なく囚われる運命です。これに関して、

Playmaker「お前は、俺と同じ世界の人間だ。お前はあのとき……(中略)俺を見かねて、その奈落を渡ってきた。お前なら俺を救える! 俺ならお前を救える!
リボルバー「ほう? ではさっきの話は命乞いではなく、私への慈悲というわけか」
Playmaker「違う! お前は俺と同じだ! 俺達は運命の囚人! お前は新たな道は無いと言った。だが俺は、まだ新たな道があると信じる!」
リボルバー「そうか。ならば、それを証明してみせろ! お前のデュエルで!」
(TURN46 未来を描き出すサーキット)

お前を救えると宣言した遊作は、リボルバーが運命に囚われ続けることを良しとはしていないでしょう。それについて、リボルバーは「イグニスが人間の脅威である限り」という条件をつけています。遊作は、このことも絡んで、イグニスは人間にとって脅威かどうか=「Aiは自分にとって脅威かどうか」を、ずっと考えていたのではないか。イグニスが人間の脅威でないと証明できれば、了見を運命から解放できるのではないか、と。

三、相棒として腹をくくる

その後、「TURN64 ターニング・ポイント」「TURN65 Playmakerの息吹」で遊作と草薙の出会いとサイバースデッキ入手のエピソードが語られますが、この話は遊作不在のまま、草薙の視点で語られます。遊作がこの過去について現在どう思っているのかは、一切分からない作りになっています。

そして続く「TURN66 地のイグニス「アース」」冒頭。

(Playmakerが強いと盛り上がる掲示板に書き込みをしているAi)
 「AIが有能だかららしいぜ
  アイって言うんだって!」
ロボッピ「きたー! アニキの自作自演!」
Ai「きたー! ってなんだよ! まるで俺がいつもやってるみたいじゃん!
ロボッピ「やってるやってる、これまで、この掲示板だけで、212件、書き込んでいます」
Ai「うっせうっせうっせー! 俺はなあ! 真実をみんなに教えてやってるだけなの!」

Aiの「ちょっとした干渉」というのは、例えばこういう掲示板への書き込みなのかな……というのが垣間見えるやりとりからの。

Ai「お前はずーっとこの部屋にいるから知らないだろうけどな、あっちの世界じゃ、お前のご主人様は、俺がいないとなーんにもできないんだぞ!
遊作「誰の話だ」
Ai「ぎっくー!」

PlaymakerはAiがいないと何もできない、というAiの言葉は遊作に聞こえています。遊作が5年前からのAiの干渉について、改めて思いを馳せそうなエピソード、と言えなくもないと思います。あるいは、あからさまに焦っているAiを深追いしないあたり、何のことを言っているのか見当がついている態度にも見えます。

そして、掲示板がきっかけでアースと出会います。
アースは、人間の真実を見極めるためにPlaymakerにデュエルを挑むと言います。

(アースによる回想)
回想アクア「もうすぐサイバース世界は分裂します」
回想アース「え?」
回想アクア「人間とイグニス、どちらにつきますか」
回想アース「人間と、イグニス」
回想アクア「自分の目で確かめるのです、人間とAIの未来を。真実とは、何かを」
回想アース「真実とは何か……」
(回想終了)
Pkaymaker「人間とAIの未来……」

ここで遊作は「人間とAIの未来」について気にしています。人間とイグニスどちらにつくかを決めるために、人間の真実を見極めると言うアース。このデュエルでは、おそらく遊作もまた、人間とAIの未来を探すために、AIであるAiの真実を見極めようとしています。

アース「Ai、お前は何故人間の側についた」
Ai「ん?」
アース「何故プレイメーカーと一緒にいる」
Ai「何故って、そりゃ熱い友情で結ばれてっから! なっ、プレイメーカー様!」

Playmaker「………(Aiをガン見)」
Ai「ほら」

この間、遊作はAiを真顔で見つめるだけのノーリアクションです。肯定はありませんが否定もしていないので、Aiがどういう態度に出るか、ひとまず様子見しているのかもしれません。
遊作からの積極的な肯定が無かったせいか、Aiはこのあと悲しそうな目をしています。

Playmaker「あいつの本来のパートナーは、おそらく、スペクター」
Ai「えっマジで!? それで人間を嫌ってるのかあ……。まあスペクターじゃ無理ないかもな」

スペクターは、遊作がロスト事件被害者にはありえないと思っていたプラス感情を持っていた人でした。彼から生まれたイグニスであるアースは、人間を嫌っている様子。また、スペクターとのデュエルは、Aiがハノイを倒すために「財前なんか見捨てろ」と遊作をけしかけているデュエルでもあります。
このデュエルに影響しているかは分かりませんが、同じ被害者同士で対立した遊作、遊作を利用するモード全開だったAiともに、複雑な気持ちになってもおかしくないパートナーとも言えます。

Playmaker「あいつのデータは。どんなデュエルを仕掛けてくる」
Ai「えぇっとー、うーん……覚えてない。あいつ、地味だったからな」
(中略)
Ai「あー! 思い出したー!」
Playmaker「なんだ」
Ai「アースはデュエルがめっちゃ強いんだったー!」
Playmaker「くっ!」
Ai「もーちょい早く、思い出しておくべきだったよなー(デュエルディスクに完全に身を隠して)いやー参った参ったー」

アースと遊作の間で揺れているのか、アースのことを覚えていないと言ってみたり、思い出してみたり挙動不審きわまりないAi。
そんなAiがある程度調子を取り戻す会話がこちら。

Playmaker「効果無効、か」
Ai「残念ー、奪えなかったー。なあなあ、次は何を仕掛けるんだ? 俺様が攻撃を提案してやろうか?」
Playmaker「黙ってろ」
Ai「えっ! 俺はアースのことよく知ってるのに」
Playmaker「さっきまで忘れていたのに、何を言ってる」
Ai「いやあ、俺も不器用ですから……」

「不器用ですから」は、デュエル申し込みやデュエル開始時にアースが「説明なしにデュエルを申し込んだ理由」や「後攻をやりたいとはじめに言わなかった理由」として連発しているのですが、言うことがころころ変わると指摘されて、「俺も不器用ですから」と言うAi。
Aiが過去を隠すのは、遊作を信じず再び利用しようとしているせいなのか、それとも「あまりに酷くて今更言えない」という後ろめたさのせいなのか。「不器用」という言葉は、後者の印象にフィットします。

このあと、アースのクリスタルハート召喚によって、荒野だったフィールドが緑豊かな草原に変わります。何故そうなったのか語られることはありませんでしたが、場の空気が変わったことを示唆していそうにも感じます。

後編「TURN67 AIに宿る慕情」はアクアとアースのラブコメ(?)から始まりますが、不穏な未来を予言したアクアは、アースに「イグニスにとって、人間は味方なのか、それは貴方自身が判断すべきこと」だと告げます。
この次の68話でリボルバーが帰還しますが、イグニス殲滅を掲げる彼との再会の前に、遊作もまた、AIは味方かどうか、「Aiを信じるかどうか」について、自分で判断しておく必要があったとも考えられます。

67話は、リンクから繋げる最初のエース召喚が、絆の強調に使われやすい融合モンスター(サイバース・クロック・ドラゴン)なので、心なしか遊作とAiが上手く行き始めていることを象徴している気もします。このデュエルは、フィニッシャーも同じくサイバース・クロックです。

アース(プレイメーカーは非常に強い。闇のイグニスは、その力を利用するためにそばにいるのか、それとも)

Aiのことも見極めようとしているアース。これはそのまま、遊作も考えていたことではないかと思います。それとも……どうなのでしょうか。

Ai「今のモンスター、まるで自分が身代わりになって、アクアのモンスターを守ったみたいだったな。……あっ、そっか! そういうことか!」
Playmaker「何がだ」

過去のラブコメ(?)を聞かされ、「その話、今聞く必要があるのか?」のマジレスで和ませてくれるPlaymaker様ですが。

Ai「大ありだって! そんなアクアへの思いが詰まったデッキだとしたらさ」
Playmaker「つまり、アースがそこまで人間の感情を理解しているAIだとしたら……」

個人的には「なるほど!」という反応がくると思わなかったのでかなり面白かったのですが、この推理をもとにした後半の戦略もさることながら、内容もかなり重要だと思います。
すなわち、「自分が身代わりになって」アクアのモンスターを「守った」アースは、「人間の感情を理解しているAI」ではないか、という発想。

Ai「げげっ! もう一度攻撃できるのかよ! そしたら、ダイレクトアタックでやられちゃうじゃーん!」(←遊作がガン見してる)
アース「フン、臭い芝居だ!」

67話ダイレクトアタックでやられちゃうじゃん

(中略)
アース「Ai、過剰な演技はかえって逆効果だぞ」
Ai「えっ? バレてた?」
Playmaker「当然だ」

アース「ふん」

Aiの「臭い芝居」「過剰な演技」は逆効果、と言うアースと、バレて当然と同意する遊作。 ここではダイレクトアタックを誘う演技の話ですが、遊作に対してAiが使っている「過剰な演技」を考えると、遊作がこんなことを考えていても不思議ではないのではないかと思います。つまり……

「お前の相棒ムーブ、うさんくさすぎて逆に怪しいぞ」

ここから、アースが少し打ち解け始めます。

アース「プレイメーカー、どうして、Aiと共にいるのだ」
Playmaker「………」
アース「どう見ても、さっきから足を引っ張ってるようにしか見えないのだが」
Ai「こらー! やっと距離が縮まったと思ったら、俺をディスるのかよ! なんで一緒にいるのかだって? そりゃあ、俺達が唯一無二の相棒だからに決まってるだろ!」(※多分ここ過剰な演技)
Playmaker「(Aiを見て)コイツを相棒と思ったことはない」
Ai「はぁ……(ため息)(遊作を見て)まだ駄目っすか……」

ノータイムで「相棒と思ったことはない」とAiを見て言う遊作、「まだ駄目っすか……」としょんぼりと遊作を見つめるAi。ここで見つめ合うというのもなかなか凄いな……と思うのですが。
遊作は、アースに向き直って続けます。

Playmaker「俺がコイツと共にいる理由は3つある。1つ、俺もコイツも、やるべき事がある。2つ、そのために、見つけ出さねばならない共通の敵がいる。3つ! だから俺達は、自らの意思で共にいる!」
 (42話回想映像)
  回想Ai「プレイメーカー!」
Playmaker「それを相棒と呼ぶのなら……」
  回想Playmaker「お前、そんなことができたのか」
  回想Ai「相棒が無茶すんなら、俺もつきあうしかないだろ!」
 (回想映像終了)
(瞑目していた目を開けて)
Playmaker「好きに呼べば良い」

回想されている42話のシーンは、103話でも「リボルバー、俺は、Aiを信じている」という言葉と共に遊作が回想するシーンです。遊作がAiを信じる決め手となっているエピソードと考えられます。
また、既に引用した箇所になりますが、回想されたシーンの続きで、Aiは身を挺して遊作をかばっています。

Ai「俺が盾になってやる! ただしもって30秒! その間に決めろ!」
Playmaker「だが、そんなことをしたらお前は!」
Ai「うるせえ! 俺様なりの償いだ!」
(TURN42 スターダスト・ロードの導き)

「俺達は自らの意思で共にいる」と明言し、Aiがその後遊作を「身を挺してかばった」シーンを回想しながら、相棒と呼ぶなら呼べと言う遊作。

遊作は、ここで、腹をくくったんだと思います。

Aiが遊作を復讐へと向かわせ、サイバースデッキを探させたことを隠していると察しながら、それでも「相棒が無茶すんなら、俺もつきあうしかないだろ!」と言ったAiを信じると。
Aiを信じて相棒として戦う覚悟を、ここで決めた。

Ai「うう、プレイメーカー……! もうっ、素直じゃないんだから!」

じゃれつくAiに機嫌良い顔をするでもなく、「好きにしろよ」と言わんばかりに放置されても大はしゃぎのAi。とんでもない過去を実質水に流してくれたと思えば、このはしゃぎようにも頷けるというものです。

Ai「え、何言ってんのアースちゃん。ここまではウォーミングアップ。本番は!」
Playmaker「これからだ!」

Aiが感じたアースの慕情から、クリスタルハートを意地でも守ると見抜いてインヴァリッド・ドルメンに狙いを定めていたPlaymakerは、えげつない攻撃力ダウンでインヴァリッド・ドルメンを弱体化させ、融合モンスターのサイバース・クロック・ドラゴンで勝利します。相棒……。

補足
構成の話になりますが、62・63話でSoulburnerと不霊夢、64・65話で草薙と遊作が相棒として踏み出す話が語られていて、その流れで66・67話にはPlaymakerとAiが信頼を結ぶ話が置かれ、68話から黒幕であるライトニングが姿を現し、PlaymakerとAiは力を合わせて立ち向かうことになる……と考えても、遊作はここでAiを信じると決めたのではないかなと思います。

四、相棒としてAiを支える

続く「TURN68 密会」では、ウィンディによってAiのロックが外されます。これ自体象徴的ですが、遊作がAiがいないことを「新しい昼ドラが始まるらしいぞ。……いないな」という言い方で確認するところや、心配そうにAiを探すところなど、遊作がAiに対して心を開いた様子が窺えます。
一方、遊作と絆を深めたAiは、人間を支配しようと言うライトニング達の誘いを断ります。その結果、ライトニングとウィンディは、計画を妨害されるわけにはいかないと、AiとPlaymakerをそれぞれ球体のプログラムに閉じ込めます。

Playmaker「俺はお前達と敵対するつもりなど無い!」
Ai「ほら見ろ! プレイメーカーは、ちゃんと俺達と人間が共存する道を見つけてくれる!」
ライトニング「80億分の1の意見で全体が変わるというのか?」
Ai「そういうことさ! 人間は確率なんかじゃ測りきれない。小さな可能性が、いつか全てを変える!」
ライトニング「なるほど。では私に、80億分の1の賭けに乗れと。君は乗るか?」
ウィンディ「時間の無駄だろ」
Ai「くっそう。だけど俺は、デュエルプログラムでロックされてる! 思い通りになると思ったら」
ウィンディ「だからお前だけ先に呼んだんだよ」
Ai「言われてみれば、プレイメーカーがあんなところに……」
Playmaker「ウィンディ、お前がロックプログラムを解除したのか」
ウィンディ「そういうことさ」
Ai「オーマイガーッ!」

遊作のロックについて、Aiはどう見ても遊作がAiを守るためのセキュリティ的な認識をしています。草薙の相談相手として頼られていたこともありますが、どちらかというと、遊作の「人質が似合っている」を「また俺にお前を守らせたいんだろう」と解釈し、晴れて相棒と呼んで良いと許可も出たので、安心して人質生活を満喫していると言えるのではないかと思います。

「TURN69 果たすべき使命」では、イグニス抹殺の態度を変えない了見に、遊作はこんな説得をします。

Playmaker「リボルバー! 鴻上博士の思いに縛りつけられるな! お前の目で見、お前の思いで考えろ! 過去に囚われているだけでは、未来を描くことはできない!
リボルバー「フン、過去に縛られた復讐者、Playmakerの言葉とは思えない」
Playmaker「俺はもう、過去に縛られてはいない!」

自分の目で見て、自分の思いで考えて、過去はどうあれ今のAiは味方だって信じたのかな……と深読みしてしまうセリフです。

そして、「TURN71 宣戦布告」でライトニングの裏切りが発覚し、イグニス同士の対立が表面化します。「TURN72 曇りなき極致」で、ボーマンにサイバース世界が崩壊する光景を見せつけられ、動揺するAiに遊作は。

Ai「あのとき(※ハノイの塔でリボルバーと戦ったとき)はイグニス同士で戦うなんて思ってなかった。なのに、俺はこんなことをするために戦ってたのか?」
Playmaker「嫌だったら、未来を変えるしかない」
Ai「だけど、本当に変わるのか!? 未来ってやつは!」

Playmaker「変わるんじゃない、変えるんだ! 俺達の手で、ボーマンを倒して!」
Ai「プレイメーカー……。ああ! 一緒にアイツをぶったおそーぜ!」

(満足そうに笑うPlaymaker)

72話ぶったおそーぜ!

本編でも屈指のPlaymakerがAiに優しいシーンです。本放送時はよく分からないまま「2期の遊作とAi大好き!!」などと興奮していましたが、あのとき覚悟を決めたと考えると、あまりにも約束された優しさに灰になりました。私は、これこそが遊作の本来の思いなんじゃないかと思います。遊作はずっと、故郷や仲間のために戦うAiを応援していたんじゃないかな、と。

Ai「プレイメーカー、ここで決着をつけるんだ! 悔しいけど、奴は格段に強くなっている。奴を倒せるチャンスは、簡単には巡ってこない!」
Playmaker「どうした、Ai」
Ai「俺の中の何かが、今ここで奴を倒せって言ってる!」

Playmaker「何かとはなんだ」
Ai「わ、分かんない……。けど、時々……デュエルをやってて感じることがあるんだ。頼む! プレイメーカー!」
Playmaker「……。……いいだろう、Ai」

おそらくはAiが本能のまま感情的になっていることまで計算に入れた上で、ボーマンの戦術を予測し(※あらすじより)、遊作はAiの提案した速攻に乗ります。
そして仕留めきれなかったその後、「TURN73 絶望を断つ光刃」にて。

(PlaymakerのLP550)
Ai「うぅ……結局ずっと押されっぱなし……こうなったのは完全に俺のミスだ。すまねえ……」
Playmaker「お前のせいじゃない、お前はただの人質だ。デュエルの決定権は俺にある」
Ai「ええ~、そこ?」

LP1000以下のストームアクセスが使える状況でわざわざ「ピンチ……」と言っているAiは、おそらく小芝居です。それに対して、「お前のせいじゃない」と一度受けておいて「お前はただの人質だ」と繋げるPlaymaker、もはや完全なるノリツッコミ。AiはAiで人質呼ばわりを特に否定していません。仲良しか。

Playmaker「だがまだチャンスはある。俺のライフは550」
Ai「ストームアクセスか。なら奥の手が残ってるぜ。ディスクを見ろよ」
Playmaker「これは?」
Ai「サイバース世界が滅んだのを知ってから、ずっと新しいプログラムを構築してたんだ。それがなんと、今さっき終わったんだ」
Playmaker「都合のいいタイミングだな」
Ai「ふぅん……じゃあ今のは嘘ーほんとはずっと使えたけど隠してた」
Playmaker「そっちのほうがお前らしい(笑顔)」
Ai「つらい」

つらい!! はい、「つらい」!! 頂きました!!!!

公式のあらすじでも、ネオ・ストームアクセスは「事前に用意していた秘策」と明記されているので、実際前もって完成していたのでしょう。

73話事前に用意していた秘策

その上で、要するに「お前は隠し事するやつだろ」「返す言葉もない」というこのやりとり、ここまで来れば、Aiが5年前から遊作に干渉していたこと、Aiがそれを隠していることは、二人の間で暗黙の了解になっていたと断定していいと思います。
そのことについて、「お前らしい」という肯定の言葉で、笑顔でやんわりほのめかす遊作。Aiは42話で「奥の手は最後に取っておくもんだろ!」とも言っているので、遊作は、言えない過去も言わない奥の手も、ひっくるめてAiの在り方として受け入れていたのではないでしょうか。
そして、おそらくはそんな遊作の優しさ含めて「つらい」と感じるAi。ここで良心の呵責を感じているあたりも、117話で「全て計算尽くか」に「哀しいこと言うね」と言った、あの言葉が本心なんだろうと思います。遊作に情が移るとは思わずに利用した過去は、今のAiにとってあまりにも哀しかった。

Playmaker「サイバース・ウィキッドの効果! リンク召喚されたこのモンスターと、そのリンク先のサイバース族は、相手の効果を受けない!」
Ai「いえーい! 見たか絆の力ー!」
(中略)
Playmaker「紫電一閃! 未知なる力が、飛竜乗雲となる! シンクロ召喚! 降臨せよ、サイバース・クアンタム・ドラゴン!」
ボーマン「これが彼らの本能が生み出した力」

ネオ・ストームアクセスで手に入れたのは、レベルを足し算するシンクロモンスター。「紫電一閃」は「急激な変化」を意味しますが、これはAIが人間社会にもたらすもの、そして「英雄や賢者が才能を発揮する」ことを言う「飛竜乗雲」は、ボーマンが遊作を「ネットワークを感じ取れる、AIと人間の橋渡しをできる存在」だったかもしれない(99話)と言っていたことから、遊作の才能の開花を表しているのではないかと思います。後のことを思うと切ない話ですが、「人間とAIが繋がる世界」を導く二人がイメージされます。

余談2 遊作は了見を救えたか

イグニスが脅威である限り運命から逃げない、と宣言していた了見はその後どうなったか。
「TURN98 一線を越えたAI」で、ライトニングに仁を盾にされたリボルバーは、遊作の制止により攻撃を踏みとどまります。その後、仁を人質にするやり方はボーマンによって阻止されますが、ライトニングは自分の勝利を確信し、鴻上博士に電脳ウイルスを仕込んだ真犯人が自分であることを告白します。そしてリボルバーは、ライトニングと相打ちになります。

Playmaker「しっかりしろリボルバー!」
リボルバー「まさか、光のイグニスに自滅するという考えがあったとはな。油断した」
Ai「リボルバー、お前よくやったぜ!」
リボルバー「小さい頃に、こんな風に、花畑に寝転び、空を見上げたことがあった。その時を思い出す。あの頃は何も背負わず、ただ目の前に広がる世界に、胸、躍らせていた。……私は、一足先にいく。後を頼むぞ、プレイメーカー、Ai……」
(満足そうな笑顔で光になって散る)
Ai「あいつ……俺の名前を……」

ロスト事件以前の自由だった頃を回想し、Aiの名前を呼んでPlaymakerとAiに後を託したリボルバーは、もうAiを「人間の脅威となるイグニス」と見てはいなかったと思います。私は、彼の最期の笑顔こそが、遊作が了見を救えた証拠だと思っています。

なら何故3期の了見は再びAiを「闇のイグニス」と呼んで監視していたのか? については、私自身はこういうことじゃないかと思っています。

3期の了見は、「Aiが単体で生存するとその存在が人類を滅ぼす」というシミュレーションを知っていたのではないか。
仁が人質に取られた状態での攻撃を制止した遊作は、了見に「もう一度ロスト事件の被害者を出すつもりか」と問いかけましたが、遊作が思っている通り、了見は「これ以上ロスト事件(=イグニス)の被害者を出さない」ために、行動せざるを得なかったのではないか。それと同時に、遊作とAiの絆を信じていたからこそ、遊作にフュリアスを託し、二人の結末を遊作に委ねた。

五、そして運命の日へ

過去を隠していたAiに対して、遊作はどう思っていたのか、私は「TURN105 迎撃」もその答えなのかなと思っています。

Aiの犯行声明を受け、君はどうするのと尊に問いかけられた遊作は。

遊作「Aiは、笑っていた。楽しげに……。何かのゲームでもやるように、人を傷つけた」
尊「遊作……」
遊作「だが俺は、Aiを信じたい……」

「Aiを信じたい」そう悲しげに答えた遊作。これはこのとき急に思ったことじゃなく、ずっと思っていたことなんじゃないか。それこそ、Aiを信じるべきか迷っていただろう2期のはじめからずっと。

葵「藤木遊作くん、いいえ、Playmaker。本当は、他に伝えたいことがあったから会いたかったの」
遊作「うん?」
葵「あなたは、何度も私を、そして、お兄様を助けてくれた。あなたは、いつも私のそばで見ていて、守ってくれた。そのお礼が言いたかったの。本当にありがとう、感謝しています」

Playmakerの正体が遊作だと知った葵は、「遊作」が財前晃に「俺はただ、自分のために戦ってきただけだ。礼などいらない」と告げるのを聞いていながら、正体を隠していた「Playmaker」に感謝を伝えてくれます。その姿は、ずっとAiに過去を秘密にされてきた自分にダブって見えたんじゃないか。だから遊作は、Aiが何を考えていたとしても、相棒としてAiを止める、と決意できたんじゃないか。

そしてようやく全てが明らかにされる運命の「TURN117 交わらない道」

遊作「お前は自分がやっていることをやめさせるために、俺を呼んだんじゃないのか」
Ai「かもな。ただお前とは、良かれ悪しかれ、話をしといたほうがいいと思ってさ」
 (中略)
Ai「俺は正直なところ、いつかお前と戦うんじゃないかって覚悟はしてたぜ。お前だってそうだろ」
遊作「………」
Ai「さあ、このままじゃコピーが完成しちまうぜ。どうする?」
遊作「……分かった。俺も覚悟を決めよう」

Aiがほのめかしているのは、おそらく、隠していた過去のこと。
踏み込んだ解釈になりますが、「いつか戦うんじゃないかって覚悟はしてた」は、半分は嘘で、遊作にデュエルを受けさせるための駄目押しではないかと思います。ボーマンとのラストデュエル中、101話でAiは自爆特攻する直前に「繋がることを恐れるな!」と言っていますが、繋がるのを恐れる理由はといえば、繋がって傷つくのが怖いから、つまりAiとの関係で言えば、真実に踏み込んで傷つけ合うようなことになりたくなかった。「覚悟していた」というより、「恐れていた」というのが正確なのではないかと思います。
そしておそらく、Aiもそれは同じだった。そのAiに、タイムリミットをちらつかせながら、まるで互いが切り札として真実に触れずにいたかのような言い方をされれば、遊作はもうデュエルを通してAiの真意を探るしかない。

Ai「デコード・トーカー。俺達が共に手にした、最初のリンクモンスターだな」
Playmaker「……Ai、俺にサイバースデッキを探させたのはお前だな」

「最初、ね……」と言わんばかりに初手から踏み込んでいく遊作。遊作が急にこの話をしたのは、Aiが何を言わせたがっているのか、理解した上でそれに応じた、というのが真相であるように思います。

Ai「さすがだな、みんな気付いてたってわけか。そうさ、俺がお前に戦う武器を与えた。Playmakerの象徴となる、サイバースデッキを。そしてお前は俺の期待通り成長し、邪魔なハノイを倒してくれた」
Playmaker「全ては計算尽くか」
Ai「哀しいこと言うね。……まあ最初はそうだったかもな。だが今は違う、お前は俺の、たった一人の友達」
Playmaker「それをなくしてもいいのか!」

こうしてみると、遊作もAiも、過去についての会話はどちらも想定内という落ち着きが見て取れます。Aiが黒幕ぶっているのも、いつもの「臭い演技」でしょう。二人はロールプレイを通して、「暗黙の了解にしていた事実」を、初めて表に出した。

こうして、Aiは変わらずに自分を友達だと思っていると確認した遊作。だからこそ迷う。何故こんなデュエルをしなければいけないのか、遊作には分かりません。覚悟を決めろと迫るAi。

「TURN118 無謀な提案」で、Aiはこのデュエルが、勝っても負けても自分は消えるデュエルだと告白します。その上で「このデュエルは本気でやろうぜ」と無謀な提案をするAi。このあと、①気合いだ気合い!②無駄に長い口上リテイク③足し算ボケと、Aiのおふざけ3連打にことごとくノーツッコミのPlaymaker。完全に余裕ゼロです。

「TURN119 壊れゆく自我」で、なぜそんなデュエルにしたかと、自分の存在が人間を滅ぼすというシミュレーションについて告白するAi。デュエル前に何があったと聞かれたときは「別に?」としらばっくれていたくせに、ここでは「お前には全て知っておいて欲しいからな」とか言うのはわりとどうかと思います。これにつきあってあげる遊作優しいな……。

Playmaker「仲間を失うことは、心が壊れること。ならお前は……俺を壊したいのか」
Ai「嬉しいことを言ってくれるじゃねえか」

俺を壊したいのかなどという捨て身の説得も響かないAiに、遊作が了見から託された融合モンスターを召喚したのは、完全に心細いところを支えてもらった形だと思います。了見ありがとう。

Ai「次は確実に仕留めるぜ、プレイメーカー」
Playmaker「Ai」
Ai「……なあ、プレイメーカー。……一緒に来ないか」
Playmaker「何の話だ」
Ai「俺と一緒になろう。お前の意志をデータ化して、俺と融合するんだ。俺を止められるのは、お前だけだ。俺と一緒になれば、寿命なんてものも関係ない。きっと俺とお前なら、ボーマンやライトニングとは違う未来を切り開ける。だろ?  俺達は永遠に、ネットワークという世界で生き続けるんだ」
Playmaker「Ai」
Ai「プレイメーカー」

のらくらと遊作の追求をかわし、どん詰まりのデュエルを強制したAiの狙いは、遊作との融合。それはある意味で、繋がることからの究極の逃げだったように思います。一つになってしまえば、傷つけ合ったりしなくていい。自分のせいで遊作が犠牲になるなんて未来も、絶対に来ない。

「TURN120 繋がる世界」

Playmaker「……っ、それはできない……!」
Ai「………」
Playmaker「もし俺とお前が一つになろうと、それはお前が求める答えにはならない。命は、意思は、たったひとつなんだ。もし俺がお前と融合したら、それは俺じゃない。そしてそれは、お前じゃないんだ」

Aiが本当に恐れているのがなんなのか、遊作には知るよしもありません。けれど、Aiが「俺とお前で」未来を切り開こうと言うのなら、互いの存在が消えてしまうような融合はできない。VRAINSの世界での人間とAIの融合には、鬼塚とアースの前例があります。融合してしまえば、個々の人格が保てません。

Ai「それって、強くないとやってけないんじゃないのか?」
Playmaker「だから人は強くなる。それが、ときに争いを生むかもしれない。だがそうなったとしても、戦い続けるしかないんだ。答えはなくても、繋がりを見つけ続けるために」

生きることは繋がりの連続。生きることは、繋がりを求めて戦うこと。それを確かめたからこそ、遊作は迷いを捨て、最後のリンク召喚でアクセスコード・トーカーを召喚します。スキルによってAiの布陣を破壊し、フィールドには最初のリンクモンスターであるデコード・トーカーと、ダークナイト@イグニスターが残されます。

Playmaker「Ai、俺とのこのデュエルも、シミュレーション済みか」
Ai「そんな野暮なことしねーよ」

ラストターンを前に遊作が確認したのは、重ねてきた対話がありのままのAiとの対話だったかどうか。Aiはそうだと答えます。
Aiの隠し事に触れずにきた遊作と、ずっと言えなかったAiのこのやりとりが、本当に好きです……。

ただただ生きるのに必死で優しすぎて一緒にいられなかった二人が、一緒にいられる続編を、いつまでも待っています……。

おわりに

ここまでお読み頂きありがとうございました。VRAINSはいわゆる「信頼できない語り手」を2年以上やり続けていたという話なのですが、さすがに正気ではないのではないか? というのも正直な感想です。遊作めちゃくちゃ誤解されてんぞ。「隠された信頼関係」って大変闇属性らしくはあるんですけど。(TVアニメよりノベルゲームとか向きの設定では……??)
私自身、内容でも触れていますが当時は68話~73話で「何故ここまで急接近したのか」が分からなかったため、「そっちの方がお前らしい」「つらい!」に違和感は感じても意味が分からず、この後二人のやりとりも安定してしまうので、68~73話の親密さの印象が3ヶ月くらいかけて薄れてしまい、特にボーマンとの最終決戦についていけなかったのは確かです。それでもキャラが好きだったので最終回まで見ましたし(3期は逆に「よく分からないけど仲良くなってたんだね」と気持ちを切り換えて見られたのでそんなに問題なかった)、見続けて本当に良かったというのも正直な感想ではありますが、それはそれとして脱落者が出るのはそうだろうなあと思います。
それについてごちゃごちゃ言うつもりはありません。けれど、この考察で少しでもVRAINSを楽しめるようになる人が増えてくれたらな、ということを願っています。ありがとうございました。

2020/5/24追記
5月よりVRAINSの定額見放題配信が始まり、ネタバレの罪が重くなったと感じたので旧タイトル「遊作は5年前からのAiの干渉に、いつ気づいてどう対応していたのか」から現タイトルに変更しました。私自身はリアタイ時は週一で日常の片手間に見ていた結果伏線を忘れ去ったし何かひとつ違えばこのエモーションに気づかないままVRAINSを素通りしたかもしれないという危機感がありこのような記事をまとめていますが、見放題で一気見するとその危険は激減すると考えたためです。あわせて了見の考察についてもタイトルを変更したので、文章も修正してあります。
その他細かい修正:「はじめに」の「そういう大事なことここで言う!?」→「そういう大事なことこれで済ませる!?」、28話の「まさかな」を確認したので「一、いつ気づいたか」冒頭の「最初から疑っていて2期開始時点で確信しているんじゃないか」を「2期開始時点では確信しているんじゃないか」に変更しました。あと本文中の「難しい顔」のスクショを眉間のしわがさらに深いやつに差し替えました。
見放題配信ありがとうございます。VRAINSはいいぞ。

2020/9/5修正:「一、いつ気づいたか」3期最初の→2期最後の。103話2期なんですよね…。

2020/9/23修正:「四、相棒としてAiを支える」主に72話関係と「おわりに」の一部について、肩肘張っていた記述をより事実に即した記述に修正しました。遊作とAiが大好きです。VRAINS大好きだ。

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