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ラテアートの情報転送

「モットー・アム・フルス」はリバーサイドのカフェだ。
眺めのよい屋外の席に案内された。
コーヒーを注文した。
耳慣れた歌詞が耳に入った。

Donau so blau,
so schön und blau,
durch Tal und Auwogst ruhig du hin,
dich grüßt unser Wien...

「ちっとも青くないのに"美しき青きドナウ" か」。
カズオはつぶやいた。

少し離れたところに、科学者たちが集まっていた。
川を横切る下水道配管の地下トンネルに光ファイバーが通っている。
量子テレポーテーションの実験が行われている。
A地点のアリスの手元にある量子状態の情報をB地点のボブに転送する新技術である。

「あれ?」。
いつの間にか、目の前にコーヒーがあった。
「これが、時空を超えてやってくるタイムスリップコップか」。

電話が鳴った。
ハンナだった。
「量子もつれ状態の情報、見てくれた?」

カズオはラテアートをじっと見た。

(410字)

土曜日は、しばらくショートショートを書こうと思っております。
以下の企画に参加させて頂きます。どうぞよろしくお願いいたします。

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