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死刑

海砂糖の刑に処する」
裁判官の声が凛と響いた

人類の歴史を振り返れば、それは死刑の歴史でもあった
石打、十字架、断首、八つ裂き、絞首、ガスなどが用いられた時代もあった
注射が用いられた時代もあった
死刑が廃止された時期もあった
その後、紆余曲折を経て、死刑は復活した
現代では、海砂糖の刑が一般的である

刑場は地獄の血の池を模擬している
池と言っても面積600km2、水深300mだ
その外周部は炎で燃えている
ヨルダン・イスラエル国境近くにある死海に近い
違いは、天然塩水ではなく、人工的に作られた飽和砂糖水である点だ
高濃度のため、浮力が大きい

受刑者は一週間絶食の後、この刑場に投げ込まれる
うっかり水を飲んでしまうと、急激に血糖値が上昇し朦朧となる
そこに100キロ単位の砂糖塊が絶え間なく投げ込まれる
その下敷きになり、否応なしに水面下に沈められる

13分後、静かになった

水面に浮かんだ遺体は回収された

かつて、知識が十分でなく、化学的に合成した単糖類の人体への有害性が認識されるどころか、菓子として有難がって食べていた時代があった
当時は、多くの人がそうだとは知らず、心身を病み、衰弱した

現代では、その同じものが死刑の方法に採用されている
(506字)

2023年4月下旬頃からシロクマ文芸部の企画に毎週参加させて頂いています。2024年4月まで1年ぴったりの継続のつもりです。このところは土曜午前の投稿です。今回のお題は「海砂糖」でした。どうぞよろしくお願いいたします。

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